沈むアベノミクス③ 海外経済の減速 外需依存の行き詰まり
国内消費が落ち込む中で、日本企業は海外市場への依存を深め、円安も追い風に輸出で業績をあげてきました。
日系製造業の出荷全体に占める海外向け出荷は、2014年度に40・5%(04年度比9・4ポイント増)となり過去最高を更新しました。自動車を中心とした輸送機械工業は58・8%(同12・7ポイント増)に達しています(経済産業省調査)。
収益全体に占める海外収益の比率も、13年度の33・7%から15年度(実績見込み)に35・2%まで上昇。自動車産業は42・4%から48・4%となっています(国際協力銀行調査)。
外需依存の収益構造は、海外経済の先行きが不透明感を増す中で、深刻な行き詰まりに直面しています。

中国株価が6%強下落した25日の証券会社=江蘇省南通(ロイター)
投機マネー流入
海外要因で揺れ動いているのは株式市場も同様です。日銀の「異次元の金融緩和」によって円安が加速する中、海外の投機マネーが市場に大量に流入し、株高を演出してきました。しかし、世界経済の減速感が強まったことで、大発会から大幅安となるなど不安定さを増しています。
みずほ総合研究所が16日発表した「内外経済見通し」は、新興国経済の減速が先進国にも波及しつつあるとして、世界経済の見通しを大幅に下方修正。「リスクシナリオである世界連鎖不況に陥る可能性」に注意を促します。
中国は、08年の世界経済危機(リーマン・ショック)後に実施した4兆元(当時の為替レートで50兆円以上)の景気対策の後遺症にあえでいます。巨額投資によって生じた同国の過剰生産能力は、粗鋼生産では全体の12%にあたる1・4億トンに上ります(内閣府調査)。
資源の消費を一手に引き受けてきた同国経済の停滞によって世界的な資源安がすすみ、産油国・資源国を中心に新興国の経済を下押ししています。米国の政策金利引き上げも、新興国からの資金流出を加速しています。
財政難に陥った産油国が、欧米や日本から投資を引き揚げる動きも出ています。三菱UFJモルガン・スタンレー証券1月12日付リポートは、サウジアラビアの財政赤字が14年度約1・7兆円から15年度約11・7兆円に膨らんだことを示し、「原油価格の下落が続けば、『オイルマネーの逆流』がマーケットを震憾(しんかん)させよう」と警告します。
シナリオ破たん
15年度下期の製造業の経常利益予測が、日銀の昨年12月の「全国企業短期経済観測調査」(短観)でマイナス8・1%となるなど、海外経済の減速が日本企業にも影響を与えはじめています。内閣府の2月25日の「月例経済報告」も「中国をはじめとするアジア新興国や資源国等の景気が下振れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある」と指摘します。
「昨年末時点では『海外経済の回復から輸出が増加。好調な企業収益を背景に設備投資増、雇用・賃金増から消費増』という見方がエコノミストのコンセンサス(合意)だったが、既にこのシナリオは再考を余儀なくされている」
第一生命経済研究所2月15日付リポートはこう指摘します。
大企業が潤えば、いずれは家計も潤うというアベノミクスのシナリオは完全に破たんしています。内需を徹底的に破壊しながら、外需依存や投機マネーの呼び込みで見せかけの景気回復を生み出してきたアベノミクス。海外経済の減速で、その虚構がはがれています。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月27日付掲載
外需依存という経済政策は過去にもいく度かあったが…。
今回ほどの惨たんたる状況は初めてのような気がする。
消費税アップをやめ、社会保障充実、雇用の安定、TPPからの撤退で国内産業を守ることが必要だ。
国内消費が落ち込む中で、日本企業は海外市場への依存を深め、円安も追い風に輸出で業績をあげてきました。
日系製造業の出荷全体に占める海外向け出荷は、2014年度に40・5%(04年度比9・4ポイント増)となり過去最高を更新しました。自動車を中心とした輸送機械工業は58・8%(同12・7ポイント増)に達しています(経済産業省調査)。
収益全体に占める海外収益の比率も、13年度の33・7%から15年度(実績見込み)に35・2%まで上昇。自動車産業は42・4%から48・4%となっています(国際協力銀行調査)。
外需依存の収益構造は、海外経済の先行きが不透明感を増す中で、深刻な行き詰まりに直面しています。

中国株価が6%強下落した25日の証券会社=江蘇省南通(ロイター)
投機マネー流入
海外要因で揺れ動いているのは株式市場も同様です。日銀の「異次元の金融緩和」によって円安が加速する中、海外の投機マネーが市場に大量に流入し、株高を演出してきました。しかし、世界経済の減速感が強まったことで、大発会から大幅安となるなど不安定さを増しています。
みずほ総合研究所が16日発表した「内外経済見通し」は、新興国経済の減速が先進国にも波及しつつあるとして、世界経済の見通しを大幅に下方修正。「リスクシナリオである世界連鎖不況に陥る可能性」に注意を促します。
中国は、08年の世界経済危機(リーマン・ショック)後に実施した4兆元(当時の為替レートで50兆円以上)の景気対策の後遺症にあえでいます。巨額投資によって生じた同国の過剰生産能力は、粗鋼生産では全体の12%にあたる1・4億トンに上ります(内閣府調査)。
資源の消費を一手に引き受けてきた同国経済の停滞によって世界的な資源安がすすみ、産油国・資源国を中心に新興国の経済を下押ししています。米国の政策金利引き上げも、新興国からの資金流出を加速しています。
財政難に陥った産油国が、欧米や日本から投資を引き揚げる動きも出ています。三菱UFJモルガン・スタンレー証券1月12日付リポートは、サウジアラビアの財政赤字が14年度約1・7兆円から15年度約11・7兆円に膨らんだことを示し、「原油価格の下落が続けば、『オイルマネーの逆流』がマーケットを震憾(しんかん)させよう」と警告します。
シナリオ破たん
15年度下期の製造業の経常利益予測が、日銀の昨年12月の「全国企業短期経済観測調査」(短観)でマイナス8・1%となるなど、海外経済の減速が日本企業にも影響を与えはじめています。内閣府の2月25日の「月例経済報告」も「中国をはじめとするアジア新興国や資源国等の景気が下振れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある」と指摘します。
「昨年末時点では『海外経済の回復から輸出が増加。好調な企業収益を背景に設備投資増、雇用・賃金増から消費増』という見方がエコノミストのコンセンサス(合意)だったが、既にこのシナリオは再考を余儀なくされている」
第一生命経済研究所2月15日付リポートはこう指摘します。
大企業が潤えば、いずれは家計も潤うというアベノミクスのシナリオは完全に破たんしています。内需を徹底的に破壊しながら、外需依存や投機マネーの呼び込みで見せかけの景気回復を生み出してきたアベノミクス。海外経済の減速で、その虚構がはがれています。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月27日付掲載
外需依存という経済政策は過去にもいく度かあったが…。
今回ほどの惨たんたる状況は初めてのような気がする。
消費税アップをやめ、社会保障充実、雇用の安定、TPPからの撤退で国内産業を守ることが必要だ。