碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

200万アクセスに、感謝です

2012年03月19日 | テレビ・ラジオ・メディア

この「碓井広義ブログ」へのアクセスですが、昨日の時点で、トータル2.002.428PV。

200万件に達していました。

昨年6月の100万、11月に150万となった時も驚いていたのですが(笑)、またまたびっくりです。

開設したのが2008年4月なので、来月で丸4年。

閲覧して下さった皆さんには、ひたすら感謝です。

やはり、読んでくださる人の存在が、書く側にとっては最大の励みですから。

例によって(笑)、これからも、これまでと変わらず、テレビを中心としたメディアのこと、本のこと、映画のこと、大学のこと等々を書き続けていきますので、引き続き、よろしくお願いいたします。


映画『黒部の太陽』の特別編と完全版

2012年03月18日 | 映画・ビデオ・映像

NHK-BSプレミアムで、映画『黒部の太陽』特別編を観た。

未曾有の難工事だった黒四ダムの建設を描いた熊井啓監督作品で
あり、ずっと見たいと思っていた1本だ。

公開は1968(昭和43)年だが、この作品は現在に至るまでビデオ化されていないし、テレビでの放映もほとんどなかった。

また、最近だと2003年に石原裕次郎17回忌で記念上映が行われた以外、劇場でのリバイバル公開もあまりない。

公開当時、私は信州の中学生だったが、信州にかかわる作品、信州出身の監督ということで、学校の体育館に映画館が出張する形で、全校生徒が一緒に観た。

それ以降は『黒部の太陽』を観ていない。

慶大SFCで教えていた90年代の終わり、「日本映画の巨匠たち」シリーズと題して、監督の講演と上映会を連続して行ったことがある。

上映はビデオやDVDではなく、映写機と映写技師さんをチャーターしてでも、スクリーンでの上映にこだわった。

学生たちに、”映画という体験”をして欲しかったからだ。

このシリーズ・イベントで、母校(松本深志高校)の大先輩である熊井監督にも藤沢キャンパスまで来ていただいた。

当初、私は『黒部の太陽』を上映したいと思い、監督に相談している。

すると、監督から「あの作品だけは難しいんだよ」と残念そうな返答があった。

実際そうだった。

上映は叶わなかった。

最終的には、『海と毒薬』を上映することにした。


そんなわけで、昨夜、BSプレミアムで『黒部の太陽』が流されること
自体に、さまざまな感慨があったのだ。

ただ、放映された「特別編」を観ていて、「あれ?」と思った。

記憶の中にあるシーンが出てこなかったのだ。

「中学生時代の記憶だから」とも思ったが、熊井監督のシナリオで確認してみた。

そこには、今回の「特別編」で消えていたシーンがあった。

映画のラストで、三船敏郎が演じる関西電力の黒四建設事務所次長が、すでに観光地となった黒四ダムを訪問する。

その際、三船は、ダムへと客を運ぶバスから、トンネルの途中で降りるのだ。

そこは難工事の現場である「破砕帯」の部分。

80数メートルの距離に長い時間と多くの犠牲を払った場所だ。

トンネル内には「これより破砕帯」と「破砕帯おわり」という、2つの表示ランプが設置されている。

三船は、その2つの表示の間を、自分の足でゆっくりと歩く。

歩きながら、苦しかった当時の出来事を思い出すのだ。

いいシーンだった。




実は、特別編では、この部分だけでなく、気がつかないけれど、たくさんのシーンがカットされているのだ。

熊井監督が書き残してくれた『黒部の太陽 ミフネと裕次郎』(2005年刊)によれば、この映画の封切版の長さは「3時間15分」。

