「脇息にもたれかかって、このままでは地の底の方に沈んで行きそうですが、先生これはやっぱり、現局面に絶望感を持っていて、投了も間近と考えられますか?」
「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」
「そうでしょうか。あの様子では、かなり苦しげかと」
「今は限界点を超えて読み耽っているわけですから、当然通常の姿勢とはまた異なるわけです。ああいったかっこうが普通とも言えますし、勿論希望を持って読んでるわけです」
「そうでしたか。苦しんでるわけではないのですね」
「苦しみもまた楽しみということです。読むというのはそういうことです」
「よく理解できました。みなさんも安心して応援することができそうですね」
「勝負はこれからですから」
「この後も、名人戦生中継をお楽しみください」