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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「新しい資本主義」を考える③ 腐敗の中心地がモデル

2022-09-14 07:08:19 | 経済・産業・中小企業対策など
「新しい資本主義」を考える③ 腐敗の中心地がモデル
政治経済研究所理事 合田寛さん

「新しい資本主義」に関する岸田文雄氏の当初プランは「新自由主義からの転換」を掲げました。「令和版所得倍増」を唱え、「金融所得課税の見直し」を打ち出すなど、分配面を重視する政策を盛り込んでいました。
しかし、岸田政権が6月に閣議決定した「新しい資本主義グランドデザイン」は、「新自由主義からの転換」のフレーズを採用しませんでした。その代わりに、第一の柱として掲げたのは「資本主義のバージョンアップ」でした。新自由主義については、「成長の原動力の役割を果たした」と、肯定的に評価しました。
岸田プランが変質する転換点となったのは、5月5日に世界の金融の中心地である英国ロンドンのシティーで岸田首相が行った講演でした。シティー講演の要点は、「日本経済はこれからも力強く成長を続ける」「安心して日本に投資してほしい」というものでした。分配ではなく成長に力点が置かれました。



英国ロンドンの金融街シティーの市庁舎ギルドホールで基調講演を行う岸田文雄首相=5月5日(首相官邸ホームページから)

貯蓄から投資
岸田首相がシティー演説で強調したのは、シティーをモデルにして日本を金融で繁栄する国にすることでした。そのための戦略の一つとして挙げたのは、2000兆円にのぼる個人の金融資産を投資に結び付け、成長戦略の柱とすることです。巨額の金融資産を「大胆・抜本的に」貯蓄から投資に振り向けることを提唱しました。
岸田首相は「貯蓄から投資へ」のシフトを「資産所得倍増計画」と位置づけ、国民の所得を増やすための計画であるかのように装っています。しかし、多くの国民の資産所得(配当・利子・地代など)は少額であり、倍増してもたいした額になりません。金融市場の成長で所得が大きく増えるのは、巨額の株式や債券を保有する一部の富裕者のみです。
「資産所得倍増計画」の本当のねらいは金融市場の活性化を図ることにあります。これは日本を国際金融センターとする戦略と一体のものです。シティー講演で岸田首相は、「新しい資本主義を実現するためには、国際金融センターとしての日本の復活が必要です」と述べ、日本がシティーと並ぶ国際金融センターとしての地位を目指すことを宣言しました。

汚い資金流入
岸田首相が日本の進むべきモデルとして描くシティーは、国際的な金融の中心であると同時に、ダーティーマネー(違法な活動で得た汚い資金)が流入するオフショア(無規制・非課税の金融地域)の中心です。シティーは、ケイマン諸島などの英国海外領土やジャージーなどの英国王室属領とともに、オフショアのネットワークをつくり上げています。
ロシアのウクライナ侵攻によって浮かび上がったのは、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)がロンドンに持ち込んだ巨額の不法資金です。英国政府は彼らにゴールデンビザ(投資家限定の在住許可)を与え、積極的に呼びこんでいました。
ロシアのオリガルヒに対するオフショアサービスは、ダーティーマネーの流入を許しただけではありません。英国における「法の支配」を弱め、民主主義の基礎を揺るがすとの深刻な懸念が指摘されています。ロンドンにある世界有数のシンクタンクである王立国際問題研究所が昨年末発表した「英国のクレプトクラシー(横領で私腹を肥やす権力者の泥棒政治)問題」と題する報告書は、以下のような趣旨の批判を展開しています。
ソ連崩壊とともに旧ソ連のエリート(オリガルヒ)が巨額の利益を得る機会が生まれた。その過程において英国の銀行、法律事務所、資産管理会社など職業的金融サービス業者は大きなビジネス機会を得た。彼らは不法資金と正当な資金をまぜ合わせ、合法的資金に見せかけるマネーロンダリング(資金洗浄)を助けた。そうすることによって、彼らは英国の法制度に抜け穴をつくり、腐敗に対する取り組みを弱め、「法の下の平等」、ひいては「法の支配」を損なわせた―。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月8日付掲載


岸田プランが変質する転換点となったのは、5月5日に世界の金融の中心地である英国ロンドンのシティーで岸田首相が行った講演。シティー講演の要点は、「日本経済はこれからも力強く成長を続ける」「安心して日本に投資してほしい」というものでした。分配ではなく成長に力点が。
多くの国民の資産所得(配当・利子・地代など)は少額であり、倍増してもたいした額になりません。
シティー講演で岸田首相は、「新しい資本主義を実現するためには、国際金融センターとしての日本の復活が必要です」と述べ、日本がシティーと並ぶ国際金融センターとしての地位を目指すことを宣言。
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