碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

今週の「読んで、書評を書いた本」 2013.03.17

2013年03月17日 | 書評した本たち

日本SF作家クラブが創立されたのが1963年。

今年は50周年だ。

そこで、日本のSF小説50年の歴史を、50人の作家の、50作の短篇で辿ってみよう、というすごい企画が出てきた。

「日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー」である。

10人ずつで、全5巻。

まずは、1963年から73年までの傑作短篇が収められた、日本SF作家クラブ:編「日本SF短篇50 Ⅰ」(ハヤカワ文庫)だ。

星新一、福島正実、半村良、そして筒井康隆もいる。

1972年に発表された、筒井康隆「おれに関する噂」など、懐かしくて、しかも、まったく古くない。

それに、この小説の中の「テレビ」「新聞」といったメディアを、「ネット」に置きかえて読むのも、また一興です。



今週の「読んで、書評を書いた本」は、以下の通り。

沢木耕太郎 『キャパの十字架』 文藝春秋

相場英雄 『血の轍』 幻冬舎

ジョン・アップダイク 若島正:編訳、森慎一郎:訳
『アップダイクと私』 河出書房新社

東海テレビ取材班 
『名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の半生記』 岩波書店

平松洋子 『小鳥来る日』 毎日新聞社

東浩紀 『東浩紀対談集 震災ニッポンはどこへいく』 ゲンロン

* 上記の本の書評は、
  発売中の『週刊新潮』(3月21日号)
  Bookworm欄に掲載されています。


関西テレビの報道映像「偽装」をめぐって

2013年03月16日 | テレビ・ラジオ・メディア

先日、関西テレビが報道映像を偽装した、という報道がありました。

新聞によれば・・・・

『あるある問題』の関テレが報道映像を偽装 
匿名インタビューの人物入れ替え

関西テレビ(大阪市北区)の夕方の報道番組「スーパーニュースアンカー」で、報道局記者が匿名インタビューをした際、映像を他の人物に差し替えて放送していたことが12日、わかった。

同局をめぐっては平成19年に情報番組の捏造問題が発覚し、当時の社長が引責辞任するなど社会問題化。今回も報道局員が関わっていたことで番組のチェック態勢やモラルのあり方が問われそうだ。

同局によると、昨年11月30日放送分で、大阪市役所職員の「兼業」疑惑をめぐって内部告発者をインタビューした際、本人が映像での出演を拒否したため、制作会社のスタッフを撮影し、音声のみ本人のものを使って放送したという。

このインタビューは、同局会議室内で報道局記者とカメラマン、制作会社スタッフのクルー3人で30分程度行い、後ろ姿の制作会社スタッフを撮影。番組では、モザイクをかけて放送された。

放送から数日後、クルーの一人が「この手法でよかったのか」と報道局幹部に相談して問題が発覚。同局で調査した結果、「あくまで告発者を守るためで、告発情報などの事実を捏造したとは言い切れないものの、編集方法が不適切だった」として、報道局記者を口頭による厳重注意としたという。

同局は「提供者の取材時間に制約があったので、結果としてそういうことになってしまった。今回の事態を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めたい」(企業広報担当)としている。

(産経新聞 2013.03.13)



やれやれ、「あるある」で懲りたはずの関テレで、しかも報道番組が、こんなことをやっているのか。

確かにテレビ報道では、「絵があるかどうか」は大きな問題だが、このケースはどうだろう。

何より、「別人を撮っておいてモザイクかければOK」とする制作側のレベルが情けない。

報道番組にも制作会社の人間が大量投入されているのが当たり前だが、自分たちが「報道マン」だという自覚をどれだけ持っているのか。

新聞記事は新聞記者が書くが、報道番組は必ずしも報道のプロが作っているわけではない、と言われても仕方ないような話だ。

せっかくこの報道内容には意義も価値もあるのに、その信憑性さえ問われるような、テレビ報道への信頼を自ら損なうような、残念な伝え方でした。


その後、番組サイトに掲載された「お知らせ」は以下の通り。

この内容で、「お知らせ」という表現も、ナンですかねえ(笑)・・・・

アンカー特集での「不適切な映像表現」につきまして

去年11月30日にアンカーで放送した特集の中で、「不適切な映像表現」がありました。その経緯と事実関係は、以下のとおりです。

特集は、夜間に工事現場で働く大阪市職員の「兼業の実態」を取材したもので、内部告発者が関西テレビのインタビュー取材に答えてくださいました。

この内部告発者は自身が告発したことを知られるのを非常に警戒され、インタビューの際、「自分の体が全く映らないようにしてほしい」と要望されました。

その結果、ピンマイクをつけた内部告発者にインタビューをしながら、同じ部屋にいた撮影スタッフの後姿を撮影する形になりました。声は内部告発者本人のものですが、映像は別人であり、「不適切な映像表現」でした。この件は放送の後、取材スタッフが上司に相談したことから明らかになりました。

