茫洋物見遊山記第174回&鎌倉ちょっと不思議な物語第336回
冬柏山房というのは横浜の名庭園「三渓園」のオーナーであった原三渓の下で働いていた実業家、内山英保(明治元年~昭和二十年)が鎌倉市役所近くの千葉が谷に設けた邸宅で、「冬柏」とは椿の別名とされています。
冬柏山房には彼の歌の師である与謝野鉄幹、晶子夫妻や、吉井勇、有島生馬、萩原井泉水、川端康成、久米正夫、小杉天外、斉藤茂吉、石井柏亭、徳富蘇峰、高浜虚子、土屋文明、堀口大學、吉野秀雄、尾崎咢堂ら多くの文人、画家、政治家たちが四季折々に訪れ、詩歌や画に残しました。
現地に旧宅は残っていませんが、その跡地の上の山頂には茶室と思しき別荘も残っており、昭和の初めに鎌倉に花開いたサロンの面影をいまに偲ぶことができます。
なおここから遠からぬ場所にたつ鎌倉文学館では、来る4月19日まで「冬柏山房に集まった文人たち」展を開催中です。
以上、同館の資料の拠ってノートさせていただきました。
父親の仕出かした罪業の落とし前をつけに旅立つ二人なりけり 蝶人