しかし、2003年の裕次郎17回忌記念上映も、今回のBSプレミアムでの放映も、「2時間10数分」の長さである。

監督は、シナリオも収録したこの本の“あとがき”で、「私は三時間十五分の『完全版』の再上映を強く望むものである」と書いている。

上映に関しては、石原プロがコントロールしているはずだ。

完全版の“封印”をめぐって、どんな事情があるのか、くわしいことは知らない。

ただ、一人の映画ファンとして、熊井監督が生前に果たせなかった完全版の上映を、私もまた強く希望するものであります。











今週の「読んで(書評を)書いた本」 2012.03.18

2012年03月18日 | 書評した本たち

苫米地英人さんの新著『洗脳広告代理店 電通』(サイゾー)を入手した。

なんとまあ、いつにも増して刺激的なタイトル(笑)。

「黒幕」「洗脳」「GHQ」「CIA」「解体」「監視」といった言葉が並んでいます。

ドクター苫米地の前著『テレビは見てはいけない』も面白かったけど、今度の相手は、あの電通さん。

いかなる<脱「メディア洗脳」宣言>になっているのか、楽しみだ(笑)。


今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。

 
西尾幹二 
『天皇と原爆』 新潮社

川端幹人 
『タブーの正体!』 ちくま新書

逢坂 剛 
『小説家・逢坂 剛』 東京堂出版

須藤 靖 
『三日月とクロワッサン』 毎日新聞社 

言論出版の自由を守る会:編 
『藤原弘達「創価学会を斬る」41年目の検証』 日新報道 

谺 雄一郎 
『醇堂影御用 逃げ出した娘』 小学館文庫 


* 上記の本の書評は、
  発売中の『週刊新潮』(3月22日号)
  に掲載されています。



「新入生オリエンテーション・キャンプ」に向けて

2012年03月17日 | 大学

本学の新入生支援プロジェクトである「オリエンテーション・キャンプ」、通称「オリキャン」の全体会議が行われた。



オリキャンは入学式の直後、まだ授業開始前に、各学部の学科ごとに分かれて、1泊2日で実施される。

学科としてのガイダンス、授業の履修登録の説明はもちろん、新入生同士が知り合うための様々なプログラムも組まれている。

何より、”ひとつ屋根の下”に泊まり、”同じ釜の飯”を食べるのがいい(笑)。


これを実質的に仕切っていくのが「ヘルパー」と呼ばれる学生たちだ。

各学科にヘルパー部隊が組織され、彼らがオリキャンの内容を決めていく。

みんな、ボランティア精神と積極性を併せ持った学生たちだ。

教員もまた、新入生と同様、ヘルパーの指示に従って動く。

勝手は許されない(笑)。

全体会議では、応援指導部による「校歌」の練習もあった。





オリキャンでは、ヘルパーたちが新入生に校歌を教える。

行事でしか聴くことはないが、だんだん、いい曲だと思えてきた。

まだ歌えないけど(笑)。

久しぶりの教室。久しぶりの学生たちの顔。

春が、新学期が、近づいていることを感じさせてくれました。


週刊文春「一流企業に本当に強い大学ランキング」を読んで

2012年03月16日 | 大学

『週刊文春』、すごいなあ(笑)。

最新(3月22日)号で、大学生の就職に関する、15ページもある大特集が組まれている。

題して、『一流企業に本当に強い「大学ランキング」~超氷河期「成功する就職」の秘密』

大学3年生の子供を持つ親御さんなんかは、つい買ってしまいそうだ(笑)。

どこの大学から、どんな企業(いずれも一流らしい)に、何人入ったか、という一覧表もある。

このリストは「一流企業に就職できる大学」という括りになっており、関東では、早大、慶大、東大、東工大、一橋大、法大、中大、上智大、青学大、駒大、立大、日大、という12の大学が並ぶ。