関西テレビでは、今回の件は事実ではないことをでっち上げて伝える「ねつ造」や、事前に示し合わせて相手に作為的に行なわせる「やらせ」にはあたらないと考えています。

しかし、内部告発者を保護するためとはいえ「不適切な映像表現」であり、視聴者の皆様にお詫びいたします。

今後このようなことがないよう、再発防止に努めます。

(関西テレビ「スーパーニュースアンカー」WEBサイト)

【気まぐれ写真館】 慶應義塾横浜初等部

2013年03月15日 | 気まぐれ写真館

【気まぐれ写真館】 3月14日の夕景

2013年03月15日 | 気まぐれ写真館

【気まぐれ写真館】 ジャズ喫茶「いーぐる」のコーヒー

2013年03月15日 | 気まぐれ写真館

「全国広報コンクール」の審査会

2013年03月15日 | テレビ・ラジオ・メディア

日本広報協会が主催する「全国広報コンクール」。

その映像部門(広報番組・広報映像)の審査会を行いました。

全国の都道府県で最優秀に選ばれた作品がずらりと並び、その中から特選など受賞作を選ぶという、大変ではありますが、とてもやりがいのある作業です。

嶋田親一先生と私が、それぞれ事前に全作品を見た上で、審査会に臨みます。

お互いが、どの作品を、どのように評価しているのか。

こういう審査は、逆に選ぶ側の見識や力量が問われます。

毎年、大々先輩である嶋田先生との、いわば“勝負”の場、それも真剣勝負なのです。

さて、レベルの高い作品が多かった今年の結果ですが・・・

その公表は、もう少しお待ちください(笑)。

Nスペ「わが子へ~大川小学校 遺族たちの2年」が伝えたこと

2013年03月14日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、NHKスペシャル「わが子へ~大川小学校 遺族たちの2年~」を取り上げました。


NHKスペシャル
「わが子へ~大川小学校 遺族たちの2年~」

消えない悲しみと複雑な思いを静かに伝える
“こころのドキュメント”

東日本大震災から2年。先週から今週にかけて、各局で関連番組が何本も流された。その中で特に印象に残ったのが、8日に放送されたNHKスペシャル「わが子へ~大川小学校 遺族たちの2年~」である。

石巻市立大川小学校では、全校生徒108人のうち74人が津波の犠牲となった。また11人いた教員も10人が亡くなってしまう。まさにあり得ないような悲劇だった。

番組には3組の遺族が登場する。妻と小学生だった長男を含む3人の子供を失った父親は、まだ見つからない我が子を探して今もショベルカーのハンドルを握っている。

また6年生の娘を亡くした父親は教育員会の調査結果に納得がいかない。しかし自身も中学校の教員であるため、声を上げることに二の足を踏んでいた。

そして大川小学校の教員だった息子に先立たれた母親は、その悲しみだけでなく、結果的に息子が生徒たちを守れなかったことへの負い目と共に暮らしている。

これは、「安全なはずの学校でなぜ?」という疑問に答える検証番組ではない。遺族たちの消えない悲しみと、生き残った者としての複雑な思いを静かに伝える“こころのドキュメント”だ。

時間が経って逆に増してくるつらさもあることを知ると同時に、あらためて震災とその犠牲者、遺族の存在を忘れてはならないと思わせてくれた。

(日刊ゲンダイ 2013.03.13)

放送批評懇談会シンポジウム 「ローカルパワーの創り方」

2013年03月13日 | テレビ・ラジオ・メディア

3月21日(木)に開催する「放送批評懇談会シンポジウム2013」
まで、あと1週間となりました。

参加申込みの締切が13日(水)ですので、ご注意ください。


放送批評懇談会シンポジウム2013
ローカルパワーの創り方

<開催趣旨>
2013年は日本でテレビ放送が始まってから60周年にあたります。また東日本大震災から2年が経ち、被災地の放送局の地デジ化も完了して、文字通り日本のテレビはデジタル・メディアの一員となりました。この間、政治や経済はもちろん、メディアの世界も大きく動いてきました。特にソーシャルメディアを中心とするウェブの積極的な活用は、放送界においても日常化していますが、まだまだ手探りの状態が続いています。

中でもローカル局における課題は山積するばかりです。地方経済の冷え込みの中で、地デジ化の経済的負担は解消されていません。自社制作番組というコンテンツ作りも成功事例ばかりではありません。データ放送の活用、オンデマンドやアプリの開発などの取り組みも簡単には進みません。しかし、各地域の住民と直接コミュニケーションを行っているローカル局の活性化なくして、今後の放送界の発展を望むことができないのも事実です。

