子どもたちとともに 「教育のつどい」から① 「模擬議会」 町を変えた
全国の教職員、保護者らが参加して8月に大阪市で開かれた「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどいー教育研究全国集会2024」(全日本教職員組合などによる実行委員会主催)では、各地から多彩な報告がありました。分科会での報告のいくつかを紹介します。
生徒たちの主体的なとりくみが紹介された「主権者の教育と生活指導・自治活動」分科会。青森県六戸町(ろくのへまち)にあった県立六戸高校の生徒たちが六戸町議会で模擬議会を開催したことを、同校の社会科の教員だった酒田孝さんが報告しました。
六戸町には12人の町議がいて、若い世代と意見交換会などの交流事業を毎年行っています。2022年には六戸高校生が質問する模擬議会が企画されました。5月に町議たちが来校し、全校生徒約40人と懇談。「なぜ議員になろうと思ったのか」「初恋の話」などと書いたサイコロを使い、予想外の盛り上がりに。7月には、12の班に分かれて、農業、子育てなどのテーマに取り組むことが決まりました。
生徒たちはテーマ別に町の実態を調べました。インドネシアからきた技能実習生6人や子育て中の母親など、住民からのヒアリングも行いました。町内で暮らす上で、どのような困難があるかを聞き取り、交通手段がないために買い物が大変なこと、児童館の必要性などを質問に盛り込みました。生徒たちは政治の言葉を調べながら、質問を作成しました。
六戸町議会での模擬議会のようす=2O22年12月(酒田さん提供)
町議の対応に…
調べていく中で、役場の男性職員の育休取得率は0%であること、町内には149人の外国人が住んでおり、人口の1・5%に及ぶこと、街の環境への取り組みに実績がなかったことなど、さまざまな課題が見えてきました。各班は、質問通告書を練り上げ、3回の打ち合わせを行いました。
町議は全員無所属の男性でした。3回目の打ち合わせの後、ジェンダー平等班の議員役の生徒が、酒田さんのところに泣きながら相談にきました。アドバイザーの町議が、男女共同参画の政策を全否定したといいます。さらに、町の管理職に女性がいない理由を「女は能力がない」からだと言い、一般質問は「町長が長く答弁するためにあるんだ。質問で余計なことは言わなくていい」と「アドバイス」したというのです。これに生徒たちは憤慨。教職員会議でも話し合い、その議員はリハーサルの場で生徒たちに謝罪することになりました。
12月の模擬議会の当日。12人の生徒が1人20分の持ち時間で質問。ジェンダー平等班の生徒が「議員も課長も全員男性で、男女共同参画の担当者も男性。少なくとも担当者は女性にするべき」と質問すると、議場内からどよめきと笑いが起きました。「生徒たちはこの笑いにも憤慨していた」と酒田さん。議員たちと高校生たちの人権感覚の隔たりが浮き彫りとなりました。
生徒の要求実現
生徒たちは、児童館やオンデマンドバスの設置、給食の無償化、ゼロカーボンシティ(脱炭素都市)宣言を行うべきーなどの質問をしました。その結果、町長がゼロカーボンシティ宣言に前向きの答弁をし、トイレの改修や公園の改善に予算がつきました。給食無償化が実現しました。
残念なことに六戸高校は23年3月で閉校。卒業した生徒たちは、それぞれの道へと巣立ちました。酒田さんは「その後、町長が交代するなど、町のおとなたちの政治への意識にも変化が起きた」と感じています。
(手島陽子)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月7日付掲載
六戸町には12人の町議がいて、若い世代と意見交換会などの交流事業を毎年行っています。2022年には六戸高校生が質問する模擬議会が企画。5月に町議たちが来校し、全校生徒約40人と懇談。「なぜ議員になろうと思ったのか」「初恋の話」などと書いたサイコロを使い、予想外の盛り上がりに。
アドバイザーの町議が、男女共同参画の政策を全否定したと。さらに、町の管理職に女性がいない理由を「女は能力がない」からだと言い、一般質問は「町長が長く答弁するためにあるんだ。質問で余計なことは言わなくていい」と「アドバイス」したという。これに生徒たちは憤慨。教職員会議でも話し合い、その議員はリハーサルの場で生徒たちに謝罪することに。
