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照る日曇る日 第1361回
士師時代のイスラエルの低迷と停滞を破って登場したのが少年サムエルである。少年サムエルは長じてペリシテを屈服させ、王となってイスラエルを治めた。そのあとを受け継いだのがサウルである。サウルは30歳で王位につき、12年間イスラエルを統治したが、どうもその性格が陰険で人を容易に信用せず、息子のヨナタンのみならず先王サムエル、そしてサウルの後継者となるダビデとも再三再四にわたって悶着を引き起こし、生涯の終わりにはペリシテ軍に敗れ、息子たちと共にさながら新田義貞のごとき悲劇的な最期を迎えるが、物語文学的にはなかなか興味深い人物である。
しかしイスラエルの神は、なんでこんな善悪相殺する超不安定な人物を王様に仕立て上げたのだろう。いやしくも神様なら最初から生かすなり殺すなりせよといいたくなる。
なお本記の途中から主人公として登場するダビデは、ユダのベツレヘム出身のエフラタ人で、エッサイという人の息子だったが、当時一世を風靡していたペリシテ最強の武者ゴリアト(所謂ゴリアテ)をだだ一個の投石で斃して後世に名を上げ、終生に渉るヨナタンの支援と友情に支えられ、サウルによる殺害の危機を何度も乗り越えて、ついに覇王となるのである。
ミケランジェロの彫刻であまりにも有名なダビデであるが、勇者ゴリアトと尋常に勝負せず、投石を巨人の額に食い込ませて勝利したという実話は、なんとなく卑怯者大夫のように思うのは私だけだろうか?
「クラスター」なる英語をバラまいて民草を煙に巻かんとするか 蝶人