一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

585  大百足全足遁走全速力

2012年05月15日 | 

(おおむかで ぜんそくとんそう ぜんそくりょく) 

 軒下に吊るしておいた、薪割り専用の皮手袋をはめて、私の友人は悲鳴を上げた。そう、手袋の中にいた大ムカデに刺されたのだ。直ちに、病院に駆け付けたそうだが、その痛さは凄かったそうだ。

 いづれにしても、洗濯物を取り込んだ時なども、十分気を付けねばならない。他にもスズメバチやヘコキムシなどが潜んでいたりするからだ。

 但し、ムカデたちから見れば、一番恐ろしいのが「人間ども」であるに違いない。ムカデの沢山の足で、どんなに一生懸命逃げたって、スピードはたかが知れている。憎まれているから、怪我どころか、殺される確率が非常に高いのだ。

ナルコユリ(鳴子百合) ユリ科の多年草


584  シャワーにする?御飯?それとも私にする?  美香

2012年05月14日 | 

「えっー、これって俳句?シャワーが季語ですか?」

「お風呂にします?食事にします?は、よく聞くけれど、風呂では季語にならないからシャワーにしたんじゃないの」

「日本にも、風呂に入らないシャワー人間が結構いるんじゃないかしら」

「単身家庭では、シャワーの方が断然経済的だよ」

「先日テレビで、更に水量を抑えた経済的なシャワーを宣伝していました」

「3つのはてなマークは、本来の俳句には付けないが、内容が現代的で川柳っぽいだけに却って面白いとして認めるべきかもしれないね」

「それにしても、この句よく思い付いて、よく発表しましたね」

「芭蕉がみたら、驚くだろうな」

「直ちに破門でしょう」

「私なら、天ではないが、人にはいただきたいね」

ベニバナトキワマンサク(紅花常磐万作) マンサク科トキワマンサク属

 


583  スーちゃんが逝った夜の卯の花腐し  豊春

2012年05月13日 | 

(スーちゃんが いったよの うのはなくだし) 

  卯の花には、5月に咲くマルバウツギと6月に咲く本家のウツギがある。歌の「夏は来ぬ」の卯の花は、たぶんマルバウツギやヒメウツギのことだろう。そして、今頃降る長雨を「卯の花腐し」という。「花の雨」と「五月雨(梅雨)」の間の雨のことで、「走り梅雨」と同時期である。

 飲屋なんかでは、例えば鈴木さんを「すーさん」などと頭文字で呼ぶ。「スーちゃん」はそれよりもっと砕けているから、もっと親しみのある女性だったのではないか。いづれにしても、俳句にまで取り上げるのだから、人気者の好人物かつ美人だったに違いない。

 そのスーちゃんが逝ったのだから、悲しみの涙の雨「卯の花腐し」がもっともふさわしい。

ハナイカダ(花筏) ミズキ科の落葉低木。別名、ヨメノナミダ(嫁 の涙)


582  香水が来て陶房を噎せ返す

2012年05月12日 | 

(こうすいがきて とうぼうを むせかえす) 

 香水を全く知らない門外漢の私が、名前だけでも「シャネルの5番」だけは知っているのだから、この香水は相当の人気だったに違いない。勿論この句の香水がどうかなど、私にはさっぱり分からない。

 この女性、強い近視だったらしく、やたらと接近してくるので、後ずさりした記憶がある。更に香水が強かったので、なにげなくではあるが部屋の窓を開けたほどだった。

 しかしよく考えてみると、最近の私の回りには香水の強い女性がいない。香水は嫌いだから有難いことではあるが、淋しい気もする。つまり、この句の女性は、この一句を提供してもらったのだし、今思うと実に希少な存在だったのである。

 ところで、今の日本人は、不快な香りに異常に敏感だ。無臭スプレー、口臭を消す洗口液、消臭剤、芳香剤などなど。これらに熱を上げる日本人が上等とは、決して言えないだろう。

ローズマリー(シソ科マンネンロウ属の常緑低木)


581  ヤマボウシ花の名を問うシャネル帽

2012年05月11日 | 

「あらー、あの花素敵ねー、何という花?」

「あれは、ヤマボウシですが、花ではなく総苞なんです」

「あらー、あれがヤマボウシですか、聞いたことありますわ」

「それより、その帽子素敵ですね」

「はい~、シャネルですのよ~」

 ヤマボウシ(ミズキ科ヤマボウシ属の落葉亜高木)山帽子ではなく山法師と書く。ココ・シャネル(1883~ 1971)は、立志伝中のフランス女性で、映画にもなったし、ここで説明する必要はあるまい。

 日本には、蝶にもかぶれたが、シャネルにかぶれた女性も相当いるようである。

クンシラン(君子蘭)  ヒガンバナ科クンシラン

クンシランは、蘭ではない

ややこしい名を付けないで欲しいですね

 


