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照る日曇る日 第1355回
士師とはヨシュア没後にイスラエルの民を指導した(中にはてんで指導どころではなかった連中もいるが)預言者、(中には預言者の名に値しない連中もいるが)、の列伝である。
「士師記」の前篇でせっかく神がイスラエルに味方して他民族を圧倒し敵地を支配したのに、愚かなイスラエルの民はバアルやアシュラといった別の神(しかし民俗学、宗教学的にはユダヤ教と全く等格の)に目がくらんで浮気に走ったために、正規の?神の怒りをかって、えらい苦労を強いられるのだが、これは文字通りの自業自得というほかない。
この神様は、よりによってどうしてこんなに信仰も定見も主体性もない愚かな民族を「選んで」しまったのだろう、と私などの門外漢は思ってしまうが、もしも日本人に白羽の矢が立ったら、もっと悲惨なことになっていたに違いない。
しかし士師の中には窮境を跳ね返して剣をもって奮戦したギデオンという立派な義士もいた。この勇者の名前を冠した国際ギデオン協会という1899年に設立された組織があり、わが国にも支部があって、昔からホテルや病院、刑務所などに聖書を寄付している。
私の祖父、佐々木小太郎の晩年はこの義援運動に捧げられ、彼は1962年6月21日、大津びわこホテルにおいて、信徒会の席上自分の抱負を語りつつ「イエス、キリストは………」の言葉を最後に倒れ、78歳で天に召された。
また士師の中には、美女デリラに騙されて囚われの身になったあの有名な剛力サムソンもいた。次第に髪の毛が生えてきたサムソンは、神に祈ってダゴンの神の神殿に居合わせたペリシテ人もろとも崩落死を遂げるが、「士師記」の著者は、死者の中にデリラがいたかどうかについて記していない。
浮気したり葉っぱを吸いたる罰として楽園を追放されるアダム&イヴ 蝶人