そこで放送批評懇談会シンポジウム2013は、「ローカルパワーの創り方」をテーマに、番組コンテンツから放送外収入まで、ローカル局が抱える課題を取り上げ、これと向き合い、一緒に考えたいと思います。放送というメディアのあり方そのものが問われる時代だからこそ、“ローカル局の明日”へのヒントを探っていきます。



<日 時> 2013年3月21日(木曜日)13:00~17:00

<会 場> 海運クラブ 2階ホール (東京都千代田区平河町)

<主 催> NPO法人放送批評懇談会

<対 象> 民放、NHK。番組制作会社。企業のメディア担当者。通信事業者。衛星放送事業者。ケーブルTV。インターネット関連会社。広告会社。新聞社、出版社。官公庁。自治体。各種権利団体。大学・研究者ほか。


放送批評懇談会シンポジウム2013
ローカルパワーの創り方


【基調講演】
デジタル時代の放送哲学
~ローカリズムとデジタルヒューマニズム~


テレビマンユニオン会長 
ゼネラルディレクター 取締役
重延 浩

【特別講演】
ローカルパワーを応援!
~全国47都道府県芸人移住プロジェクト~


よしもとクリエイティブエージェンシー
代表取締役副社長
泉 正隆


【プレゼンテーション】
ローカルパワーで挑む新ビジネス


テレビドキュメンタリーの劇場展開
東海テレビ放送プロデューサー
阿武野勝彦

デジタルサイネージで新たな収入構築
北陸朝日放送コンテンツ企画部
伊藤祐介

ローカル発のVOD事業をリードする
北海道テレビ放送取締役
上杉一紀

地場産業と歩む放送局
MBC開発代表取締役社長
陶山賢治

独立局コンテンツの“創意工夫”
テレビ神奈川編成局長
関 佳史

司会/碓井広義 上智大学教授



<受講料>
放送批評懇談会正会員(個人)5,000円 維持会員(法人)15,000円 一般20,000円/いずれも資料つき
*維持会員社の社員・職員の方は、維持会員枠でお受付いたします。

<振込先>
三井住友銀行新宿通支店 普通口座7955764
口座名=特定非営利活動法人放送批評懇談会

<定員>
200名(先着順受付)

<申込締切>
3月13日(水曜日)(ただし、定員になり次第、締め切らせていただきます)

詳細・申込方法については
http://www.houkon.jp/symposium/saishinkikaku.html

【気まぐれ写真館】 パティスリーアノーの「アマンドショコラ」

2013年03月13日 | 気まぐれ写真館

ドラマ『最高の離婚』の魅力について、取材あり

2013年03月13日 | テレビ・ラジオ・メディア

女性誌の取材を受けました。

テーマは、フジテレビのドラマ『最高の離婚』、その魅力について。

ざっと、以下のような話をさせていただきました。


尾野真千子と瑛太、真木よう子と綾野剛。

人気女優と人気俳優の組み合わせですが、『最高の離婚』の魅力はそれだけではありません。

恋愛と結婚の違い、男女間の目線の落差など、誰もが心の中で思っていて、でも口にできないまま胸の内にしまいこんでいるものを、セリフの形で見事に言葉として表現していることです。

