碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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テレ東「河北新報」ドラマのこと

2012年03月14日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。

今週は、震災を描いたドラマ「明日をあきらめない…がれきの中の新聞社~河北新報のいちばん長い日」(テレビ東京)について書きました。


震災特番で秀逸だったテレ東ドラマ


3月11日を中心に多くの震災関連特番が放送された。テレビ東京のドラマ「明日をあきらめない…がれきの中の新聞社~河北新報のいちばん長い日」もその1本。

震災直後、宮城の地元紙「河北新報」がどのようにして新聞を発行し続け、読者(被災者)に届けていたのかを描いていた。

まず評価したいのは、河北新報の人々をヒーロー扱いしていないことだ。小池栄子演じる女性記者をはじめ、彼らが戸惑いながら悩みながら取材をしていたことがわかる。

悲惨な現実を前に「こんなことをしていていいのか」と自問する記者。「テレビもネットも使えない被災者に何が起きているかを伝えよう」と励ます報道部長(渡部篤郎)。被災者でもある彼らを等身大で見せる演出に好感がもてた。

もうひとつ、このドラマの良さは販売所の人たちの姿を描いていたことにある。登場したのは多くの犠牲者がでた仙台市荒浜の販売所。津波で亡くなった店主の妻を斉藤由貴が好演していた。

新聞は読者に届いてこその新聞であり、その役割を担う人たちに目を向けた意義は大きい。実際に河北新報が避難所で配られた時、被災者たちは「ここに日常がある」と喜んだという。

ドラマには津波の映像や写真も挿入されるが、必要最小限にとどまっていた。これも制作陣の良識だろう。原作に出てくる“原発報道”に一切触れなかったのは、ストーリーがよれないための配慮と思いたい。

(日刊ゲンダイ 2012.03.13)


・・・・当時の被災地で、新聞はまさに「救援物資」でもあったのだ。