“就職に強い”明治がないけど、いいのかな(笑)。

記事では、各大学の就職状況についての説明があり、「早慶では金融が圧倒的」みたいなことが書いてある。

えーと、本学に関しては、「上智大学は金融機関だけでなく、1位の日立製作所や8位のNTT東日本など、インフラ系企業の就職者も目立つ」そうだ。

まあ、いわゆる一流企業に行きたい人は、上記の大学に在籍していれば、より可能性が高い、という話のようです。

別に文句はありませんが(笑)、「一流(と呼ばれる)企業」の全部が
全部、本当の意味で一流かどうかは、わからないわけで。

たとえば、以前ならリストにあるはずの「JAL」の文字、今回は無い。

一方、ANAには青学から20名、上智から10名となっている。

また、このリストは「2011年入社」のものなので、「東京電力」もちゃんとランクインしており、東大で15位(20名)、東工大では9位(15名)となっている。

昨年の春、両大学から東京電力に入った35名の新人は、まんま在籍しているとしたら、1年を経た今、どんなことを考えながら仕事をしているのだろう。

そんなこんなを思いつつ、この大特集を読んでいます。

ホワイトデーの翌日は3月15日

2012年03月15日 | 日々雑感

久しぶりで、横浜まで出かけて夕食。

そのまま横浜で一泊してみました。

昨日は「ホワイトデー」でしたが、無関係です(笑)。

家からそんなに遠くないのに、少しだけ旅の気分も味わえたりして。

そうそう、ちなみに13日夕方の「ゴディバ」横浜ランドマーク店は、
“お返し”を購入するスーツ姿の人々で、にぎわっておりました(笑)。



今日は3月15日。

3月15日という日付から「三・一五事件」を思い浮かべる人が、どれくらいいるのか、わかりませんが、なぜか毎年「あ、三・一五事件の日だ」と思ってしまいます。

1928(昭和3)年の3月15日に起きた、社会主義者や共産主義者に対する弾圧事件。

84年前の日本。治安維持法の時代。共産党などの関係者が約1600人も検挙されました。

学生さんなどで興味のある人は、『蟹工船』の小林多喜二が書いた『一九二八年三月十五日』を読んでみてください。


テレ東「河北新報」ドラマのこと

2012年03月14日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。

今週は、震災を描いたドラマ「明日をあきらめない…がれきの中の新聞社~河北新報のいちばん長い日」(テレビ東京)について書きました。


震災特番で秀逸だったテレ東ドラマ


3月11日を中心に多くの震災関連特番が放送された。テレビ東京のドラマ「明日をあきらめない…がれきの中の新聞社~河北新報のいちばん長い日」もその1本。

震災直後、宮城の地元紙「河北新報」がどのようにして新聞を発行し続け、読者(被災者)に届けていたのかを描いていた。

まず評価したいのは、河北新報の人々をヒーロー扱いしていないことだ。小池栄子演じる女性記者をはじめ、彼らが戸惑いながら悩みながら取材をしていたことがわかる。

悲惨な現実を前に「こんなことをしていていいのか」と自問する記者。「テレビもネットも使えない被災者に何が起きているかを伝えよう」と励ます報道部長(渡部篤郎)。被災者でもある彼らを等身大で見せる演出に好感がもてた。

もうひとつ、このドラマの良さは販売所の人たちの姿を描いていたことにある。登場したのは多くの犠牲者がでた仙台市荒浜の販売所。津波で亡くなった店主の妻を斉藤由貴が好演していた。

新聞は読者に届いてこその新聞であり、その役割を担う人たちに目を向けた意義は大きい。実際に河北新報が避難所で配られた時、被災者たちは「ここに日常がある」と喜んだという。

ドラマには津波の映像や写真も挿入されるが、必要最小限にとどまっていた。これも制作陣の良識だろう。原作に出てくる“原発報道”に一切触れなかったのは、ストーリーがよれないための配慮と思いたい。

(日刊ゲンダイ 2012.03.13)


・・・・当時の被災地で、新聞はまさに「救援物資」でもあったのだ。


古館伊知郎「番組に圧力」発言の行方

2012年03月13日 | テレビ・ラジオ・メディア
(新聞社による検証も続々出版化)


11日に放送された、テレビ朝日の震災特番『報道STATION スペシャル』。

そのエンディング部分で、MCの古館伊知郎さんが突然、以下のような発言をした。


「『報道STATION』ではスペシャル番組として、去年の12月28日の夜、原発の検証の番組をお送りしました。津波で原発が壊れたのではなく、それ以前の地震によって一部、第1原発のどこかが損壊していたのではないかという、その追求をしました。

今回、このスペシャル番組で、その追求をすることはできませんでした。<原子力村>というムラが存在します。都会はこことは違って目映いばかりの光にあふれています。

そして、もう一つ考えることは、地域で、主な産業では、なかなか暮らすのが難しいというときに、その地域を分断してまでも、積極的に原発を誘致した、そういう部分があったとも考えています。

