職場のトラブルQ&A⑫ 注文が殺到し長時間残業、違法では? 上限は100時間 でも過労死水準
今回は、残業に関する相談を取り上げます。昨年成立した働き方改革関連法で、時間外労働の上限規制が導入されましたが、過労死水準を容認するものです。
Q 中小の製造業で働いています。最近、注文が殺到し、長時問の残業が発生しています。先月は、残業時間が100時間になりました。違法ではないのですか。
A 労働基準法は、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることを禁止しています。(同法32条)
一方、同法は条件付きで、使用者(会社など)が法定の労働時間を超えて労働者を働かせることを認めています。(同法36条、いわゆる36協定)
労働者の代表(過半数が加入する労働組合または過半数を代表する労働者)と書面による協定を結び、これを行政に届け出ることが条件です。
この36協定で定める残業時間の上限については、今回、後述の法的規制が導入されましたが、中小企業(資本金3億円以下又は従業員数300人以下など)への適用は、来年4月からとなっています。中小企業については、現在、まだ残業時間の法的な上限規制がない状態です。
したがって、あなたの会社の36協定で、繁忙期などに月100時間の延長を認める旨が規定されている場合、月100時間の残業も違法ではないことになります。
もちろん、36協定なしに、または36協定の定める限度をこえて時間外労働をさせれば罰則の対象となります。(労基法119条)また、36協定に基づき時間外労働を行う場合であっても、時間外割増賃金が支払われるのは当然です。(労基法37条)
深夜(午後10時~午前5時)・休日(週1回の法定休日)以外の時間外労働の割増率は25%以上です。
深夜業は25%以上(時間外労働と重なる場合は50%以上)、休日労働は35%以上(深夜業と重なる場合は60%以上)の割増率となっています。
時間外労働は、月45時間、1年360時間などを限度基準とし、36協定でその基準を超える延長時間を定める場合には、その超える時間について、25%を超える割増率を設定するように努めるべき旨を定めていますが(2009年告示)、法的強制力はありません。
また、労基法37条1項但し書きは、1カ月に60時間を超える時間外労働をさせた場合、その超える部分については残業代の割増率を50%以上とする旨定めています。この規定が23年4月1日から、中小企業にも適用されます。
3月17日号「知ってトクする労働相談⑥」の割増賃金に関する図表に一部不正確な部分がありました。改めてご紹介します。
割増賃金と割増率
◇
昨年成立した働き方改革関連法で、時間外労働の上限は、原則月45時間、年360時閻とされました。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時問が限度となりました。ただ、単月100時間、月平均80時間の残業というのは、いわゆる過労死基準であり、長時間労働の根絶には不十分なものとなっています。
今村幸次郎(弁護士)
「しんぶん赤旗」日曜版 2019年4月28日・5月5日付合併号掲載
36協定で労働時の上限を決めれば青天井で働かせ放題だったのが、法律で上限の時間を定められたのは一歩前進。
しかし、その時間が過労死基準の長時間になっている。
今回は、残業に関する相談を取り上げます。昨年成立した働き方改革関連法で、時間外労働の上限規制が導入されましたが、過労死水準を容認するものです。
Q 中小の製造業で働いています。最近、注文が殺到し、長時問の残業が発生しています。先月は、残業時間が100時間になりました。違法ではないのですか。
A 労働基準法は、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることを禁止しています。(同法32条)
一方、同法は条件付きで、使用者(会社など)が法定の労働時間を超えて労働者を働かせることを認めています。(同法36条、いわゆる36協定)
労働者の代表(過半数が加入する労働組合または過半数を代表する労働者)と書面による協定を結び、これを行政に届け出ることが条件です。
この36協定で定める残業時間の上限については、今回、後述の法的規制が導入されましたが、中小企業(資本金3億円以下又は従業員数300人以下など)への適用は、来年4月からとなっています。中小企業については、現在、まだ残業時間の法的な上限規制がない状態です。
したがって、あなたの会社の36協定で、繁忙期などに月100時間の延長を認める旨が規定されている場合、月100時間の残業も違法ではないことになります。
もちろん、36協定なしに、または36協定の定める限度をこえて時間外労働をさせれば罰則の対象となります。(労基法119条)また、36協定に基づき時間外労働を行う場合であっても、時間外割増賃金が支払われるのは当然です。(労基法37条)
深夜(午後10時~午前5時)・休日(週1回の法定休日)以外の時間外労働の割増率は25%以上です。
深夜業は25%以上(時間外労働と重なる場合は50%以上)、休日労働は35%以上(深夜業と重なる場合は60%以上)の割増率となっています。
時間外労働は、月45時間、1年360時間などを限度基準とし、36協定でその基準を超える延長時間を定める場合には、その超える時間について、25%を超える割増率を設定するように努めるべき旨を定めていますが(2009年告示)、法的強制力はありません。
また、労基法37条1項但し書きは、1カ月に60時間を超える時間外労働をさせた場合、その超える部分については残業代の割増率を50%以上とする旨定めています。この規定が23年4月1日から、中小企業にも適用されます。
3月17日号「知ってトクする労働相談⑥」の割増賃金に関する図表に一部不正確な部分がありました。改めてご紹介します。
割増賃金と割増率
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
時間外 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を越えた時 | 25%以上 |
時間外労働が1ケ月60時間を超えた時 ※2013年4月から中小企業にも適用 | 50%以上 | |
深夜 | 22時~翌5時までの間に勤務させた時 | 25%以上 |
休日 | 法定休日(週1日)に勤務させた時 | 35%以上 |
時間外+深夜 | 50%以上 | |
休日+深夜 | 60%以上 |
◇
昨年成立した働き方改革関連法で、時間外労働の上限は、原則月45時間、年360時閻とされました。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時問が限度となりました。ただ、単月100時間、月平均80時間の残業というのは、いわゆる過労死基準であり、長時間労働の根絶には不十分なものとなっています。
今村幸次郎(弁護士)
「しんぶん赤旗」日曜版 2019年4月28日・5月5日付合併号掲載
36協定で労働時の上限を決めれば青天井で働かせ放題だったのが、法律で上限の時間を定められたのは一歩前進。
しかし、その時間が過労死基準の長時間になっている。