580  百日の夏来る雲のきらきらと   悠

2012年05月10日 | 

 今年の夏は、新暦で5月6日から8月6日までだから、正確には94日。

 旧暦では、5月21日から8月17日まで(旧暦4月1日~6月30日)で、89日である。

 今年の夏は、過去にあまり例がないような大型の竜巻が、先陣としてやって来た。アメリカの竜巻ほどではないにしろ、被害はすごかった。

 なんとなく不吉な予感がする。集中豪雨や台風、それに地震や津波が重なったらたまらない。どうせ来るなら、体の動く元気なうちに来て欲しい、と思うのは不謹慎だろうか。

 だからこの句、いかにもポジティブで元気で、明るく楽しい夏を予感させるが、きらきらと輝く雲の向こうに恐ろしい暗雲が控えているかもしれないのだ。

コデマリ(小手毬) バラ科シモツケ属の落葉低木

 


579  若者より順に夏来る六本木   鷹夫

2012年05月09日 | 

  先日の連休に、近くのペンションに泊った20代の娘さん二人が、陶芸を体験させて欲しいと訪ねてきた。親戚も来ていて、忙しい最中だったが、つい受けてしまった。

 その時の気温は、室内でせいぜい17~8度だから、かなり涼しいのだが、その二人は真夏のように素肌を露出していた。寒がりの私としては、信じられない軽装だ。忙しくて帰って来ないという我が娘と同様、若さゆえか相当寒さに強いらしい。

モッコウバラ(木香薔薇)  バラ科バラ属の落葉藤本(とうほん)(つる植物)。 


578  踏まないで勿忘草を踏まないで  遊石

2012年05月08日 | 

(ふまないで わすれなぐさを ふまないで)

 全くふざけた句である。しかし、こうして作者が分かってみると、「なるほど作者一流の冗句なのだ」と納得する。

 私の推測だが、この花の花言葉「私を忘れないで」をもじって、「踏まないで」に変えたのではないか、と思う。

 ワスレナグサをインターネットで調べると、153,000件もの画像があるから、余程人気があるらしい。しかし、倍賞智恵子の「忘れな草をあなたに」は知っているが、イヌフグリに似たこの小さな花を、残念ながら私は見たことがない。

 ワスレナグサは、暑さに弱いらしく、日本種のエゾムラサキと明治に渡来したシンワスレナグサやノハラワスレナグサなどが主らしい。つまり、北海道や長野などの冷涼な高地に育つ花らしいのだ。

カキツバタ  アヤメ  ショウブか アイリスか ?

 


577  初鰹捌くおやじの口曲がる  豊春

2012年05月07日 | 

(はつがつお さばくおやじの くちまがる) 

 初夏と言えば、やはり初鰹。しかし、季節感が薄れているのは否めない。大型船上における急速冷凍の技術によって、品質の変わらない刺身が1年中出回っているからである。

 レイチェル・カーソンが「沈黙の春・Silent Spring」を発表して50年、有吉佐和子がそれの日本版とも言える「複合汚染」を発表して37年。あの当時から比べると、公害などは多少良くなったが、農薬などの大量の化学物質が世界規模で海洋に流入し、蓄積され続けていることは今も変わらない。

 食物連鎖によって私達の口に入る鰹もどこまで安全であろうか。この句の「曲ったおやじの口」は、鰹の顔と重なり、水銀や公害によって曲ってしまった口とも想像され、不気味である。

勿論、この句のおやじの口は、単に一生懸命にやっているからなのだろうが・・・・

シラン(紫蘭) ラン科シラン属の宿根草


577  早起きか夜更しか今ほととぎす  ひろし

2012年05月06日 | 

 昨日が立夏。いよいよ私の大好きな夏がやって来た。そして、炬燵を片付け、蒲団を洗った。まだ寒い日もあるだろうが、けじめだ。

  ホトトギスを漢字にすると、時鳥、子規、不如帰、杜鵑、杜宇、蜀魂、田鵑などがある。この字の多さは特異で、ホトトギスの人気の高さを表わしているのかもしれない。

 さてこの句、今とは一体何時か気になるところ。夜明け前の4時ごろだろうか。そして、早起きかどうか、ホトトギスのことばかりでなく、「作者」がどちらなのか、私は気になって仕方ない。

ボタン(牡丹)  ボタンボタン属の落葉小低木


576  晩年や眩しきばかり濃山吹    正太

2012年05月05日 | 

 (ばんねんや まぶしきばかり こやまぶき)

年を取るということは、淋しいことばかりではない。特に俳句をやっていれば、次々と新しい発見があって、退屈することがない。見えなかったものが見えて来るし、聞こえなかったものが聞こえてくる。新発見は、その気になればいつでもできるのであって、遅すぎることはない。

 年寄りを意味する翁(おきな)、媼(おうな)という言葉には、死に近い人という意味の他に、神に近い人という尊敬の意味もあるらしい。是非、長生きして素敵な翁・媼になっていただきたい。

この句の、濃山吹に感動する作者にカンパイ!!!

