医師不足の原因は医師にはない。
行政の責任は医療費亡国論の延長上にあった三方一両損による診療報酬の削減。
・・・一般病院の非採算部門、小児科の先生は本当につらいみたい。だって、子供を薬づけにはできないでしょ。そんなら、開業したほうがまだいい。そもそも日本の医療は、選挙向けの高齢者医療だし。
国公立病院の統廃合によるポスト不足
・・・これらの病院の給料が“極端に“安いのはよく知られているが、もっと深刻なのは統廃合で、ポストがなくなってしまう。役人と一緒で、上に行けない医師はやめざろう得ない。だから、中堅クラスになれば半分は病院をやめざろうえない。
病院が赤字だから閉鎖する。そうすれば医療過疎はどんどん加速する。医師も霞を食って生きているわけではないので、生活防衛のためにはよりよい給料がもらえるところに行くにきまっている。
必要経費が認められない
・・・勤務医は経費がほとんど認められない。開業医は必要経費でベンツが購入できて、給料の安い病院に勤める勤務医は退職まで電車通勤。学会費はもちろん自腹。7,8の学会に所属すればあっという間に年10万以上、参加すれば、2,30万になるし、教科書も自腹、勉強会に行ってもらう領収書も使い道はない。
ふざけるな、と言いたい。自己研鑽もしたくなくなる。で、結局、経費が十分に開業医になったほうが、よっぽど勉強できる。だから、勤務医は減る。
製薬会社の自己防衛
・・・病理は関係ない話(これがいやで私は病理に行った)だが、接待がなくなったことも大きな原因だろう。貧乏勤務医も患者数の多さを背景に製薬会社からのリベートを以前は相当貰っていた。これが、製薬会社の経費削減のため、どんどんなくなっている。自分よりずっと給料が高く、生活をエンジョイしているMR(昔のプロパーさん)に頭を下げられてもね。まあ、このことはだいぶ次元が低いが…
マスコミによる医師批判を問題にする向きもあるが、私はあまり感じない。大新聞が医師不足の原因になったとは、ここ20年、思ったことはない。
3K科の消滅
・・・医師になる人間のほとんどは、人間の生命を救うために医師になっている。成績がいいから医学部へ、と進学しても、それだけでは国家試験までは続かないし、続かなかったり、ほかにも才能のある人間は医師にならずに別の道にすすむ。
だが・・・きつい、きたない、くらい、といった科へ進む医師は確実に減っている。”きつい”内科、外科、小児科、産科、病理診断科、”きたない”外科、救急、病理診断科、くらい病理診断科。これらの科は臨床医学のメジャーの科であるのが、勉強しなくてはいけない範囲が広汎であること、などという理由や、立ちっぱなし、時間外が多い、誰も知らない、などの理由で人がどんどん減り・・・
というか、医師がもっと楽に稼げる科にどんどんシフトしてしまっている。
だから、マイナー系の科に毎年100人中10人、15人とかが進んでしまう。4,5年トレーニングすればなんとかなるからね。
もともと余録がなくて、来る人が少なかった病理診断科は一時、病理学会の努力もあり社会的認知度が上がったが、昨今の産科、小児科不足に加え、外科医不足もクローズアップされてきて、病理医不足はますます深刻化するだろう。
時間的拘束は比較的無いものの、3K感は否めないし、やっぱり普通の医師とは違うので、先細りは免れないだろう。
というようなわけで、医師不足はもう止まらない。某ナショナルセンター(
1、
2)であいついで、医師が大量退職したが、彼らもほんとうに”やってらんねーよ”ということで、燃え尽きたんだと思う。
こんどは
外科医が不足するのは必至で、内科医もこれに続き、日本の医療は崩壊する。
医師不足の話を医者同士ですると「医者はどこへ行ったんだ!」なんていう言葉がでるが、医師はいる。勤務医がいないのだ。そしてその責任のほとんどは病院を減らし、ポストを減らし、給料を減らし、経費を認めず、効率を病院経営に求める行政にある。
ぼろもうけする医者にたいして、「医は算術」などと揶揄していたのは今は昔。いま、病院の現場は採算採算で本当にきつい。「患者不足をどうにかしろ」って、そんな、いつもいつも人間は病気になるもんじゃないんだから、安定した患者数の確保、なんて土台無理だ。でも、閑古鳥の病院だって、鳥インフルが流行ったら、あっという間に万床で、廊下にまで患者があふれるんだから、そのための準備だって、投資として必要だ。
いい意味でも悪い意味でも医に算術を持ち込んではいけない。