西暦2025年睦月蝶人映画劇場 その5
闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3908~13
1)フェリーニ監督の「8 1/2」
前に見たときはよくある「映画を撮れない映画監督」なるモチーフで、どうでもよい雑多な映像を即興的に繋ぎ合わせただけの随分滅茶苦茶な映画と思っていたが、今回はそれはそうにしてもよくも映画に撮れたもんだと思う誰もが若くて綺麗だった1963年の作品。
2)フェリーニ監督の「道」
1956年のイタリア映画。「どんなものにでも、例えばこの小石にも存在する理由がある。それがなければすべての存在理由がなくなる」と綱渡り芸人のリチャード・ベイスハートがいうシーンが心に残ります。
3)是枝裕和監督の「DISTANCE」
カルト教団の無差別殺人事件と関係があるらしいのだが、その実体を観客にも分かるように描かれないために、最後の最後まで謎めいた印象を与える、つまりは訳の分からん2001年の映画なり。
4)是枝裕和監督の「怪物」
2人の少年の愛と希望を主題にした2023年の学園物語。保護者や学校、生徒たちなど立場の違う人間によってまるで異なる世界観が展開される現実を鋭く描いている。
5)黒沢清監督の「蛇の道」
パリの精神内科病院に勤務しながら、臓器移植屋の犠牲になった娘の復讐を次々に遂げていく「蛇の目」を持ったヒロインの陰惨な物語だが、そもそもこんは噺のどこが面白いのだろう? んでもってわざわざ巴里くんだりまでロケして撮ってみたところが案の定事件も登場人物も嘘くさい作り物で、見れば見るほどシラケる2024年の最新作なり。
6)黒沢清監督の「クラウド」
「転売ヤー」を仕事にする菅田将暉主演の奇妙で奇怪な2024年の映画。前半は転売ヤーという仕事のエグサを描いて秀逸だが、途中から突如登場人物が全員漫画の活劇キャラクターに変身。ドンドン、パチパチ派手に殺し合う「日活映画」となって気がつけば終わってしまう。いったいなんだったんだろうね。
万人の胸の裡なる理想郷その入り口の憲法9条 蝶人