シリーズ 原発の深層 第一部・原発マネー⑩&⑪ 政治家父子で関与&政治献金の「御三家」
政治家父子で関与
原子力発電所建設の利権をめぐり、石川県で、ある政治家父子の関与がとりざたされてきました。
一つは、北陸電力が1967年11月、志賀町赤住(しかまちあかすみ)地区などに計画した志賀原発(当時は能登原発)です。
上下関係使う
自民党県政は北陸電力と一体となって72年5月、原発をめぐる赤住地区の住民投票に介入。開票を阻止する異常な行動に出ました。北陸電力も73年3月、原発用地の追加買収に賛同した人に1世帯当たり100万円(合計数千万円)を渡す札束攻勢を仕掛けました。
日本共産党、社会党(当時)、日本科学者会議、県評(当時)と住民組織が同年4月、「能登原発反対各種団体連絡会議」を結成。日本共産党の原俊道県議(当時)が、原発の追加買収予定地をめぐる県認可の偽装を暴露し、88年に着工されるまで阻止しました。
82年ごろから、原発推進派は、計画に反対していた西海(さいかい)漁業協同組合の切り崩しを始めます。仲介したのが原谷敬吾北陸電力会長(当時)の中学時代の同級生、根上(ねあがり)町(現能美(のみ)市)町長の森茂喜(しげき)氏。自民党の森喜朗(よしろう)元首相の父です。
原発反対の「各種団体連絡会議」代表を務めた元金沢大学教員の飯田克平氏によると、元陸軍将校の森茂喜氏は、軍隊の上下関係を利用して、新しく代わった西海漁協組合長に働きかけ、『自分の骨を西海に埋める』とまで言って、県による『肩代わり海洋調査』を了承させました」。県の海洋調査結果は北陸電力に転売され、志賀原発の建設が強行されました。
裏取引で取得
もう一つは、珠洲(すず)市の原発計画(2003年に中止)にまつわる森元首相の疑惑です。日本共産党国会議員団は99年10月、関西電力が秘密裏にゼネコン各社を通じて原発予定地周辺の土地(約10万平方メートル)を裏取引で取得したことを段ボール2箱分の資料を集めて国会で追及。関電と清水建設が、山口組系暴力団から、土地買収に協力した見返りに約30億円を要求されていたことも発覚。元大蔵大臣の私設秘書が介在したことから、「資金の一部が政界に流れたのではないか」との疑惑が浮上しました。
地元選出の森氏は93年6月、政府の「総合エネルギー対策推進閣僚会議」に通産相として出席し、珠洲原発計画を「政府一体となって支援すべき」だとした当事者でした。関電が原発予定地周辺の土地取得を始めたのは、この「閣僚会議」の直後でした。
森氏の政治資金管理団体「春風会」は当時、原発用地取得にかかわった清水建設や佐藤工業、金沢市の建設会社から、4年間で合計384万円の献金をうけていました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月13日付掲載
政治献金の「御三家」
鉄鋼 16億2856万円
金融 25億7729万円
電力 11億4350万円
自民党の政治資金集めの窓口「国民協会」(現在の国民政治協会の前身)が、1966年から74年までの間に、かき集めた業界ごとの献金額です。(『政治資金』笹子勝哉)
証券の5億4000万円、生損保の5億8000万円などに比べて突出しており、電力業界は、鉄鋼、金融とともに「献金御三家」といわれていました。
値上げも認可
財界の“政治資金部長”だった経団連の花村仁八郎(にはちろう)事務総長は、財界全体の自民党への献金総額を決め、これを業界ごとに割り振っていったといいます。各業界は、各社の売上高の比率や製品シェアなどを基準に、会員各社に割り振ります。電力では、東京電力の負担額は3割弱だったといいます。
なぜ、政権政党に献金するのか―。
当時の財界幹部の一人、永野重雄日商会頭は、こう語っています。
「川の堤防が切れそうだという時に、人夫賃を出すようなものだ。土砂盛りに行けない村のダンナもいる。その時は資金を出してお願いする。つまり、これはいい政治だと思う政治に協力するわけだ。これが企業の自民党に対する献金じゃないの」(『流動』75年8月号)
政治の側、自民党はこれに“政策”でこたえてきました。
この時期は、原発の立地、建設が急速に進んだ時期に符合します。電力料金値上げの申請は、ほとんど認可されます。田中角栄内閣のもと、74年6月には、9電力の電力料金の平均56・8%ものいっせい値上げがスンナリ認められました。
形変えて継続
しかし、献金の原資は国民が払っている電気料金です。空前絶後の金権選挙と、公益企業による特定政党への政治献金への国民の批判が高まるなか、電力会社は企業献金の中止を決めました。
75年以降、役員によるランク付けされた個人献金という形で事実上の企業献金は、原発を持たない沖縄電力を除く9電力で、いまも続いています。
今回の福島原発事故で、原子力損害賠償支援機構法が民主、自民、公明などの賛成で成立しました。国民の負担によって東電と大株主、大銀行などを救済するものです。ここにも献金の“効果”が表れています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月15日付掲載
森首相親子は、戦前の軍隊の上下関係も使って働きかけたんですね。暴力団がらみは、作業員を集める時だけでなく、土地買収などにもあったんですね。
本当に原発を作るためなら「何でもアリ」って感じですね。
それもそのはず、原発建設は粗利益約3割っていうぐらい、ぼろ儲けの仕事ですし、電気事業は地域独占で絶対赤字にならない仕組みになっているのすから・・・
政治家父子で関与
