アメリカ側から見た太平洋戦争。真珠湾からミッドウェイまで。
太平洋戦争の最初の6ヶ月は、アメリカにとって試練の連続だった。真珠湾攻撃で太平洋艦隊は痛手を受け、その後は質、量共に劣る航空戦力で日本軍と対峙していくことになる。この本ではミッドウェイまでの日米の戦歴と、それに関わる人達を中心に、この戦争がどのようなものであったのかを考察している。
日本人の戦記ものでは、何故日本軍は真珠湾で勝ち、ミッドウェーで負けたのかを後の情報に基いて、大所高所的な視点で戦略や戦術を考察するものが多いが、この本ではもう少し視点を下げて、日米の指揮官や兵士など個々の当事者の観点で書かれている。
例えばミッドウェーの航空艦隊の指揮官・南雲中将の戦術は、後の人達から厳しく批判されたが、彼は彼なりに過去の教訓を基に行動しており、決して責められるような指揮官ではなかったと言う。戦場では無線の使用は控えなくてはならず、判断に必要な正確な情報を入手するのは難しかった。作戦遂行にあたり集めた数少ない情報に基いて慎重に行動しており、彼の判断は間違っていなかった。むしろ大きな戦力を投入しながら、その戦力を拡散させたために、リカバリーできなかった山本元帥の戦略に問題があり、ミッドウェイは状況や運が米軍に有利に働いただけというのが、著者の見解である。
また何度も書かれているのは、両軍の兵士の状態。指揮官の健康状態、兵士達の疲労や精神的なプレッシャーなど、単に軍事的な面からこの戦争を語るのではなく、戦場の生の姿や現場で戦う兵士の視点で書かれているのも興味深かった。
戦争は武器や戦力だけで決まるものではなく、知力の戦いでもある。真珠湾は戦術で日本が圧倒したが、ミッドウェイでは情報戦でアメリカが圧倒した。その流れがそのまま後の戦いに繫がっていく。この本では、アメリカの観点から双方の状況を分析していて興味深く、大変読み応えがあった。今年刊行予定の続編にも期待したいと思います。