この病院に異動してきてからの9か月、実にあっという間だった。骨を埋めようと思ってやってきた職場での新生活は、私の人生にとってインパクトの大きな出来事とともに過ぎている。まずやってきたのは、愛犬フラットコーテッドレトリバーのナイトとの悲しいお別れ。それに続いては言うまでもなく、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症、そしてやっと心のわだかまりが消えてきたと思えてきた父が85歳で亡くなった。なんと、息子の入籍もあった。考えようによっては、こんなに大きなことが次々とやってくるという環境の激変があったからこそ、新型コロナウイルス感染症がもたらした”新しい生活様式”に適応することができたのかもしれない。それにしてもこれほど多くのことがわずかな間に次々と起こるのを目の当たりにすると、人生一寸先は闇、無事に定年まで働けるなどとは思ってない方がいいかもしれない。
それはさておき、異動の前日、たしか9月30日。荷物を運びこんだ医局の机の上に、ゼリーか何かのプラスチックカップに生けた日日草の切り花が置いてあった。一緒に添えてあったメモには、隣の机の先生の名前があった。仕事の関係で以前より顔見知りの好人物だ。しばらくたってから知ったが、その日日草はその先生がデスクの横で育てているものだった。ちょっとした心遣いだったが、こうしてもらい、もちろんうれしく、何かあったら相談できるものと心強かった。
日日草は次々と花が咲き、そのまま水やりを続けていたら、ひと月ほどで根が生え、鉢に植えたら根がついた。そして今ではこんなに立派になった。これまでは日当たりのよい医局の机で育てていたが、今週は仕事部屋に持ってきた。小さなつぼみが数個付いているので、今週中にあと2、3個は咲くのではないか。
日日草の花言葉は『楽しい思い出』と『友情』。次から次へと花が咲き続ける姿と、友達同士で集まって和気あいあいとしている様子を重ね合わせてうまれたものだそうで、確かに見ていると前向きな気持ちにさせてくれる。この9か月、悲しいことはあったけど、それは楽しい思い出があったからこそのこと。今、『楽しい思い出』を日々積み重ねていることが出来ているとすればそれは『友情』のおかげだろう。可憐な白い花を見て、私はもっと周りの人に感謝し、その気持ちを忘れずに持ち続けなくてはいけないと思うのだ。
大病はしたくないなー