「今ですね対局室に1匹の犬が入ってきましたけれど、どうしましたかね。散歩中に飼い主さんとはぐれて、誤って紛れ込んでしまったのでしょうか。ちょっとおっちょこちょいな飼い主さんでしたかね、先生」
「何をおっしゃいますか。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」
「というと?」
「よくご覧になるとわかると思いますが。あれは犬じゃなくて犬に扮した観戦記者の方です。ちゃんとお仕事されてる方ですから。見てください。ペンを握って今何か書かれてるとこです」
「ほほほほっ。これは大変失礼いたしました。秋ですからね、ハロウィン等の一環で楽しませていただけるということだったのですね」
「そういうことです。我々がやっているのはエンターテイメントなわけですから。楽しくなければ将棋になりません」
「なるほど、もう定跡化された動きなわけですね」
「そういうことです」
「よく理解できました。この後も、竜王戦生中継をお楽しみください」