碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』に3・11を思う

2012年03月20日 | 映画・ビデオ・映像

長~いタイトルの映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を観た。

2005年に発表され、「9・11文学の金字塔」と評されたジョナサン・サフラン・フォアによるベストセラー小説を、「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー監督が映画化。9・11テロで最愛の父を亡くした少年オスカーは、クローゼットで1本の鍵を見つけ、父親が残したメッセージを探すためニューヨークの街へ飛び出していく。第2次世界大戦で運命の変わった祖父母、9・11で命を落とした父、そしてオスカーへと歴史の悲劇に見舞われた3世代の物語がつむがれ、最愛の者を失った人々の再生と希望を描き出していく。脚本は「フォレスト・ガンプ 一期一会」のエリック・ロス。オスカーの父親役にトム・ハンクス、母親役にサンドラ・ブロックらアカデミー賞俳優がそろう。

「これでダメな映画になるはずがない」という感じだが(笑)、実際、いい作品でした。

9・11テロで、妻にとっては夫を、息子にとっては父を、突然失ってしまうわけで、どうしたって納得なんかできない。

少年なら尚更だろう。

だから、父が残した(はずの)メッセージを探し続ける。

私自身が夫であり、父親だから、やはり「心ならずも残してしまった
家族」を見つめるような視線で映画を観ていた。

そして、アメリカの9・11が背景となっているのに、どこかで日本の3・
11と重ね合わせてもいた。

「愛する家族の理不尽な死」という意味では通じるものがあるのだ。

確かに人生は有限で、誰にも(私にも)死は訪れるが、テロや災害で
家族を失うのは、どれほど辛いことか、と思う。

この物語では、オスカーが出会う「言葉を失った老人(マックス・フォン・シドー)」の存在が大きい。

人に言えない苦しみを経験したであろう老人が、オスカーの心の支えとなっていくプロセスは、同時に老人にとっての救いでもある。

このあたりが実に見事だ。

まあ、それにしても、オスカー役のトーマス・ホーンの達者なこと(笑)。

観終わった時、今も海の向こうのどこかに成長したオスカーがいるはず、と感じさせてくれた。

さらに、「生きてるんだから、ちゃんと生きなきゃな」と、ふと真面目に思ったりもして(笑)。

映画のチカラは侮れません。