仲間たちは、次々と売られていったものだ。
その先にあるのが、今よりも自由なものか幸福なものかはわからない。
それは残ったものたちには、未知だった。
そして、私はこの短い夏の中で誰にも選ばれることなく残ってしまった。
西瓜の季節が終わる頃、私はだんだん動けなくなった。
元々、動ける範囲は限られていたのだが、いよいよ私は本当に動けなくなってしまったのだ。
しばらく----というのも、ここでは朝も夜もなく、徐々に私は時間の感覚を薄めていったのだ----私は、石のようにして動かなかったのだと思う。
そして、とうとう指が恐る恐る私を持ち上げて、私を運んでいく。その間、私はもちろん動かない。
レジの後ろに、適当に私は置かれた。私の隣には、「破れている」と紙片が貼られた冷凍の袋が無造作に置いてあった。「破れている」だから、それでどうなるのか、私にはまるでわからない。
「死んでいる?」
それが私に貼られたラベルだ。
私は、ただ動けなくなっただけなのだが……。
しばらく、私はそうして放置されたままだ。この先のことはまるでわからない。
「あっ、カブトムシ!」
幼いものが、目を輝かせながら私の方を指差した。
*
「眠ったの?」
ノヴェルから奪い返したケータイを開いて、マキは猫の文字列を追いかけた。
猫の謎色に塗られた短い言葉は、いつからかマキの瞳を輝かせるようになっていた。
「ねえ、眠ってしまったの?」
いつも猫は、眠ってしまう。眠った時にだけ、猫の物語は開いているのだ。
その先にあるのが、今よりも自由なものか幸福なものかはわからない。
それは残ったものたちには、未知だった。
そして、私はこの短い夏の中で誰にも選ばれることなく残ってしまった。
西瓜の季節が終わる頃、私はだんだん動けなくなった。
元々、動ける範囲は限られていたのだが、いよいよ私は本当に動けなくなってしまったのだ。
しばらく----というのも、ここでは朝も夜もなく、徐々に私は時間の感覚を薄めていったのだ----私は、石のようにして動かなかったのだと思う。
そして、とうとう指が恐る恐る私を持ち上げて、私を運んでいく。その間、私はもちろん動かない。
レジの後ろに、適当に私は置かれた。私の隣には、「破れている」と紙片が貼られた冷凍の袋が無造作に置いてあった。「破れている」だから、それでどうなるのか、私にはまるでわからない。
「死んでいる?」
それが私に貼られたラベルだ。
私は、ただ動けなくなっただけなのだが……。
しばらく、私はそうして放置されたままだ。この先のことはまるでわからない。
「あっ、カブトムシ!」
幼いものが、目を輝かせながら私の方を指差した。
*
「眠ったの?」
ノヴェルから奪い返したケータイを開いて、マキは猫の文字列を追いかけた。
猫の謎色に塗られた短い言葉は、いつからかマキの瞳を輝かせるようになっていた。
「ねえ、眠ってしまったの?」
いつも猫は、眠ってしまう。眠った時にだけ、猫の物語は開いているのだ。