内部留保 コロナ禍でも増加 賃金に回せば日本経済の軌道も変わる
法人企業統計年報の最新版(2021年度)によれば、コロナ禍の中にもかかわらず企業の内部留保は大幅に増加しています。
金融を除く全法人(280万社)で内部留保(利益剰余金)は516兆円と過去最高に達しました(金融を含むと585兆円)。資本金10億円以上の大企業(5千社)も256兆円とやはり過去最高となっており、全法人の0・1%にすぎない大企業が内部留保の半分を占めています。
コロナ禍前との業績比較
(大企業5千社、単位:兆円)
表はコロナ禍前の業績の良かった18年度と21年度を比較したものです。
売上高は大幅に減り従業員給与は増減ゼロですが、金融収益である営業外収益、当期純利益、株主への配当、子会社や金融への投資である投資有価証券、内部留保である利益剰余金は増加となり、いずれも過去最高となっています。売上高が大幅に減ったにもかかわらず当期純利益が増えたのは、営業外収益が過去最高の21兆円となって、当期純利益を押し上げたからです。低調な本業を金融収益で支える経営に変わってきています。
そうした利益から過去最高の配当が支払われていますが、従業員給与の方はまったく増えていません。その残りが内部留保として蓄積されています。コロナ禍の中でも、不況業種は別として、大企業全体で内部留保を積み上げ、それを子会社投資・金融投資に回し続ける経営がこれまでと同様に続いているのです。
大企業の内部留保が極端に増加し始めたのは2000年頃からですが、12年末に発足した第2次安倍内閣のアベノミクスが内部留保の増加に弾みをつけました。現在までの10年間で内部留保は、143兆円(12年度)から256兆円(21年度)へと激増しています。
その間、人件費の抑制と法人税減税・消費税増税の抱き合わせ実施が進められました。増えた内部留保の大部分は労働者の犠牲と国民の負担から生まれたものといわなければなりません。
そうした内部留保への課税を日本共産党は本年2月に提案しましたが、以前から内部留保課税を問題提起していた私としては、わが意を得たり、というところです。
提案によると、安倍政権の経済政策であるアベノミクスが始まった時点にさかのぼり、大企業を対象にそれ以降に増えた内部留保額に毎年2%、5年間で10%程度の課税をしようというものです。
膨大な内部留保への課税によって得た総額10兆円程度の財源を、中小企業等への賃金引き上げの支援に使うことが示されています。企業が賃上げした場合や、環境に配慮した「グリーン投資」を行う場合は、課税対象から控除するという適切な措置も設けられています。こうした内部留保課税によって、富の偏在を招いた内部留保を社会に少しでも還元することができれば、日本経済の軌道の修正につながるのではないかと期待されます。
小栗崇資(おぐりたかし 駒澤大学名誉教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2022年10月2日付掲載
表はコロナ禍前の業績の良かった18年度と21年度を比較したもの。
売上高は大幅に減り従業員給与は増減ゼロですが、金融収益である営業外収益、当期純利益、株主への配当、子会社や金融への投資である投資有価証券、内部留保である利益剰余金は増加となり、いずれも過去最高となっています。売上高が大幅に減ったにもかかわらず当期純利益が増えたのは、営業外収益が過去最高の21兆円となって、当期純利益を押し上げたからです。低調な本業を金融収益で支える経営に変化。
12年末に発足した第2次安倍内閣のアベノミクスが内部留保の増加に弾みをつる。現在までの10年間で内部留保は、143兆円(12年度)から256兆円(21年度)へと激増。
その間、人件費の抑制と法人税減税・消費税増税の抱き合わせの実施。増えた内部留保の大部分は労働者の犠牲と国民の負担から生まれたもの。
法人企業統計年報の最新版(2021年度)によれば、コロナ禍の中にもかかわらず企業の内部留保は大幅に増加しています。
金融を除く全法人(280万社)で内部留保(利益剰余金)は516兆円と過去最高に達しました(金融を含むと585兆円)。資本金10億円以上の大企業(5千社)も256兆円とやはり過去最高となっており、全法人の0・1%にすぎない大企業が内部留保の半分を占めています。
コロナ禍前との業績比較
項目 | 2018年度 | 2021年度 |
↓売上高 | 589 | 543 |
↑営業外利益 | 17 | 21 |
↑当期純利益 | 39 | 41 |
↑株主配当 | 19 | 22 |
→従業員給与 | 34 | 34 |
↑投資有価証券 | 269 | 309 |
↑内部留保(利益剰余金) | 234 | 256 |
表はコロナ禍前の業績の良かった18年度と21年度を比較したものです。
売上高は大幅に減り従業員給与は増減ゼロですが、金融収益である営業外収益、当期純利益、株主への配当、子会社や金融への投資である投資有価証券、内部留保である利益剰余金は増加となり、いずれも過去最高となっています。売上高が大幅に減ったにもかかわらず当期純利益が増えたのは、営業外収益が過去最高の21兆円となって、当期純利益を押し上げたからです。低調な本業を金融収益で支える経営に変わってきています。
そうした利益から過去最高の配当が支払われていますが、従業員給与の方はまったく増えていません。その残りが内部留保として蓄積されています。コロナ禍の中でも、不況業種は別として、大企業全体で内部留保を積み上げ、それを子会社投資・金融投資に回し続ける経営がこれまでと同様に続いているのです。
大企業の内部留保が極端に増加し始めたのは2000年頃からですが、12年末に発足した第2次安倍内閣のアベノミクスが内部留保の増加に弾みをつけました。現在までの10年間で内部留保は、143兆円(12年度)から256兆円(21年度)へと激増しています。
その間、人件費の抑制と法人税減税・消費税増税の抱き合わせ実施が進められました。増えた内部留保の大部分は労働者の犠牲と国民の負担から生まれたものといわなければなりません。
そうした内部留保への課税を日本共産党は本年2月に提案しましたが、以前から内部留保課税を問題提起していた私としては、わが意を得たり、というところです。
提案によると、安倍政権の経済政策であるアベノミクスが始まった時点にさかのぼり、大企業を対象にそれ以降に増えた内部留保額に毎年2%、5年間で10%程度の課税をしようというものです。
膨大な内部留保への課税によって得た総額10兆円程度の財源を、中小企業等への賃金引き上げの支援に使うことが示されています。企業が賃上げした場合や、環境に配慮した「グリーン投資」を行う場合は、課税対象から控除するという適切な措置も設けられています。こうした内部留保課税によって、富の偏在を招いた内部留保を社会に少しでも還元することができれば、日本経済の軌道の修正につながるのではないかと期待されます。
小栗崇資(おぐりたかし 駒澤大学名誉教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2022年10月2日付掲載
表はコロナ禍前の業績の良かった18年度と21年度を比較したもの。
売上高は大幅に減り従業員給与は増減ゼロですが、金融収益である営業外収益、当期純利益、株主への配当、子会社や金融への投資である投資有価証券、内部留保である利益剰余金は増加となり、いずれも過去最高となっています。売上高が大幅に減ったにもかかわらず当期純利益が増えたのは、営業外収益が過去最高の21兆円となって、当期純利益を押し上げたからです。低調な本業を金融収益で支える経営に変化。
12年末に発足した第2次安倍内閣のアベノミクスが内部留保の増加に弾みをつる。現在までの10年間で内部留保は、143兆円(12年度)から256兆円(21年度)へと激増。
その間、人件費の抑制と法人税減税・消費税増税の抱き合わせの実施。増えた内部留保の大部分は労働者の犠牲と国民の負担から生まれたもの。