昨年12月17日に起きた大阪での心療内科クリニックの放火事件に続き、今度は埼玉で訪問診療を行っていた医師が散弾銃で殺された。2ヶ月で2人の医師が殺されるなどというのはどう考えても異常なことだが、今後は職業上のリスク因子として考慮しなくてはならないことかもしれない。亡くなられた医師ならびに被害者の方に心からお見舞い申し上げる。いずれの事件の容疑者も、医者を殺し、自分も死んでしまおうというなんとも身勝手な論理で動いていたようで、なんともいたたまれない。
それぞれ、いわゆるモンスターペイシェントによる犯罪となるが、その存在は、もうずっと前から問題になっていて、昔のエントリー(医者というブルーカラー;2013年6月) にもそのことが少し出ている。私は患者さんを普段直接診ることのない病理医だが、人と接するのが嫌だからこの仕事を選んだわけではなく、日常業務はチームのメンバーの一人としておそらくは問題なく過ごしている。そんな私でも、今回のコロナ禍では予防接種の問診業務を行って、医療知識のない方に接する機会があった。
全部で1000人ぐらいの人と接したと思うが、十人十色、ずいぶんいろいろな人と接することができた。ほとんどの人はとくに問題なかったが、数名は自分が持っていたのとは異なる感じを受けた。そんな違和感を感じたのはあくまでも私の感覚で、別の、医者であればそんなものは感じなかったかもしれない。だが、違和感のない人であってもどう豹変するかなどわからない。
人間のことをどう分析したところで、どこでどうスイッチが入るかわからないわけで、私自身もそのうちの一人だ。ただ、その振れ幅は以前よりずっと大きくなってきているのではないか、その原因はネット社会の情報過多だったり、コロナ禍に巣篭もりで人との接触が減ったからだったりするかもしれない。ただもう、時代は変化してしまって、医者は安全な職業ではなく、顧客(患者)とのトラブルには常に備えておかなくてはならないのは確かだろう。
悲劇を繰り返さない対策を