
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.796&797
○北野武監督の「OUTRAGEアウトレージ」をみて
昭和の任侠映画の典型的な姿形を平成の御代の現代的な感覚で洗練させたもの。 極道に生きる者たちの悲哀と愚かさをクールに描いてあますところがない。
洗練といっても敵を殺すときの酷薄さは映画の中とはいえ背筋が寒くなるようなていのもので、ここには徳川家康の旗印であった「厭離穢土欣求浄土」を何処となく想起させる暗い人世観が表現されているようだ。
○北野武監督の「アウトレージビヨンド」をみて
前作で被っていた仮面を脱ぎ棄てる三浦友和など総じて男性の主要登場人物の人間像はかなり明確に伝わってくるが、女性の肉体の輪郭以外の中身はまるで描写されていないことも、彼の内面のなにかの反映ではないだろうか。
警察官でありながら、ヤクザとヤクザ以上にやくざに渡り合う小日向文世の虚無の深さと達者な演技が面白い。
それにしても前作でビートたけしは死んだと思っていたので、後編でお富さんのように返り咲いたのにはすこし驚いた。鈴木慶一の音楽、山本耀司の衣裳がよい。
杜若菫連翹藪椿花咲き乱るる恋の細道 蝶人