北海道新聞に、月イチで連載している「碓井広義の放送時評」。
今回は、NHK「カーネーション」、UHB「のりゆきのトークDE北海道」などについて書きました。
長寿番組の幕引き
視聴者納得の有終の美を
視聴者納得の有終の美を
3月は卒業の季節だ。慣れ親しんだ番組のいくつかもまた後わりを迎える。
その中で、NHK連続テレビ小説「カーネーション」に拍手を送りたい。ファッションデザイナーであるコシノ3姉妹の母・小篠綾子さんをモデルに、大正末期から現代へと至る“女の一代記”として出色の出来だった。
タブーにも挑む
このドラマは、戦争が国民を被害者にも加害者にもする現実を見せたり、実話とはいえ不倫という朝ドラではタブーとも思えるヒロインの恋愛模様を描いたりと、いくつもの挑戦を続けてきた。
それを支えたのは、渡辺あやの細やかなオリジナル脚本と、尾野真千子の硬軟とり混ぜた絶妙の演技だ。先週末から主人公が尾野から夏木マリへと交代したが、制作側の狙いはともかく「尾野真千子の糸子」を晩年まで見てみたかった。
道内ではUHB「のりゆきのトークDE北海道」が3月末で終了する。放送開始から17年半、四千数百回を数える長寿番組だ。主婦層の関心事にこだわり、家庭内の問題から政治や経済までを独自の切り口で扱ってきた。
また、生電話とファクスを使った視聴者との双方向のやりとりでは、司会の佐藤のりゆきの人柄と話術がいかんなく発揮されていた。地方局にとってハードルの高い自社制作を定着させ、ジャーナリスティックな視点も交えながら視聴者と並走し続けた功績は大きい。
しかし昨年春、時間枠の縮小と内容の見直しが行われ、番組のパワーは半減したように思う。予算や人員を新番組「U型テレビ」に振り向ける必要があったとはいえ、長年「トーク」を楽しんできた視聴者と佐藤にとって不本意なこの1年だったのではないか。
どんな番組もいつか終わりはくる。長寿番組の幕引きは特に難しいが、ぜひ視聴者にも納得のいく有終の美を飾ってほしい。長きにわたって看板番組を支えてきた佐藤と歴代スタッフに、あらためて敬意を表したい。
震災特番に注目
さて、間もなく東日本大震災から1年になる。3月11日を中心に各局は特番を流すが、未曽有の災害を風化させないためにも必要な取り組みだ。ただし単なる追悼・回顧番組であってはならず、現在も進行中の“わたしたちの問題”として提示すべきだろう。
また、キー局と被災地局との関係や継続報道など、放送ジャーナリズムが抱える課題も多い。テレビがこの1年間にどれだけ自己検証を行った上での特番か、という点にも注目したい。
(北海道新聞 2012.03.05)