キマグレ競馬・備忘録

競馬、MLB、スポーツ観戦、趣味など気になる事を書いています。

本「たねが危ない」

2012年03月28日 | Book
著者は、若い頃は漫画家・手塚治虫の下で編集者として活躍し、その後実家の種屋を継いで現在に至る経歴の方。タイトルに惹かれて読んでみたが、いろいろ勉強になって面白かった。
野菜の種というのは現在、F1と呼ばれる一代限りの種が主流で、市場で流通している作物はこの種で生育されたものがほとんどである。この種の利点は、取れた作物の大きさや形が均一で見栄えが良いことや、味も均一で生育までの期間が短い、病気に強く市場が求める大量生産と農家が求める耕地の収穫効率アップに貢献していることなどである。その反面、野菜の持つ味やにおい等「野菜らしさ」にはやや欠けていて味に個性がないし、一代限りなのでこの野菜から取れる種は次世代には使えない。或いは実を結ばないなどの欠点もある。
著者は小規模な種屋として、従来型の固定種を販売しているが、美味いけれど形も大きさも不揃いな固定種は、市場からは少なくなっているのが現状である。(それがタイトルにもなっている)今一度、この在来型固定種で作られた野菜を見直して欲しいというのは著者の願いでもある。(手塚漫画のポリシーを各所に引用している)
内容はエッセイ風で、著者の経験と主張がとても判り易い。昔は作物の種を取って育てたりしたが、現代の市場の野菜が一代限りのタネ作られているということは知らなかった。都市に住んでいると、値段の高い野菜=美味い野菜というイメージがあるが、供給側に立つと均一で味がそこそこで見栄えが良い=値段が高い野菜であって、美味いのに見栄えの良くない野菜は、出荷されず地元で消費されているらしい。固定種は世代を経る毎にその土地に馴染んだ美味い野菜になる。そこで著者は、何代でもタネが取れる固定種こそが、自家菜園に向くと考えてこれを推奨している。マンガ「美味しんぼ」の山岡さんが、美味い野菜を求めて、田舎の産地を巡るのはその辺の事情をよく知っているのかも。

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