文春文庫の新刊、小林信彦さんの『黒澤明という時代』を購入。
2009年に出た単行本で読んでいるのだが、書店に“新刊”として並んでいるのを見ると、つい欲しくなって(笑)。
それに、昨日掲載した『黒部の太陽』の熊井啓監督が文中に出ていたような気がしたので、確かめたくなったのだ。
で、ありました。
第15章「文句なしに面白い『天国と地獄』」の途中で、小林さんが熊井監督の「世界の映画作家3 黒沢明」(キネマ旬報)での発言を引用している。
公開当時、『天国と地獄』での警察の扱いがおかしいと言われたようで、しかし熊井監督は「これはまったく見事なリアリズムだと思う」と述べているのだ。
続けて、「黒澤が官僚的な国家権力に癒着していくあらわれだみたいなことを、若手の批評家がいったけれども、ぼくは、よくぞ描いたと思う。警察とはそういうものだ。警察が自分で自分の交番を爆破することがあるんだから」。
そんな熊井監督の言葉をうけて、小林さんはこう書く。
「これまた極論で、黒澤明には、そうした<国家権力>観はなかったと思う」
いやあ、面白いなあ(笑)。
『天国と地獄』、また見直したくなりますねえ。
さて、今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。
牧野 洋
『官報複合体』 講談社
ケネス・ローマン 山内あゆ子:訳
『デイヴィッド・オグルヴィ~広告を変えた男』 海と月社
瀬川裕司
『ビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ』 平凡社
牧 久
『「安南王国」の夢』 ウエッジ
・・・・就職活動中の大学3年生でマスコミ志望の諸君は、『官報複合体』や『デイヴィッド・オグルヴィ』あたりは読んでおくといいかもしれません。
* 上記の本の書評は、
発売中の『週刊新潮』(3月29日号)
に掲載されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/fd/946f7e01496e48ebc46882fabde2296b.jpg)