今週は卒業式だったけど、もう週明けには入学式が行われる。
で、現在3年生はといえば、就職活動の真っ最中だ。
そこで、就職活動中の学生の皆さんのために、ささやかな参考資料を提供してみます。
評論家の佐高信さんは知ってるよね(笑)。
その佐高さんが以前、インタビューに答えていたもので、学生が企業というものを理解していなんじゃないか、という文脈でのアドバイスだ。
佐高:そもそも、いまだに若者には、企業、特に日本を代表するような大企業は素晴らしいものだという誤解があるよね。でも、企業は、封建制で成り立っているもの。江戸時代の藩と一緒なんだよ。トヨタ藩であり、松下藩である。だから社長は世襲が多いし、従業員には言論の自由もないから、企業にとって不都合な情報は表に出にくい。そんな中で、企業の実態を知るために読むべきなのが、経済小説だね。就活中の学生には、会社案内やリクルート本だけじゃなくて、経済小説も読んでもらいたいな。
【1】『濁流 企業社会・悪の連鎖』(上・下巻)
高杉良/角川文庫(02年)/各680円
経済誌のオーナー・杉野は、新興宗教にハマる大物フィクサー。大企業や財界人の弱みにつけ込んでは、広告料などの名目で巨額のカネを集める杉野に、政官財界は翻弄され続ける。
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【2】『総会屋錦城』
城山三郎/新潮文庫(63年)/620円
「どの大企業にも、数匹、数十匹のダニがついている。用といえば、年に二回の総会ですごんだ声をかけるだけ」。株主総会やその裏で暗躍する総会屋のボスを描く直木賞受賞作品。
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【3】『虚業集団』
清水一行/集英社文庫(77年)/377円
戦後の混乱期に戸籍を消された上条健策は、独特の手口で手形の回った企業をそっくり食い続ける知能ギャング。モデルは、後に西武総会屋利益供与事件で逮捕される芳賀龍臥。
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【4】『銀行大統合』
高杉 良/講談社文庫(04年)/770円
第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の各トップは、金融界の大再編に着手した──。トップ同士の調整や会談など、メガバンク誕生の真相に迫る。
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【5】『金色の翼 暴かれた航空機商戦』(上・下巻)
本所次郎/読売新聞社(97年)/各1470円
運輸行政の裏で、米国の航空機メーカーからのリベートに群がる政官財の大物たち。ロッキード事件をモチーフに、元総理逮捕へと拡大する航空会社を舞台にした汚職を描く。
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【6】『白昼の迷路』
三好 徹/文藝春秋(86年)/1050円
1982年に起こった、IBMの機密を盗んだとして、日立製作所の社員が逮捕された産業スパイ事件がモチーフ。スパイ事件で明らかになった、企業と社員の冷酷なる関係を描く。
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【7】『小説電通』
大下英治/ぶんか社(03年)/1575円
メディアへの影響力を駆使して、ほかの代理店をメインにすえる企業をクライアントとして奪う、巨大広告代理店の実態を描く。四半世紀前の小説だが、業界構造は今も変わらず。
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【8】『トヨタの正体 マスコミ最大のパトロン』
横田一ほか/金曜日(06年)/1050円
〈プリウスは環境に優しくない〉〈最高級車レクサスと、100万円以上も安いマークXの構造は同じ〉〈格差が歴然とした労働環境〉......暴走する"世界のトヨタ"を徹底批判。
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【9】『電通の正体 マスコミ最大のタブー』
週刊金曜日取材班/金曜日(06年)/1260円
テレビや新聞、雑誌といったマスメディアのみならず、五輪や万博、そして、選挙や政局までも動かす力を持つまでに成長した電通の知られざるバックグラウンドをレポート。
・・・・こういう形の業種&企業研究、確かに有効だと思う。
まずは一冊、どうですか(笑)。