次はどの道に進もうか、曲がろうか。左を見ると真っ直ぐに伸びた道は暗く先が危ぶまれたが、足は既に動き始めていた。通い慣れた道であるように先へ、先へと……。そうだ。五歳の頃に通った道だ。思い出すとすぐに不安は消えた。道の向こうから何か小さなものが近づいてくる。夜の中で、白い気配が浮かび上がってくる。白い格好をした園児たちが手に手に風船人形を持って歩いてくる。祭りだろうか……。疲れているのか、決められているのか、口数はとても少ない。白い列が終点までくると再び誰もいない道が続いた。先生や保護者たちはどこに行ったのだろうか。人も犬もいない夜の道を真っ直ぐ歩いていくと、突然人の気配を感じて足を止めた。道の端に女が二人肩を並べて静かに座っている。ヨーヨー、キャンディ、ソーダを売っている様子だが、二人とも何も言わない。
他にはもう店もないようだった。徐々に道の終わりが見え始めると、水の匂いがした。そうだ。川辺に幼稚園はあるのだ。
再び人の気配がした時、水辺は明るい光に包まれていた。
巨大な船が、水面からイルカのように高々と浮き上がって、着水する。
「もう一度。一定のリズムで」
先生の掛け声によって小さな船乗りたちが逞しく船を操る。科学の進歩というものだろうか。
(こんなことはきっとなかった)
懐かしさと恐れ、水上に浮かぶ船の大きさに圧倒されて泣き出しそうだった。
その時、すぐ近くで若者の声がした。
「前の映画で泣いたのはね……」
涙のメカニズムについて語られている間、僕は泣き方を忘れていた。
もしかするとこれはCGなのだろうか。
橋を渡ってジャージ姿の内山先生が戻ってきた。本物の内山先生だった。
十センチずつ手で触れて確かめていこうか……。馬鹿馬鹿しい考えを打ち消してノートを開いた。空白を探してめくっていくと最後のページになってようやく見つかった。一ページあれば十分だった。光あふれる水辺、優雅に浮かび上がる船を、ノートの真ん中に描いた。
描き終わった頃、黙って家を出てきたことを思い出した。
他にはもう店もないようだった。徐々に道の終わりが見え始めると、水の匂いがした。そうだ。川辺に幼稚園はあるのだ。
再び人の気配がした時、水辺は明るい光に包まれていた。
巨大な船が、水面からイルカのように高々と浮き上がって、着水する。
「もう一度。一定のリズムで」
先生の掛け声によって小さな船乗りたちが逞しく船を操る。科学の進歩というものだろうか。
(こんなことはきっとなかった)
懐かしさと恐れ、水上に浮かぶ船の大きさに圧倒されて泣き出しそうだった。
その時、すぐ近くで若者の声がした。
「前の映画で泣いたのはね……」
涙のメカニズムについて語られている間、僕は泣き方を忘れていた。
もしかするとこれはCGなのだろうか。
橋を渡ってジャージ姿の内山先生が戻ってきた。本物の内山先生だった。
十センチずつ手で触れて確かめていこうか……。馬鹿馬鹿しい考えを打ち消してノートを開いた。空白を探してめくっていくと最後のページになってようやく見つかった。一ページあれば十分だった。光あふれる水辺、優雅に浮かび上がる船を、ノートの真ん中に描いた。
描き終わった頃、黙って家を出てきたことを思い出した。