その根本を、徹底的に議論しなくてはいけないのではないでしょうか。私はそれを、強く感じます。そうしないと、今、生活の場を根こそぎ奪われてしまった福島の方々に申し訳が立ちません。私は日々の『報道STATION』の中でそれを追求していきます。

もし圧力がかかって、番組を切られても、私は、それはそれで本望です。また明日の夜、9時54分にみなさまにお会いしたいです。おやすみなさい」



私も見ていたが、「原子力村」「圧力」という言葉に、「あ、言っちゃった」(笑)と少し驚く。

つまり、12月の検証番組以降、原子力業界方面からの圧力があったこと、圧力をかけられていることを、番組の中で認めたかたちになる。

生放送だから、誰も古館さんのトークを止めることは出来ないわけで、この発言がいろんな波紋をおこすことも承知の上での、いわば確信犯としての行為だったはず。

「原発事故報道とメディア」の関係を考えるという意味でも、内外からどんなリアクションがあるのか、ないのか、しばし注視です。

「朝日ニュースター」番組審議会に出席

2012年03月13日 | テレビ・ラジオ・メディア

CS放送局の「朝日ニュースター」。

その番組審議会に出席しました。

私以外のメンバーは
大石裕(委員長・慶応義塾大学法学部長)、
坂東眞理子(昭和女子大学学長)、
田中優子(法政大学教授)、
隈元信一(朝日新聞編集委員)、
砂川浩慶(立教大学准教授)、
兼高聖雄(日本大学教授)の各氏。

審議会じゃなくても、このまま「朝日ニュースター」らしい番組が出来そうな方々です(笑)。

<ジャーナリズムTV>というユニークなコンセプトの放送活動をめぐって、さまざまな意見が交わされました。

非常に面白かった、その内容ですが・・・・

守秘義務があって(笑)。



3月11日は、怒涛の「震災特番」DAYだった

2012年03月12日 | テレビ・ラジオ・メディア

クリスチャンとかなら教会にでも行くんだろうが、そうじゃないので、結局、午後2時46分に「黙とう」するためにだけ、東急線に乗車してきました。

この時間の3分前に、私が乗った電車は、「非常時の列車一斉停止訓練」という名目で駅に停車。

そして46分になった時に、「よろしければ黙とうを」という車内アナウンスが流れた。

一瞬、車内を見まわしたら、ほとんどの人が目を閉じました。

私も急いで帽子を取り、黙とう。

次の駅で降りて、好きなコーヒー屋さんで一休みし、また電車に乗って帰ってきました。




テレビについて言えば、仕事をしながら、朝からずっと、あちこちの震災特番を見ていた。

その結果、今、順不同かつ断片的に思い出す映像は・・・・

●みのもんたが被災地に、あの大パネルを持って行っていた。

●1年前に取材した被災者たちを訪ね、現在の様子を取材していた。

●木村太郎が復旧したという被災地の鉄道に乗っていた。

●1年前、視聴者が撮った映像の中で「津波から逃げていた人」を探し出し、インタビューしていた。

●アメリカ軍による「トモダチ作戦」のエピソードを紹介していた。

●長渕剛が被災地でずいぶん憤っていた。

・・・などなど、です。




こうなると、3月11日のテレビ東京の"通常”編成には、何かしら深い意味、もっと言えば独自の“見識”のようなものがあったのではないか、と思えてきたりして。

たとえば・・・

「ウチ(テレ東)は、3月11日であろうとなかろうと、震災や原発に関する新たな事実といった、伝えるべきことがあれば、いつでも伝えます。だから1年という区切りが存在するかのような、まるで震災も原発事故も終息したかのような、<いい話><今だから言える話><泣ける話>などを並べたイベント的な特番をこの日にやることは、あえてしないんですよ」

・・・とか。

まあ、本当のところはわかりませんが、各局の怒涛のごとき震災特番にやや疲れるたび、マラソンの給水ポイントのような感じでテレビ東京を訪問し、震災とは無関係な番組を眺め、少しホッとしたことを、正直に記しておきます(笑)。


