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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

2021年経済の潮流① 外国頼み脱却が課題

2021-01-15 07:51:01 | 経済・産業・中小企業対策など
2021年経済の潮流① 外国頼み脱却が課題
桜美林大学教授 藤田実さん

新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)に直面した世界経済は2020年、各国とも深刻な恐慌状態に陥りました。21年中に回復するか先行きは不透明です。たとえ世界経済が恐慌状態を脱したとしても、グローバル化と新自由主義的市場経済で経済が成長できる段階は過ぎ去り、新しい成長モデルが求められています。
こうした状況を受け論壇ではポストコロナ(コロナ後の世界)を展望し、新しい経済社会をめぐる議論が盛んに行われています。その内容は多岐にわたるため、ポストコロナ期における産業と雇用に問題をしぼって考えてみます。

マスクが不足
コロナ危機があぶり出したのはグローバル経済の脆弱(ぜいじゃく)性です。中国では感染が拡大した昨年1月に生産活動がストップしました。その結果中国で部品や素材を生産し、国内で完成品に仕上げる企業内ネットワークが寸断され、まだコロナが流行していなかった日本でも生産の中断を余儀なくされました。日本国内では1月下旬から感染が拡大。マスクや消毒液などの衛生資材が不足しました。それらが中国で生産されていたために世界的な供給不足に陥ったのです。
グローバル化を前提にした中国頼み、外国頼みの脆弱性があらわになり、ポストコロナでは生産のグローバル化から国内生産重視に転換すべきであるとの声が大きくなります。政府も国内回帰に補助金を支給する政策を採り始めました。この政策に企業も反応。応募企業が想定を上回ったこともあり3000億円規模の予算が計上されています。このような動きを見ると、企業はグローバル生産に基づく企業成長に危険性を感じ、国内生産の重要性に気づいたかのように思われます。
しかし、グローバル企業が本格的に海外生産主導から国内生産主導に転換するといえるのでしょうか。



洋山深水港のコンテナ群=2020年10月19日、中国・上海(ロイター)

国内資源使う
海外展開をするグローバル企業は、単純な海外生産ではなく、グローバルに張り巡らせたネットワークを形成しています。例えばA国で部品aを、B国でbを、C国でcを生産し、D国で完成品を組み立てるというものです。このようなグローバルネットワークに下請け企業も組み込まれていることを考えると国内回帰に容易に踏み出せないでしょう。
また、パンデミックによって輸出入が中断する危険性が増し、アメリカのラストベルト(さびついた工業地帯)のようにグローバル化に伴う国内生産の空洞化による地域経済の疲弊に対する反発の高まりを考えると、保護主義的な動きが強まる可能性もあります。国内回帰に基づく国内生産と輸出の増大よりも、海外現地生産の方が企業にとってはより「安全」であるということになるのです。
したがって、企業戦略として海外生産拠点の多角化はありえますが、グローバル企業が本格的に国内回帰の道を選択することは考えられません。私たちはポストコロナ期におけるグローバル化の転換や揺り戻しに期待するのではなく、グローバル企業を中心とした成長循環とは異なる道、対抗戦略を構想すべきです。それは、農業や中小企業を中心にした日本国内の経済資源、地域資源を生かしたローカル成長循環を軸とした国民経済の再構築です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月13日付掲載


海外での生産がストップ。いわゆるサプライチェーンが切断されたことで、必要な物資が供給されない。
それとあわせて、日本で作っても海外で売れない。
農業や中小企業を中心にした日本国内の経済資源、地域資源を生かしたローカル成長循環を軸とした国民経済の再構築が求められています。