病理医が主人公のテレビドラマ『フラジャイル』(フジテレビ、水曜午後10時)が好調で、病理医が世の中に広く知られるようになって、中年病理医コロ健もとても嬉しい。あのドラマ、現実をよく表しているけれど、そこはドラマ突っ込みどころもいろいろある。少々、臨床医を腐しすぎのようにみえるが常勤の病理医がいないような病院ではあのように病理医をバカにしたような医者は少なくない。それにあそこまでひどくはないけれど、それってどうよというようなことを何気なく口にする医者は多い。
つい先日、別の病理医が臨床医とディスカッション顕微鏡をはさんで話しているのを聞いて、そんなことを思うことがあった。
熱心な臨床医は忙しい時間の合間を縫って、病理診断科にやって来て病理医をつかまえて、所見を説明させる。
臨床医は外来、病棟、手術室と忙しく動いている。そして病理医は病理診断科の部屋で顕微鏡の前にずっと座っている。だから、病理医は暇そうに見える。
だけど、以前書いたことがあるけれど、病理医は暇そうにみえるだけで暇ではない。病理医も忙しく働いている。けれどそう見えないものだから、臨床医は気軽にアポを取って病理にやって来て病理医に説明を求める。それでもまあ、病理医はちゃんと臨床医の相手をする。患者さんのためだから当然だ。
そんなとき、臨床医のPHSのベルが鳴る。そして、臨床医は顕微鏡を一緒にのぞいている病理医を横に、「今、病理で標本診ているんですよ。ええ、あと5分ぐらいで終わりますから、その頃連絡ください。」
なに、それ。
『説明をしているのは病理医で、あなたが説明する量を決めるわけではないでしょう。今、あなたに説明をしている病理医は、あなたが来るというから時間を空けて、その説明のために標本を出して予習して説明しているのだよ。』
と言いたかったのだが、 その病理医は何も言わずにじっとその電話が終わるのを聞いて、話が終わったところでまた説明を続けていた。
まあ、私にもこんなことよくある。そして、すこしだけ哀しい気持ちになる。
病理医同士、そのことについて話すことも無いが、同僚の病理医がそんな目に遭っているのを目の当たりにするともう少し、病理医に気を遣ってくれてもいいんじゃないかと思う。
けれども、臨床医にそんなことをわかってもらうなんて、できない相談だろう。
気にしてなんかいられない