力を溜めるのがいい攻撃だと聞いた。確かにそうかもしれないと思わせる名人の駒さばき。溜め込んだ力が終盤一気に爆発して華麗な寄せが決まるのを見届けた。
私も真似してやってみる。仕掛けたいところをがまんして、チャンスと思われるところをあえて見送って。十分に力を溜めながら将来の寄せを夢見た。ところが、爆発の機会は訪れることがなく、攻め駒は単に大渋滞を引き起こしたまま最後まで動かなかった。寄せられたのは私の方だった。
その時、私は昔読んだ何かの民話の一場面を思い浮かべた。上辺だけなぞってみても人生は上手くいかない。形や心を近づけても、勝つところまでは真似ができないのだ。肝心の読みの部分が明らかに欠落していた。
読むことほど気力と体力のいる作業はない。それによって結果が約束されているわけでもない。感覚が鈍ければ無駄に読みを広げなければならない。人の心も、時代も、読み違えてばかりいるのだ。
そうして私は今日も反省記を書くことになった。
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