「妻って結局、鬼嫁になるか、泣く妻になるのかの二択しかないのよ」という尾野の叫び。

「結婚は3Dです。打算、妥協、惰性。そんなもんです」という瑛太のつぶやき。

どちらの夫婦にも子供はなく、いわば緩衝材のないまま互いと向き合う男と女の危うさがあります。

一昨年の『それでも、生きてゆく』で芸術選奨新人賞を受けた坂元裕二さんの脚本が光っています。


また、このドラマでは、特に瑛太さんに注目してきたこともお伝えしました。

『まほろ駅前番外地』(テレビ東京)と併せて、今という時代、この世代の人間像を体現していると思うからです。

【気まぐれ写真館】 横浜中華街

2013年03月12日 | 気まぐれ写真館

週刊プレイボーイで、「夏目三久アナ」についてコメント

2013年03月12日 | メディアでのコメント・論評

発売中の「週刊プレイボーイ」に、夏目三久アナウンサーをめぐる記事が掲載されました。

題して、「夏目三久 V字復活アナの魅力!」

この記事の中で、コメントしています。

日テレを辞めて、現在フリーとなっている夏目アナが、4月から古巣の日テレで「真相報道バンキシャ!」に起用されることになった、と
いうお話。

まあ、退社のきっかけが例のサガミ騒動で、2年間仕事を干されて
フリーになったわけですね。

そして、救ってくれたのがテレ朝「マツコ&有吉の怒り新党」で、ここで大ブレイク。

今回の日テレ復帰、夏目アナにとっては、いわばリベンジというか、凱旋公演というか(笑)。

記事はそんなこんなに触れながら進み、こう続きます・・・・


しかし、バラエティ番組で活躍していた女子アナが報道キャスターに転身して失敗するのはよく聞く話。

そうならないためにも、夏目アナはどのようなスタンスで番組に臨めばいいのか。

上智大学新聞学科の碓井広義教授(メディア論)に話を聞いた。

「報道番組だからといって、背伸びすることはないんです。ムリに政治経済や事件などのコメントをすると絶対にボロが出る。だったら、『怒り新党』と一緒の立ち位置で、どんな話が飛び出しても不思議な笑顔で聞き流すくらいがちょうどいい。視聴者代表という意識で出演してほしいですね」


(週刊プレイボーイ 2013.03.25号)


2013年3月11日

2013年03月12日 | 日々雑感
仙台市・荒浜  2011年5月5日 撮影



あの震災から2年。

11日の午後2時46分は、横並びの関連番組を比較視聴しながら
迎えました。

合掌。

今週の「読んで、書評を書いた本」 2013.03.11

2013年03月11日 | 書評した本たち

好きな本が文庫になった時は、単行本を持っていても、入手して
みます。

ちょっと新鮮な気分で読み返せることと、やはり「解説」の存在
が大きい。

その本が出た当時とも、また違った評価や見方が、読んでいて
面白いからだ。

ところが、植草甚一『ぼくは散歩と雑学がすき』(ちくま文庫)には、その解説がない。

たとえば津野海太郎さんとか、高平哲郎さんとかの解説が付いて
いたら読みたかったけど、まあ、仕方ないです。

逆に、1970年の晶文社版が、小さなサイズで“復刻”された
と思えばいい。

この文庫、カバーデザインは、ちゃんと平野甲賀さんだしね。

元祖“サブカルチャーの教科書”です。




今週の「読んで、書評を書いた本」は、以下の通り。

佐川光晴『山あり愛あり』 双葉社

井上荒野 『それを愛と間違えるから』 中央公論新社

宇都宮聡、川崎悟司 『日本の絶滅古生物図鑑』 築地書館

藤田弘基 『蒸気機関車百景』 平凡社

* 上記の本の書評は、
  発売中の『週刊新潮』(3月14日花見月増大号)
  Bookworm欄に掲載されています。



BS―TBS 「みんな子どもだった」の公開収録

2013年03月10日 | テレビ・ラジオ・メディア

江古田の日本大学芸術学部へ。

キャンパス内の立派なホールで、BS―TBS「みんな子どもだった」の公開収録が行われました。




「みんな子どもだった」は、脚本家の倉本聰さんがホストを務める
トーク番組です。

公開収録は初のことだという。

で、なぜ出かけたのかと言えば、今回のゲストが小山薫堂さんで、
この取り合わせは実に魅力的。

その薫堂さんの母校・日大芸術学部で、収録が行われたのです。

倉本さんとは30年にもわたっておつき合いさせていただいていますが、薫堂さんもずいぶん昔からの仕事仲間。

映画「おくりびと」の脚本で、一般の方たちにも知られるようになった薫堂さんですが、売れっ子構成作家だった薫堂さんに、初めて脚本の執筆をお願いしたのは、我がプロデュース作品「生まれてはみたけれど」(1993年 日本テレビ)でした。

「脚本 小山薫堂」という文字が画面に出たのは、20年前のこの
番組が第一号。

慧眼ってわけですね(笑)。




収録が始まる前に、倉本さん、薫堂さん、それぞれの控室を訪ねて、ご挨拶してきました。

倉本さんのところには、打ち合わせを兼ねていらていた、放送批評懇談会理事の嶋田親一さんの姿が。

お2人の関係は、ニッポン放送での先輩・後輩というだけではない。

フジテレビのプロデューサーだった嶋田さんは、東京から北海道へ行ったまま、脚本家をやめてしまうかもしれなかった倉本さんに、
再び書くことを要請。

それが伝説のドラマ「6羽のかもめ」であり、脚本家・倉本聰の復活であり、後の「北の国から」へと道が続いていくことになるのです。

そんなお2人の、貴重なツーショット。




薫堂さんの控室では、番組の進行役であるTBSの長峰由紀アナウンサーにも入っていただいて記念撮影。






いつもはホストとして相手の話を引き出している倉本さんに、今回は薫堂さんがインタビュアーとして話を聞く、という面白い趣向で、大いに楽しめました。


BS―TBS 
3月17日(日)よる7時から8時54分


みんな子どもだった「倉本聰×小山薫堂 スペシャル」