原子力発電所建設の利権をめぐり、石川県で、ある政治家父子の関与がとりざたされてきました。
一つは、北陸電力が1967年11月、志賀町赤住(しかまちあかすみ)地区などに計画した志賀原発(当時は能登原発)です。
上下関係使う
自民党県政は北陸電力と一体となって72年5月、原発をめぐる赤住地区の住民投票に介入。開票を阻止する異常な行動に出ました。北陸電力も73年3月、原発用地の追加買収に賛同した人に1世帯当たり100万円(合計数千万円)を渡す札束攻勢を仕掛けました。
日本共産党、社会党(当時)、日本科学者会議、県評(当時)と住民組織が同年4月、「能登原発反対各種団体連絡会議」を結成。日本共産党の原俊道県議(当時)が、原発の追加買収予定地をめぐる県認可の偽装を暴露し、88年に着工されるまで阻止しました。
82年ごろから、原発推進派は、計画に反対していた西海(さいかい)漁業協同組合の切り崩しを始めます。仲介したのが原谷敬吾北陸電力会長(当時)の中学時代の同級生、根上(ねあがり)町(現能美(のみ)市)町長の森茂喜(しげき)氏。自民党の森喜朗(よしろう)元首相の父です。
原発反対の「各種団体連絡会議」代表を務めた元金沢大学教員の飯田克平氏によると、元陸軍将校の森茂喜氏は、軍隊の上下関係を利用して、新しく代わった西海漁協組合長に働きかけ、『自分の骨を西海に埋める』とまで言って、県による『肩代わり海洋調査』を了承させました」。県の海洋調査結果は北陸電力に転売され、志賀原発の建設が強行されました。
裏取引で取得
もう一つは、珠洲(すず)市の原発計画(2003年に中止)にまつわる森元首相の疑惑です。日本共産党国会議員団は99年10月、関西電力が秘密裏にゼネコン各社を通じて原発予定地周辺の土地(約10万平方メートル)を裏取引で取得したことを段ボール2箱分の資料を集めて国会で追及。関電と清水建設が、山口組系暴力団から、土地買収に協力した見返りに約30億円を要求されていたことも発覚。元大蔵大臣の私設秘書が介在したことから、「資金の一部が政界に流れたのではないか」との疑惑が浮上しました。
地元選出の森氏は93年6月、政府の「総合エネルギー対策推進閣僚会議」に通産相として出席し、珠洲原発計画を「政府一体となって支援すべき」だとした当事者でした。関電が原発予定地周辺の土地取得を始めたのは、この「閣僚会議」の直後でした。
森氏の政治資金管理団体「春風会」は当時、原発用地取得にかかわった清水建設や佐藤工業、金沢市の建設会社から、4年間で合計384万円の献金をうけていました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月13日付掲載
政治献金の「御三家」
鉄鋼 16億2856万円
金融 25億7729万円
電力 11億4350万円
自民党の政治資金集めの窓口「国民協会」(現在の国民政治協会の前身)が、1966年から74年までの間に、かき集めた業界ごとの献金額です。(『政治資金』笹子勝哉)
証券の5億4000万円、生損保の5億8000万円などに比べて突出しており、電力業界は、鉄鋼、金融とともに「献金御三家」といわれていました。
値上げも認可
財界の“政治資金部長”だった経団連の花村仁八郎(にはちろう)事務総長は、財界全体の自民党への献金総額を決め、これを業界ごとに割り振っていったといいます。各業界は、各社の売上高の比率や製品シェアなどを基準に、会員各社に割り振ります。電力では、東京電力の負担額は3割弱だったといいます。
なぜ、政権政党に献金するのか―。
当時の財界幹部の一人、永野重雄日商会頭は、こう語っています。
「川の堤防が切れそうだという時に、人夫賃を出すようなものだ。土砂盛りに行けない村のダンナもいる。その時は資金を出してお願いする。つまり、これはいい政治だと思う政治に協力するわけだ。これが企業の自民党に対する献金じゃないの」(『流動』75年8月号)
政治の側、自民党はこれに“政策”でこたえてきました。
この時期は、原発の立地、建設が急速に進んだ時期に符合します。電力料金値上げの申請は、ほとんど認可されます。田中角栄内閣のもと、74年6月には、9電力の電力料金の平均56・8%ものいっせい値上げがスンナリ認められました。
原発建設を許可する通産大臣も務め、原発利権が指摘された田中角栄元首相(写真はJR浦佐駅前の銅像=新潟県南魚沼市) |
形変えて継続
しかし、献金の原資は国民が払っている電気料金です。空前絶後の金権選挙と、公益企業による特定政党への政治献金への国民の批判が高まるなか、電力会社は企業献金の中止を決めました。
75年以降、役員によるランク付けされた個人献金という形で事実上の企業献金は、原発を持たない沖縄電力を除く9電力で、いまも続いています。
今回の福島原発事故で、原子力損害賠償支援機構法が民主、自民、公明などの賛成で成立しました。国民の負担によって東電と大株主、大銀行などを救済するものです。ここにも献金の“効果”が表れています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月15日付掲載
森首相親子は、戦前の軍隊の上下関係も使って働きかけたんですね。暴力団がらみは、作業員を集める時だけでなく、土地買収などにもあったんですね。
本当に原発を作るためなら「何でもアリ」って感じですね。
それもそのはず、原発建設は粗利益約3割っていうぐらい、ぼろ儲けの仕事ですし、電気事業は地域独占で絶対赤字にならない仕組みになっているのすから・・・