今日3月11日、テレビは何を、どう伝えるのか

2012年03月11日 | テレビ・ラジオ・メディア

今日3月11日は、東日本大震災から、まさに1年となる。

地震発生の午後2時46分の、予定されているテレビ番組は以下の通りだ。


●NHK総合:
明日へ~震災から1年~ 
 12時15分~16時15分

●日本テレビ:
復興テレビ みんなのチカラ 3.11 第1部 
 12時45分~17時25分

●TBS:
JNN報道特別番組「Nスタ×NEWS23クロス 3.11絆スペシャル」 
 13時54分~16時54分

●フジテレビ:
FNN報道特別番組 東日本大震災から1年・・・「希望の轍」 
 12時00分~16時00分

●テレビ朝日:
つながろう!ニッポン 第二部 「スーパーJチャンネルSP~秒針が語るあの時~」
 13時00分~16時00分

●テレビ東京:
「銀座高級クラブママ 青山みゆき3 赤いバラの殺人予告」 
 14時00分~16時00分


うーん、確かにテレビ東京は異彩を放っている(笑)。

リアルタイムで、各局を見てみようと思う。

その上で、このテレ東の編成が視聴者にどう映るか、確認してみる
つもりだ。


今日の午後2時46分、首都圏では、私鉄各社が電車を「一斉停止」
させる。

訓練だそうだ。

そして東急線などでは、車内アナウンスで「黙とう」を促すという。

停まった車内で、一斉に黙とうをする乗客。

野次馬的で恥ずかしいが、その光景、ちょっと見てみたいような気もする。

でも、たぶん仕事中だ。一人で、黙とうしていると思う。


それにしても1年。

たくさんのことが、大きく変わった1年だった。

2012年3月11日。

今日、テレビは、何を、どう伝えようとしているのだろう。


『ヒューゴの不思議な発明』に困った

2012年03月10日 | 映画・ビデオ・映像

映画『ヒューゴの不思議な発明』。

世界各国でベストセラーとなったブライアン・セルズニックの冒険ファンタジー小説「ユゴーの不思議な発明」を、マーティン・スコセッシ監督が3Dで映画化。駅の時計台に隠れ住む孤児の少年ヒューゴの冒険を、「映画の父」として知られるジョルジュ・メリエスの映画創世記の時代とともに描き出す。1930年代のパリ。父親の残した壊れた機械人形とともに駅の時計塔に暮らす少年ヒューゴは、ある日、機械人形の修理に必要なハート型の鍵を持つ少女イザベルと出会い、人形に秘められた壮大な秘密をめぐって冒険に繰り出す。

とにかくスコセッシ監督作品ですから、無条件で劇場へ。

ただし、予備知識なしに観ようと思い、原作の内容も含め、事前に中身についての情報は出来るだけ遮断して、“出会いがしら”を目指しました。

で、先に言っちゃうと、「うーん、困ったなあ」といった感じです。

こういう話だったのかあ(笑)。

確かに映像は見事だった。

そして、スコセッシ監督の「映画愛」なるもの、映画監督の大先輩としてのメリエスに対する敬愛も、十二分に伝わってきます。よーくわかりました。

でも、それが、まんまこの作品に感動することに、どーにも自分の中で繋がらなくて、困ったわけです。

あらら、ということもいくつかあって・・・

・特に前半の、退屈一歩手前のズルズルしたテンポ。

・主人公の少年の気持ちが、いまいちよくわからない。

・メリエスが映画と別れてしまう理由って、アレでいいのか。

・機械人形に隠された謎、メッセージが、アレなのか(笑)。

などなど。


スコセッシ監督が選び、歩んできた、映画という世界への“感謝と自負”を、実績的にも年齢的にも、「そろそろ残しておいてもいいかな」と思ったのかもしれません。

そういう意味では、これ以上ない、というくらい監督の思いは表現されておりました。


「震災ドラマ」のもやもや

2012年03月09日 | テレビ・ラジオ・メディア
「3・11その日 石巻で何が起きたのか~6枚の壁新聞」


こういうのは、なんて呼べばいいんだろう。

「震災ドラマ」「震災関連ドラマ」という呼称も、変にわかりやすくて、
ナンダカナーだし。

事実に基づいたドラマだから、ジャンルというか、手法としては「ドキュメンタリー・ドラマ」ということなんだろうけど、なにやらモヤモヤしてしまうのは、なぜだろう。

2本見た。

テレビ東京「明日をあきらめない・・・がれきの中の新聞社~河北新報のいちばん長い日~」(3月4日放送)

