久しぶりだ。
ネクタイを締めると、気が引き締まる。
「病理医は患者さんと接することがないのだから、ネクタイなんてしてくるんじゃないよ」
と、入局してすぐに先輩の病理医に言われ、少し落ち込んだが、ほどなくその格好に馴れて、以来20年、学会と歓送迎会/忘年会以外で背広を着ることはほとんど無くなっていた。
数年前より病理外来をはじめた。病理外来では患者さん、もしくはご家族に病理診断を直接説明するので、ネクタイを締めて白衣を着て、お話をするのだ。
以前、医者、病理医の服装について記事にしたが、会社勤めの人と違って、医者は背広を着る機会が少ない。それでも、内科の医者はいつもネクタイ、外科系の医者も外来の時はネクタイというのがつい最近まで普通だった。
それが、ここ数年気になっていることがある。
それは、若い医者の普段の格好だ。みんな、寝間着のような青い服を着ている。
ついには、テレビドラマの宣伝にも堂々とその格好で出るようになってしまった。
たしかに、この格好は楽だ。
もともとは、手術の時、病理であれば解剖の時に着る服でこの上に、緑の術衣を着る。
したがって、これは下着のようなものだ。
私も、若い頃、当番で剖検が一日に2例あるような日は、着替えるのが面倒で、剖検と剖検の間、そのまま白衣を上に羽織っていた。
仕事が遅くなって、帰れなくなった時は寝間着代わりにして、教室のソファーで横になったりもした。
だが、ある時から、手術室のこの青い服をその持って帰る医者が増えるようになった。何せ便利である。いちいち手術に入るのに、着替えるのなんて面倒である。手術が終わっても、そのまま着て帰って、次の手術のときに着てくれば良い。事情はほとんどすべての手術室で同様だったようで、手術室は大いに困るようになった。
そして、対抗策が考えだされた。
結局、今の若い医者はみんなこの格好となった。
上のポスターにもあるように、これがすでにユニフォームとなっている。背中や胸に所属やネームが入り、チーム医療の意識も高まる。おしゃれなスタイルのものもずいぶん増えてきて、白衣屋さんもホクホク顔だろう。
たしかに、いろいろ忙しい若い医者、特に研修医やレジデントにとっては便利な格好だ。
手術室から盗まれていた話なんて、そのうち皆忘れてしまうだろう。
だが、この青い服、私から見ると若干見苦しく思える。
そもそもこういった服は、ついだらしなく着てしまうことが多い。女医さんでは見ることはないが、男の医者だと、上着が短くてズボンの腰のところから下着が顔をのぞかせているなんていうのはしょっちゅうだ。カンファレンスなどで椅子に座ってプレゼンをしている時などにこんなのを見せられると、がっくり来る。
それに、どうみても彼等はこれをずっと着ている。食事の時も、検査の時も、手術の時もである。
剖検の立ち会いもこの格好だし、外来でもこの格好の医者は多い。
当直の時は、このままで寝る。
若い医者は“いつも”この青い服だ。
どうも、不潔で、だらしなく、メリハリがなく見えてしまうのだが、どうだろう。
ただ、私が、その立場にあったら、間違いなくその格好をしてしまうだろうから、文句は言えない。
注;院内感染予防の観点から白衣と手術衣の是非については現在論争があるが、清潔であれば白衣でいいし、寝巻の延長のように使っているのであれば手術衣は無意味である。
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