眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

アウトサイド・アトラクション

2020-12-22 22:37:00 | ナノノベル
「君は乗らないの?」
「どうして?」
「みんな並んでるよ」
「僕は背が高すぎるんだ」
「そうは見えないけど」
「外からは見えないこともあるよ」

「ここで本を読んでるの?」
「そうだけど」
「石の上は硬くない?」
「別に」
「浮かれた人がたくさんいるよ」
「浮かれた人の隅っこは意外に落ち着くんだ」

「今しかできないことをしようとは思わないの?」
「例えば?」
「みんなと楽しい思い出を作るとか」
「ごちゃごちゃしたとこは楽しくない」

「その本の中は違うの?」
「文字は別だよ」
「どうして別なの?」
「密にならなきゃ意味にならないでしょ」

「人より文字が好きなの?」
「まあそういうことかな」
「ずっとそうしていて退屈じゃないの?」
「人といるよりはね」

「いつも独りでいるの?」
「自然にしてるだけ」
「人間を避けているの?」
「疎ましい時にはそうかもね」
「人間嫌いなんだ」
「どうかな」

「本は特別なの?」
「何が?」
「それも人から生じたものでしょ」
「それが何?」
「矛盾は感じないの?」
「何の矛盾?」
「登場人物に寄り添うことに」

「架空の人は別じゃない。あと人だけじゃないよ」
「猫とか虫とか?」
「妖怪とか人魚もいるよ」
「それだって擬人化されてるでしょ」
「だから何なの」

「じゃあ作者はどう? 作者は完全に人間でしょ」
「作者はあとがきまで出てこないから」
「都合がいいんだね」
「何のこと?」
「登場人物が勝手に動き回ってると思うんだ」
「だって物語だから」

「後ろにいる作者を忘れられるんだね」
「よくわからないよ」

「どんな話?」
「人が出てきてだんだん消えて行くの」
「じゃあ私と一緒だ」
「えっ?」
「君は3年生?」
「もうすぐ4年だけどね」

「じゃあもっと冒険しなくちゃ」
「この中でもうしてるよ」
「そうか」
「おじさんは?」
「お化け屋敷から追い出されちゃってね」
「そうなんだ」
「本物は駄目なんだってさ」

「へー、どこが本物なの?」
「さあな。自分がわかってるってことかな」
「そう。これからどうするの?」
「他でもまわってみるとするか」
「おじさん。きっと必要とされるとこがあるよ」
「そうかな」
「多様性が必要なんだって」
「本に書いてあるのか?」
「違うよ。一般論だよ」

「そうか。じゃあまたどこかのアトラクションで」
「じゃあね」
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」

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さよならクリスマス

2020-12-22 13:32:00 | ナノノベル
「ここが玄関。ここがバスルーム。ここがリビング。これが窓。これがベッド」
 あなたは私の説明を黙って聞いていた。
「これが壁。これが天井。雨風から守ってくれる。敵も入って来られない。ここにいていいよ。あなたに安全をプレゼントします」

「では、私は何を?」
「別に何も……」

 あなたはここが気に入ったようだった。私の周りには、あなたの音が、呼吸が、気配があり続けた。あなたは時々、私の夢を遮ることもあった。あなたも夢をみるのだろうか。わからない。あなたのことはほとんど何もわからなかった。私についてどれくらいの関心を持っていたのかも。
 私が望んだもの。それはただあなたの存在だったのかもしれない。
(存在)それが何なのか、やっぱり私にはまだよくわからない。


ありがとう(私に大船は似合いませんでした)

 クリスマスの朝、私はあなたの置き手紙をみた。

さようなら

 あなたが開けていった窓から小さく白く入ってくる。

「雪だ」

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