日本テレビ「3・11その日 石巻で何が起きたのか~6枚の壁新聞」
(3月6日放送)

テレ東は「河北新報」、日テレが「石巻日日新聞」だ。

いや、2本とも、それなりに真面目に作られていて(当然だ)、それなりに見られたわけですが、さあ、この”読後感”としてのモヤモヤは、なんだろうねえ、一体。

あらためて、考えてみます(笑)。

今週の「読んで(書評を)書いた本」 2012.03.09

2012年03月09日 | 書評した本たち

今日も注文しておいた新刊や古書が届く。

届くのが嬉しくて注文しているみたいだ(笑)。

アマゾンは相変わらず便利で、夜中にあれやこれやと古書を発注してしまう。

今日は古書ばかり到着の日。

最近凝っている(?)のは、BSで見たドキュメンタリーに刺激を受けて、伊丹十三さんのものを『ヨーロッパ退屈日記』から順番に読んでいる。

そこから派生して、岸田秀さんの『ものぐさ精神分析』なども。

伊丹さんの本は、ほとんど以前に読んでいるはずだが、あら不思議、ほとんど初見のような気分で、「ああ、そうなんだ」「ふーむ、なるほど」が実に多い。

『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』の中の、“テレビの現場”がらみのエッセイ「スタッフ」「インタビュー」「ヤラセ」あたりは何度読んでも笑ってしまう。

放送関係者諸氏の中で、未読の方は、ぜひ。


さて、今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下のように、ずいぶん多いです。

 
長浦 京 
『赤刃』 講談社  *小説現代長編新人賞

鈴木邦男 
『竹中労~左右を越境するアナーキスト』 河出書房新社

川本三郎 
『白秋望景』 新書館

川上見映子 
『魔法飛行』 中央公論新社

養老孟司・隈研吾 
『日本人はどう住まうべきか?』 日経BP社

本間 龍 
『転落の記』 飛鳥新社

辺見 庸 
『瓦礫の中から言葉を』 NHK出版新書


* 上記の本の書評は、
  発売中の『週刊新潮』(3月15日震災1周年追悼号)
  に掲載されています。




BSのチャンネル数が増えて

2012年03月08日 | 「東京新聞」に連載したコラム

『東京新聞』に連載しているコラム「言いたい放談」。

今回は、先週からBSのチャンネル数が増えたこともあり、テレビの多チャンネル化について、考えてみました。


多チャンネル化と選択

昨年七月二四日の地デジ完全移行以来、BS放送を見る時間が多くなった。にぎやかな地上波に疲れた時、BSの海外ドキュメンタリーや、ゆったりとした紀行番組にほっとする。

デジタル化で地上波とBSの垣根が低くなり、簡単なリモコン操作で訪問出来ることも一因だ。

今月一日、BSのチャンネル数がこれまでの二四から三〇に増えた。十七日にはさらにもう一局が加わる。

スポーツ好きには「J SPORTS」、釣りが趣味なら「BS釣りビジョン」等々、“専門店”が並んでいるのがBSの特色だ。

私が気になるのは「BS日本映画専門チャンネル」「イマジカBS」などの映画チャンネル。地上波のようにCMで中断されることなく、映画を楽しむことができる。

これらの局は、加入すれば月額はレンタルビデオ二本分くらい。地上波は、NHK受信料以外は無料とはいえ、見たくないものはタダでも嫌だという視聴者は確実に増えている。

しかし、考えてみれば一日は二十四時間しかなく、家で過ごす時間も限られている。本も読みたいし、メールのやりとりもある。テレビと向き合ってばかりではいられない。

つまり、ますます「選択すること」が重要になってくる。視聴者にとって何よりも貴重な時間を投入する価値のある番組。地上波もBSも最後はそこに行きつく。

(東京新聞 2012.03.07)