(オホーツクをひっぱっているイワシあみ)
よそで俳句をやっている知人に、「あなたの作で、最近の好きな句は?」と尋ねたら、掲句だった。なかなか、雄大な句だ。「オホーツクを引っ張っている」という表現がいい、と思って・・・・・・・でも、なんか変だ。ニシン(鰊)、サケ(鮭)、ホッケ(𩸽)スケトウダラ(介党鱈)などの漁は、聞いたことあるが・・・・・・さて、北海道に網をかける程の大量のイワシはいるのかな?
そこで、インターネットが活躍。網走市水産加工振興会のHPを探し、事務局に質問メールを送った。そしたら、御親切にすぐ返事をいただいた。「オホーツクには、イワシはいません」とのこと。
早速、作者に原句の「鰊漁」に替えるようお勧めした。本来は、ニシンだったのだ。ニシンは昔ほど獲れないらしい。
この20年あまり、日本近海の水産資源の水揚げ量は、サンマなど一部を除き、下降線の一途をたどっている。原因は、海洋汚染などもあるかもしれないが、将来を考えない乱獲にあるのではないか。特に、イワシ(鰯、鰮)の乱獲がひどい。
日本だけでも、多い時は年間数百万トンも水揚げし、魚粉にして肥料にまでしてしまう。水揚げ減少の原因を、専門家は、気象変動やプランクトンの減少などと言っているが、イワシの乱獲に決まっている。稚魚のシラスも獲り過ぎだ。
というのも、私は漁船を持っている友人に誘われて、2年余り、真鶴沖で週に1回程度の船釣りをしていたことがある。
イワシ(ヨワシ)は、魚篇に弱いと書く通り、弱いから群れを作る。大型魚に追われて、海面に上がったイワシの群れを狙って、カモメなどの海鳥が大群をなすのだ。遠くからでもその存在がはっきりわかるほどの群れの大きさで、優に千羽は越えているだろう。その群れを「鳥山」という。
漁船は、鳥山の回りを旋回しながら、疑似針の付いた釣り糸を投げ込めば、2~40センチ前後のワカシ(ブリの子)、サバ(鯖)、シイラ(鱪)、カツオ(鰹)、などが入れ食いなのだ。
つまり、イワシはこれら中型魚の恰好の餌なのであり、イワシを乱獲すれば中型魚も当然減少してしまう。
本来の漁業は、農業と異なり、種も撒かず、草取りもせず、肥料も農薬もいらないのだから、計画的に漁獲量さえ守っていれば、永久に水揚げが可能なのだ。しかし、眼先の現金に目がくらみ、獲り放題に獲ってしまうのは、愚の骨頂だ。
そう言えば、友人の船長は、私が「もう止めよう」と呼びかけても、なかなか釣りを止めなかった。漁師じゃあるまいし、2,3匹釣ったら、もう十分なのに・・・・・

ツリガネニンジン(釣鐘人参)キキョウ科