原発とテレビ⑤ 「ただちに影響はない」
福島第1原発事故直後から、テレビの原発報道は国民の疑問の声にさらされました。農産物や水道水から基準値を超える放射性物質が検出されるたび、「安全」「ただちに…影響はない」という政府や専門家の説明を繰り返したためでした。
市民らが調査
「ニュース番組の原発報道は信用できるのか」という疑問を、詳細なデータで裏付けた報告書があります。まとめたのは、放送関係者や市民でつくる「放送を語る会」。4月1日から1カ月間、NHKと民放4局の主なニュース番組(10番組、のべ約180時間)をモニター調査し、8月末に公表しました。
4月といえば、原発事故の深刻度を示す「国際原子力事象評価尺度」の暫定評価が最悪の「7」に引き上げられる(12日)など、「各社のニュースを比較検討できる絶好の機会」(報告書)。同会では「報道された内容」(レベル7の引き上げ問題や放射能汚染の状況など6項目)、「報道姿勢の特徴」の項目に沿って検証しました。
報告書では、「レベル7」への引き上げを各局ともトップニュースで伝えたものの、一様に「チェルノブイリ事故に比べ格段に規模は小さい」とした専門家の解説を付けていたと指摘します。
放射能汚染の状況も、「『健康に影響ない』という政府と専門家の見解をストレートに伝えていた」と分析。公共放送のNHKですら、「100ミリシーベルトまでなら問題ない。洗えば落ちる」(山下俊一・長崎大学大学院教授、4月1日「ニュースウオッチ9」)、「放射能だけでなく、いろいろな危険の中で我々は生きている」(廣瀬弘忠・東京女子大名誉教授、4月7日同番組)などのコメントを伝えました。
「報道姿勢の特徴」はどうでしょう。ゲストに原子力行政に批判的な学者や研究者が4月は1人も登場せず、「原発そのものを問う立場の意見なり世論が、明確に排除されている」と結論付けています。
原発依存・推進の報道を基調に据える背景として「メディアとスポンサーの東京電力の癒着」をあげます。一例がフジテレビ。「フジテレビ・ニッポン放送を傘下におさめる『フジ・メディア・ホールディングス』の監査役には、南直哉元東京電力社長が居座り続けている」
自律の機会に
事故から半年。同会の小滝一志事務局長は、「ニュースは基本的に政府発表の原子力政策に寄り添っている」と危惧し、ニュース番組の担当者宛てに報告書を送ったといいます。「毎日のニュース報道が、世論の形成に大きな影響を及ぼします。ぜひ、自らの番組を検証してほしい」
原発事故は、政府や官界、財界・電力会社、学会、メディアまでもが加わった「原子力村」が、「安全神話」を作り上げたことを浮かびあがらせました。報告書は、こう結んでいます。
「今回の事故はそうした悪しきしがらみを絶って、報道機関がジャーナリズムとして自律できる絶好の機会なのではないか」
(おわり)連載は渡辺俊江、山本健二、佐藤研二が担当しました
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月27日付掲載
何かと言えば、「ただちに健康に影響はない」と繰り返す枝野さんの姿が思い浮かびます。
当時、日夜休みなく対応されたことには「ご苦労様」と言いたいですが、その対応の中身はあまりにも被災者の心情からかけ離れていました。
また、「ただちに健康に影響はない」などと、科学的根拠のないことを発言すること自体、許されない事だと思います。
福島第1原発事故直後から、テレビの原発報道は国民の疑問の声にさらされました。農産物や水道水から基準値を超える放射性物質が検出されるたび、「安全」「ただちに…影響はない」という政府や専門家の説明を繰り返したためでした。
市民らが調査
「ニュース番組の原発報道は信用できるのか」という疑問を、詳細なデータで裏付けた報告書があります。まとめたのは、放送関係者や市民でつくる「放送を語る会」。4月1日から1カ月間、NHKと民放4局の主なニュース番組(10番組、のべ約180時間)をモニター調査し、8月末に公表しました。
4月といえば、原発事故の深刻度を示す「国際原子力事象評価尺度」の暫定評価が最悪の「7」に引き上げられる(12日)など、「各社のニュースを比較検討できる絶好の機会」(報告書)。同会では「報道された内容」(レベル7の引き上げ問題や放射能汚染の状況など6項目)、「報道姿勢の特徴」の項目に沿って検証しました。
報告書では、「レベル7」への引き上げを各局ともトップニュースで伝えたものの、一様に「チェルノブイリ事故に比べ格段に規模は小さい」とした専門家の解説を付けていたと指摘します。
放射能汚染の状況も、「『健康に影響ない』という政府と専門家の見解をストレートに伝えていた」と分析。公共放送のNHKですら、「100ミリシーベルトまでなら問題ない。洗えば落ちる」(山下俊一・長崎大学大学院教授、4月1日「ニュースウオッチ9」)、「放射能だけでなく、いろいろな危険の中で我々は生きている」(廣瀬弘忠・東京女子大名誉教授、4月7日同番組)などのコメントを伝えました。
「報道姿勢の特徴」はどうでしょう。ゲストに原子力行政に批判的な学者や研究者が4月は1人も登場せず、「原発そのものを問う立場の意見なり世論が、明確に排除されている」と結論付けています。
原発依存・推進の報道を基調に据える背景として「メディアとスポンサーの東京電力の癒着」をあげます。一例がフジテレビ。「フジテレビ・ニッポン放送を傘下におさめる『フジ・メディア・ホールディングス』の監査役には、南直哉元東京電力社長が居座り続けている」
自律の機会に
事故から半年。同会の小滝一志事務局長は、「ニュースは基本的に政府発表の原子力政策に寄り添っている」と危惧し、ニュース番組の担当者宛てに報告書を送ったといいます。「毎日のニュース報道が、世論の形成に大きな影響を及ぼします。ぜひ、自らの番組を検証してほしい」
原発事故は、政府や官界、財界・電力会社、学会、メディアまでもが加わった「原子力村」が、「安全神話」を作り上げたことを浮かびあがらせました。報告書は、こう結んでいます。
「今回の事故はそうした悪しきしがらみを絶って、報道機関がジャーナリズムとして自律できる絶好の機会なのではないか」
(おわり)連載は渡辺俊江、山本健二、佐藤研二が担当しました
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月27日付掲載
何かと言えば、「ただちに健康に影響はない」と繰り返す枝野さんの姿が思い浮かびます。
当時、日夜休みなく対応されたことには「ご苦労様」と言いたいですが、その対応の中身はあまりにも被災者の心情からかけ離れていました。
また、「ただちに健康に影響はない」などと、科学的根拠のないことを発言すること自体、許されない事だと思います。