先週末の東北での講演。私にとって、大変得るものが多かった。
講演というのは、その人の専門分野についてを、その分野を専門としない人に話すものである。
今回の講演、私の友人からの頼みということもあり、是非立派なものにしようと3週間前から準備に取りかかっていた。2週間前にできた仮原稿。なんとスライド400枚に及ぶ超大作となってしまった。
300枚くらいに減らして上司や後輩に予演会で見てもらったが、1時間の講演時間に対して、2時間はかかる。上司には「先生、これは無理だよ、もっと先生の得意なことに絞ったら?」といわれるし、後輩にも「テーマを絞って話しても、十分だと思いますけど」とかいわれ、ぼろぼろ。1週間ほどは立ち直れなかった。
おまけに、先週に入ってからは上司の出張が重なって
一人病理医+台風4号。あっという間に発表3日前(水曜日)になってしまった。
そこで、気がついたことが、
「なに無理してんだよ」
ということ。
専門分野といっても、カバーすべき分野は広く、その中でも得手不得手はある。付け焼き刃で話を作ったところで、教科書に記載されているようなことを、もったいぶって話したところでたかが知れている。ならば、私が興味を持って日々やってきたことをお話ししようと、スライドを半分近く削った。
東北新幹線の中でも粘って、スライドを整えた。
一般演題も終わって、いざ発表となった。
1時間のところ、1時間半程度かかってしまったが、そんなことはいい。私のことを呼んでくれた友人は最初から「コロ健の話したいことを好きなように話してくれたらいいから。」と言ってくれていた。また、「時間内に終わらせるため、無理に早口になったり、省略されたりするよりは、時間が延長してもじっくり聞ける方が、我々のためになると思っていますので時間については気にしないで。」とも言ってくれていた。だから、1枚1枚のスライドを遠くから聞きにきてくれた病理の先生方にお話した。
講演終了後のディスカッションタイム。一人の先生から嬉しいことばをかけていただいた。
「コロ健先生が普段から、実際にやっておられる、実践的なお話をうかがうことができ、本当に勉強になりました」
そうか、そうだったのだ。中途半端に詰め込んだような話を聞きたいなど、誰もいっていなかった。
私が、これまで培ってきたこと、日々やってきたこと、そのことをみんな聞きたかったのだ。じっくりと。上司も後輩も、遠くで頑張っていた友人も、当日私の話を聞いて下さった聴衆の先生達もみな、そんなこととっくにわかっていたのだ。変に背伸びをしようとしていたのは私だけ。
なんていうことはない。私は私のことを話すだけでよかったのだ。
こんな当たり前のことに気がつかないでいたのは情けない話だが、やっと自分の価値に気がつくことができた。まだまだ、精進しなければいけないが、自分が進んでいくべき道がうっすらと見えたような気がする。