照る日曇る日第793回
先日亡くなった詩人の最後の詩集を謹んで拝読いたしました。
「奇跡」というタイトルについて、著者は「日々にごくありふれた、むしろささやかな光景のなかに、わたしにとっての、取り換えようのない人生の本質はひそんでいる。それが、物言わぬものらの声が、わたしにおしえてくれた「奇跡」の定義だ」と「あとがき」の中で書いています。
「深い緒観をもって、日々を丁寧に生きること。
小さな神々が宿っているのだ、
人の記憶や習慣やことばのなかには。」(『ときどきハイネのことばを思いだす』)
私たちは、深い緒観をもって、日々を丁寧に生きなければなるまい。
また「書くとはじぶんに呼びかける声、じぶんを呼びとめる声を書き留めて、言葉にするということである」とも書かれていますが、誠実に日々を抱きしめながら生き続けてきた詩人ならではの発言であると感じ入りました。
「私たちは、多くの嘘いつわりを、
真実のように話すことができます。
けれども、私たちは、その気になれば、
真実を語ることもできるのです。」(『夏の午後、言葉について』)
私たちは、真実を語らなければなるまい。
ぼんやりとテレビ見てれば次々に吐き気催す奴らが出てくる 蝶人