お釣りをもらって「ありがとう」と言うと女は何も言わず、寂しくなったので1分前に時滑りすると今度は無言で受け取った。これでチャラ返しだ。すっきりした気分になって歩き出す背を押し出すように後ろから「ありがとうございました」の声……。違う違う。なんでそんなこと言うかな。#twnovel
雫を切った傘を小さく折り畳んで袋の中に入れると口を開けた鞄の底深くに戻す。闇の中に差し入れた手に何者かが、「行くなら私もつれて行きなさい」。誘い文句につられるように、手は傘とは違う形状と感触を持つものをつかんで帰ってくる。いつもそのようにして、本との対話が始まる。#twnovel