プラス思考の人が私と決定的に違うのは、「そんなふう(マイナス)に考えたって、仕方ないからそう考えない。」と自然に考えていること。とても簡単なことなのに私はこれまでそうしてこなかった。プラスとマイナス、まさしく磁石のプラス極とマイナス極のように一つながりのものなのに、なぜか私はいつも青いほう(マイナス極)へと流れて行ってしまうのはなぜなのだろう。考えれば考えるほどわからなくなる。
なんだか、難しい話になりそうだが、難しく考える必要はない。
ただ単に、物事をマイナスに考えなければいいだけの話だ。

そのことに気がつかせてくれたのは、私の尊敬する上司だ。
私が新しい職場に移って、病理医の数が二人となった。病理医の数が二人いるということが関係しているのかどうかわからないが、診断件数が今年度に入ってぐっと増えた。新しい職場にまだ不慣れな上に、件数も増えてちょっと不安な顔をしたら、上司も「去年よりは一割ぐらい増えそうだな。先生、大変だよ。」と言う。でも、そのあとの一言で私の目が覚めた。
「まあ、それだけ多くの症例に接することができるね」
ああ、そうか、これがプラス思考なのだ。

私は、病理医の仕事が大好きだ。顕微鏡を覗いていることは大好きだ。実際、今、毎日朝から晩まで顕微鏡にかじりついている。
好きこそ物の上手なれと言っても、油断大敵だ。
仕事が多いといって、そのことを大変なこと、めんどくさいこと、しんどいことと思ったとたん、それらのことは苦痛となっていく。
そんな時、必要なのは、そのことをありがたいこと、工夫することが楽しいこと、というように考える。一人でも多くの症例に接することが、自らの病理医の力を高めることにつながっていくことと思えば、仕事は苦にならない。
何となく、プラス思考というものを実感することができた瞬間だった。(明日、この話最終回)
生きていく上で必要なこと