ニワトコ(接骨木、庭常)  スイカズラ科ニワトコ属の落葉低木


575  2012年4月  岩戸句会

2012年05月04日 | 岩戸句会

 遠き日を友と分ちて花の宴     鼓夢

なたね梅雨昼間の湯船三国志

 

晩年や眩しきばかり濃山吹     正太

藁もえて目刺ら連を解かれけり

 

うしろ手に花吹雪浴ぶ男なり    薪

摘み草の灰汁の指もて嬰をあやす

 

ゆるやかに雲流れゆく花筵     豊春

名物の黒コンニャクと花見酒

 

踏まないで忘れな草を踏まないで  遊石

ひらりひら花散る下に君ありし

 

今なおに会いたき人や糸桜     稱子

風のまま流るるままに花筏

 

咲き満つる花の重みに触れてみる  章子 

斎場に座して花冷足裏より  

 

突風や真逆さまに鯉のぼり     歩智

白牡丹はらはらはらと崩れけり

 

蓮や宇宙の果ての仏の手      炎火

エプリルフール富士山頂を残し海

 

竹林の微かなそよぎ春惜しむ    洋子

透き通るサヨリのつくりほの甘き

 

目黒川上り下りの花見かな     空白

花筏眺める人は数珠つなぎ

 

お花見や酔えば今年も死にたがる  雲水

ギター抱きおぼろ月夜を帰りけり


574  行く春やなほ美しき火縄銃

2012年05月03日 | 

(ゆくはるや なおうつくしき ひなわじゅう) 

人間が作った物には色々あるが、私は古いものが好きだ。新しいものはどうしても好きになれない。

例えば、焼き物で言えば、縄文土器・もう一つあえて加えるとすれば須恵器・・・・

例えば、音楽ならアルビノーニ・コレルリ・ヘンデル・バッハ・・・・・・

例えば、建物なら桂離宮を代表とする木造建築。近代的なビルなど話にならない・・・・

例えば、車にしてもクラシックカーならいいけれど・・・・・・

こんな例、あげ出したら切りがないので止めておくが、掛川で400年を経た火縄銃を見た時、心底美しいと思った。人を殺す為の火縄銃を美しいと感じる自分を恥ずかしいと思いながら・・・・

俳句で形容詞を使うのは良くない、なるべく避けるべきだ、と日頃思っているが、この火縄銃に関しては、どうしても使わずにいられなかった。他には思い浮かばなかった。

ホントに小さな花です

ヤブニンジン(藪人参 ) セリ科ヤブニンジン属の多年草

 

 


573  君の名を思い出せない橋おぼろ

2012年05月02日 | 

  1952年だから、丁度60年前に「君の名は」というラジオドラマが、一世を風靡したそうだ。『会えそうで会えない』を幾度も繰り返し、聴衆をハラハラさせる。これが大衆受けしたらしい。その後も、映画やテレビで何度も上映されているから、いかに人気だったか良く分かる。

 これは、最近大人気の韓流ドラマにも通じていて、私としては実にふざけている、としか言いようがないのだが、やはり「ハラハラドキドキ」が高視聴率の原因らしい。知り合いの中高年女性の中には、完全に嵌まっている人が何人もいる。

 先日、民放のBSの全てのチャンネルで韓流ドラマをやっていたが、韓流に乗っ取られて平気な日本のテレビ業界の貧困さに呆れ返ってしまった。どうやら日本の業界には、やる気、才能、金が足りないらしい。

ムラサキケマン(紫華鬘) ケマンソウ科キケマン属の越年草。

 


572  種袋しゃかしゃか振っていざ蒔かむ  洋子

2012年05月01日 | 

 (たねぶくろ しゃかしゃかふって いざまかん)

八重桜が咲くと、野菜でも花でもどんな種でも撒いていい時期だという。しかし、今農協やホームセンターで売られている多くの種が、アメリカに支配された遺伝子組み換えであることをご存じだろうか。

本来の種は、その年の花を咲かせて実らせ種を採り、来年のために保存する。しかし、最近の種屋の種は全てではないが、良い実を結ばないように仕組まれていて、毎年新しく買わなければならないことをご存じだろうか。日本は、食糧自給ばかりでなく、農業の最も基本である種が大きな問題なのである。

それはさておき、発芽から実りまで、蒔くは簡単だが、その後なかなか大変な作業が続く。特に、蚊に刺されながらの夏の草取りは欠かせない。

キケマン(黄華鬘) ケマンソウ科 キケマン属の越年草