闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.820~826
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○河野寿一監督「独眼竜正宗」をみて
1959年製作の東映映画でおなじみ中村錦之助が汗臭く熱演。目に矢を射られて血だらけになるシーンが痛ましいが、史実から完全に浮き上がった動画紙芝居を見せられているようだ。
○F.ゲイリー・グレイ監督の「ミニミニ大作戦」をみて
原題は「Italian Job」なのだが、なんだこのタイトルは。呆れ果ててものもいえない。
この映画のゆいいつの取り柄はドナルド・サザーランドが出演していることだが、かつて「カサノバ」や「普通の人々」などの名作を彩った子の名優も科ののためとはいえ落ちたものだ。
○パーシー・アドラン監督の「バクダッド・カフェ」をみて
1987年の西ドイツ映画を2008年製作のディレクターズ・カット版で再見したが、初見ほどの驚きはまるでなかった。もしかするとまるで編集が変えられてしまったのかもしれない。
主人公のヤスミンおばさん(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)がマジックをマスターして、砂漠の中のバクダッド・カフェで女主人(CCH・パウンダー)と歌って踊るミュージカルを繰り広げるシーンでは、あまりのくだらなさで見るのをやめようかと思ったほどだった。
結局相変わらずいいなと思えたのは、ジャック・パランスの笑顔だけだった。
○ダグ・リーマン監督の「Mr.&Mrs.スミス」をみて
殺しのプロフェッショナルのブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジェリーナ夫婦が、敵対する組織に属して殺し合ったり和解したりする2005年製作の史上最低のあほばか映画。
こういう映画をいっちょまえの喜劇のつもりで企画するやつも、脚本を書くやつも、監督するやつも、金儲けのために出演するやつもどうしようもない阿呆だとおもう。観客を舐めるな。
○アン・リー監督の「グリーン・デスティニー」をみて
「臥虎藏龍」( Crouching Tiger, Hidden Dragon )というなにやらもっともらしい原題がついた2000年製作の米中香港台湾合作カンフーゲバルト映画なり。有名なチョウ・ユンファ、チャン・ツィイーなどが出演してチャンチャンバラバラを繰り広げるが、これほど愚劣な映画も珍しいだろう。こんなアホバカ映画がアカデミー賞をもらったそうだが、この一事をもっても米アカデミー賞の愚かさがうかがいしれる。
○アンソニー・ミンゲラ監督の「イングリッシュ・ペイシェント」をみて
灼熱の砂漠で男と女の絶対的愛を絶叫して果てる1996年の米映画なり。
「ロミオとジュリエット」なんかもそうだが、その絶対性の内部は、狂気か病気そのものだから、たとえ文学にはなっても映画にはならないし、なったとしてもいわゆるひとつの「ああそうですか映画」にしかならない。
この映画のような。
○トニー・スコット監督の「サブウェイ123激突」をみて
NYの地下鉄を乗っ取り、乗客を人質にして身代金を要求するジョン・トラボルタを、地下鉄司令部のデンゼル・ワシントンが何度も窮地に追い詰められながらめでたくやっつけてしまうサスペンス物なり。
悪玉のトラボルタが身代金よりもこの事件でパニックを起こして株を暴落させ、反騰するであろう金相場での大儲けを企んでいたり、善玉ワシントンが賄賂を貰った経歴の持主であったりちょっと捻りをきかせているが、見せ所は地下鉄大爆走ということか。
タイトルの出し方に妙にこだわっているが、あれがかっこいいとでも思っているのだろうか。CM出の映画監督はそういう細部で馬脚を現すことが多い。
いちどみていいとおもってまたみればあんまりおもしろくもないのはどうして 蝶人