眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

Cerezo

2012-04-27 22:37:09 | ショートピース
「今日は何か寂しい曲が聴きたいねえ」つぶやいて待つと流れてきたのは『Born To Be My Baby』なんと!「ここでこの曲を持ってきたか!」落ち込んでばかりでは駄目だと……。「話のわかるアプリだねえ」iPhone は何も答えずゆっくりと桜色に染まっていった。#twnovel

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GOING MY WAY

2012-04-27 20:43:39 | 夢追い
 オフタイマーにしておいたテレビを眠っているはずの父が動いて消してしまうので、とても腹が立った。その気持ちが少しわかり別の腹立たしさも生まれた。音量が0のはずのテレビから音が漏れるのだ。何かがおかしい。設定がまずいのか、寿命なのか、とっくにもう壊れているのかもしれない。おかしいから腹が立つ。あるいは、みんな狂ってしまったのだろうか。まともな風をしてみんなと暮らすことは、いつからか無理だったのかもしれない。
 練習不足のスケボーで公道に出れば対向車が来る度に不安に駆られて、速度を緩め、バスが見えた時には板を降りた。練習不足なのは、時間が足りないため。時間が足りないのは眠っているはずの父が動いて、足を引っ張るからだ。それでも、こんなところで転倒している場合ではない。何とか方向を変えて、小坂に入った時、子供たちの中の一人が、「あれっ」と言うのが聞こえたような気がした。

「それいくら?」
 彼らが遊んでいる本物のそれの値段を、なぜか訊いている自分がいた。
「四万……」
 そうか。やはり、手作りのこの板と車輪の乗り物で十分だった。ただ少し、もう少し練習を積めば、もっと上手く乗れるようになるはずだった。勢いをつけて川を越えた。けれども、向こうまでたどり着くことができず、僕は直前の木にしがみついていた。老いて脆くなった樹皮が剥がれ落ちて手の中で、かさかさと言った。気をつけろ。どこか遠いところで、そのように変換されたような気がした。先にスケボーを小道に投げて、僕は木から飛び移った。車は通らない細く暗い道だった。生い茂った緑の隙間から微かな光が零れ落ちてくる。僕はその光を頼りに歩き始めた。

 部屋の中ではサークルの人が集まって白く垂れ下がった幕に映し出される犬と人形の動きを追っていた。壁にもたれながら、僕は本を開く。世界の渡り方。物作り入門。天井の見上げ方。冒険家になるには。弟がやってくると僕のガイドを閉じて、自分が持ってきた本を手渡すと有無を言わさず説明を始める。人との付き合い方。人生のやり直し方。心の変え方。(僕はこのまま行くつもりだったのに。まだどこにも行っていないけれど、このまま先に行くつもりだったのに……。)ここに来たことは間違いだった。
「帰る」
 弟は部屋の外まで追ってきた。
「助けてと言ったか!」
「…………」
 部室なので大きな声を出さないでと弟は言った。
「助けて欲しいと言ってない人を助けたら迷惑だろうが!」

 留守番電話の時間が切れてテープが巻き戻り始めても構わずメッセージは続き人生の意味ばかりを語りかけている。

 立ち食いうどん屋の中でみんなは座っている。どこでもいい。どの店もみな混んでいる。けれども、おばちゃんの顔の皺の数はみな同じように思えた。通りを一つ渡ろう。向こう側の店が、最も空いていて落ち着いていられそうな気がした。通りを渡ろうと通りの端に足をかけた、ちょうどその時、一つの店の若者たちが一斉に席を立った。途端に客はゼロになった。テーブルの上には赤い汁の残った器が、謎を浮かべた信号機のようにして並んでいた。まだ、それに伸びてくる手は見えない。行こうか、行くまいか。戻ろうか、戻るまいか。

 次の日には外国人講師がやってきて専門分野について熱く語り続けるのを僕は完全に無視しながら聞いていたが、テーブルを囲んで話してみれば彼はとてもいい人だった。突然、隣にいた姉が僕のグラスを横取りして一気に飲み干してしまうと、しばらくして姉の分だけが運ばれてきた。
「お姉さまのオレンジジュース」
「グラスをもう一つ」
 と姉が言ったもう一つのグラスは兄の方に回り、グラスをもてあそぶことで時間を埋めることさえできなくなった僕は席を立つための心の準備に入らなければならなかった。ここにいることは間違いだった。言うべきことはもう何もない。
(帰る)
 自分にだけそう告げて、立ち上がるためゆっくりとテーブルに置いた手に体重を移した。
 その時、僕の前に座っていた名前も知らない女が差し出した、オレンジジュースの入ったグラスが僕の全体重を押し戻した。それは何の前触れもなく、僕の目の前に現れた。
「どうぞ」
 グラスの向こうから、少し遅れて微笑みがやってきた。


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時の人々

2012-04-27 15:44:05 | ショートピース
海を渡った侍は、世界中でその名を轟かせ、ある決戦の日ついに母国に集結することになった。「乾杯!」一人一人秀でた存在が力を合わせれば、より強力な戦力になるはず。農民たちは、期待を胸に戦地に赴いたが、直に見る侍は想像と違っていた。見えない時の力が、刀に憑いていたのだ。#twnovel

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