照る日曇る日第583回&バガテル-そんな私のここだけの話op.163
ミネルヴァ書房の新しい発達と障碍を考える本の新刊が出ました。本書で紹介されているように、自閉症は1)他人と上手につきあえない。2)コミュニケーションがとりづらい。3)想像力が乏しくこだわりがあるという3つの特徴を持つ重篤な障碍です。
そんなんだったら周囲にいっぱいいるよ。じつはおれも、あたいもそうなのよ、という方も大勢いらっしゃるでしょうが、自閉症の場合は、その程度がハンパない、ではなく、半端ではないのです。
例えば私の長男は午後6時に私が食卓につかないと、「お父さん、お父さん、ご飯ですよ、ご飯ですよ」と私がそうするまで何回でも叫びますし、それが終わると「食器洗って下さい。洗って下さい」、「お風呂沸かして下さい、下さい」という具合に、朝から晩まで諸事万端に強いこだわりがあり、万が一それが自分の思惑通りに進行しないと大暴れしたり頭を西瓜のように叩いたりする大騒動になるのです。
愚息のような自閉症の人たちが、初めての場所で物凄い不安を感じたり、物事のすべてが決まり切った手順で行われていないとパニックに陥ったり、とんちんかんな返事をしたり同じパターンの質問を繰り返したりするのは、いまあなたがチラと考えたような親の育て方や愛情不足、心の病などが原因ではなく、脳の中枢神経系の働きが生まれつき悪いからなのです。
この中枢神経系というのは脳と脊髄を中心とした神経のことで、ここでは目、耳、鼻、皮膚などの感覚器官からの刺激を受け取り、手足などの運動器官に対して命令を出すなど人間活動の中央司令部のように重要な役割を果たしているのですが、遅くとも1980年代には、「そのネットワーク機能に先天的な障碍があるのが自閉症だ」というのが世界の医学界の常識になりました。
ところがあろうことか、なかろうことか、わが国のイッパン大衆はもとより、数多くのインテリゲンちゃんや聖路加国際病院の日野原理事長などの最長不倒医事専門家ですら、依然として自閉症は心や精神の「病気」だなどと固く信じ込んでいるのですから呆れ果てます。
過去30年以上にわたって思考停止を続けている彼らの脳こそほとんどビョウキであり、言葉の辞書的な意味合いにおいて「自閉症」なのでしょう。
みずからの脳の進化をおしとどめ百歳生きるは人の業かや 蝶人
国民を条理なき戦争に巻き込んで全権を掌握したり鉄女 蝶人