最近、”ほぼほぼ”という言い方をよく耳にする。この言い方、私が若い頃はなかったように思う。というか、あったのかもしれないが、あまり使われてはいなかったのではないか。
同僚の医者(臨床医)と話していて、”(この患者さん)ほぼほぼよくなっているんですよね”とか言われるのを聞くと、患者さんの状態は何となく分かるけど、正確には分からない。
私はまだつかったことがないのだが、この言い方、二つの捉え方ができるのではないか。
一つの捉え方は、”ほぼ治っている”は90%以上治っている、で、”ほぼほぼ”は70~90%程度とある程度幅を持たせた表現。
もう一つの捉え方は、かつては病気の程度の表現が、-、+で済んでいたのが、-、±、+、++とかに細分化された。これだと、ダメ、”ほぼ”治った、治ったという表現が、ダメ、”ほぼ”治った、”ほぼほぼ”治った、ほとんど治った、治った、となった可能性もある。これだと、”ほぼほぼ”は95%以上(ほとんどは99%)治ったということの表現、ということになる。
癌に対する治療効果判定というのがあって、これは私たち病理医がおこなう。このうち、乳癌取り扱い規約のグレーディングに置き換えてみると、
癌細胞に治療による変化がほとんど認められない無効(Grade0)からやや有効(Grade 1/ Grade 1a:軽度の効果, Grade 1b:中等度の効果)、かなり有効(Grade 2/ Grade 2a: 高度の効果、Grade 2b: きわめて高度の効果)そして全ての癌細胞が消失した場合の完全奏功(Grade 3)となる。見た目は4段階だが、実際は6段階となっている。
これだと、”ほぼほぼ”はどこになるのだろうか?
うーん、それぞれの人がそれぞれの使い方をするのが言葉なので、そのうちどちらかの意味が定着していくだろうと思うが、新しい言葉が生まれつつあるのに立ち会うというのは面白いものだ。
ほぼほぼ紅葉