ジェンダー平等班の生徒が「議員も課長も全員男性で、男女共同参画の担当者も男性。少なくとも担当者は女性にするべき」と質問すると、議場内からどよめきと笑いが起きました。「生徒たちはこの笑いにも憤慨していた」と酒田さん。
生徒たちの質問で、町長がゼロカーボンシティ宣言に前向きの答弁をし、トイレの改修や公園の改善に予算が。給食無償化が実現。
全国の教職員、保護者らが参加して8月に大阪市で開かれた「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどいー教育研究全国集会2024」(全日本教職員組合などによる実行委員会主催)では、各地から多彩な報告がありました。分科会での報告のいくつかを紹介します。
生徒たちの主体的なとりくみが紹介された「主権者の教育と生活指導・自治活動」分科会。青森県六戸町(ろくのへまち)にあった県立六戸高校の生徒たちが六戸町議会で模擬議会を開催したことを、同校の社会科の教員だった酒田孝さんが報告しました。
六戸町には12人の町議がいて、若い世代と意見交換会などの交流事業を毎年行っています。2022年には六戸高校生が質問する模擬議会が企画されました。5月に町議たちが来校し、全校生徒約40人と懇談。「なぜ議員になろうと思ったのか」「初恋の話」などと書いたサイコロを使い、予想外の盛り上がりに。7月には、12の班に分かれて、農業、子育てなどのテーマに取り組むことが決まりました。
生徒たちはテーマ別に町の実態を調べました。インドネシアからきた技能実習生6人や子育て中の母親など、住民からのヒアリングも行いました。町内で暮らす上で、どのような困難があるかを聞き取り、交通手段がないために買い物が大変なこと、児童館の必要性などを質問に盛り込みました。生徒たちは政治の言葉を調べながら、質問を作成しました。
六戸町議会での模擬議会のようす=2O22年12月(酒田さん提供)
町議の対応に…
調べていく中で、役場の男性職員の育休取得率は0%であること、町内には149人の外国人が住んでおり、人口の1・5%に及ぶこと、街の環境への取り組みに実績がなかったことなど、さまざまな課題が見えてきました。各班は、質問通告書を練り上げ、3回の打ち合わせを行いました。
町議は全員無所属の男性でした。3回目の打ち合わせの後、ジェンダー平等班の議員役の生徒が、酒田さんのところに泣きながら相談にきました。アドバイザーの町議が、男女共同参画の政策を全否定したといいます。さらに、町の管理職に女性がいない理由を「女は能力がない」からだと言い、一般質問は「町長が長く答弁するためにあるんだ。質問で余計なことは言わなくていい」と「アドバイス」したというのです。これに生徒たちは憤慨。教職員会議でも話し合い、その議員はリハーサルの場で生徒たちに謝罪することになりました。
12月の模擬議会の当日。12人の生徒が1人20分の持ち時間で質問。ジェンダー平等班の生徒が「議員も課長も全員男性で、男女共同参画の担当者も男性。少なくとも担当者は女性にするべき」と質問すると、議場内からどよめきと笑いが起きました。「生徒たちはこの笑いにも憤慨していた」と酒田さん。議員たちと高校生たちの人権感覚の隔たりが浮き彫りとなりました。
生徒の要求実現
生徒たちは、児童館やオンデマンドバスの設置、給食の無償化、ゼロカーボンシティ(脱炭素都市)宣言を行うべきーなどの質問をしました。その結果、町長がゼロカーボンシティ宣言に前向きの答弁をし、トイレの改修や公園の改善に予算がつきました。給食無償化が実現しました。
残念なことに六戸高校は23年3月で閉校。卒業した生徒たちは、それぞれの道へと巣立ちました。酒田さんは「その後、町長が交代するなど、町のおとなたちの政治への意識にも変化が起きた」と感じています。
(手島陽子)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月7日付掲載
六戸町には12人の町議がいて、若い世代と意見交換会などの交流事業を毎年行っています。2022年には六戸高校生が質問する模擬議会が企画。5月に町議たちが来校し、全校生徒約40人と懇談。「なぜ議員になろうと思ったのか」「初恋の話」などと書いたサイコロを使い、予想外の盛り上がりに。
アドバイザーの町議が、男女共同参画の政策を全否定したと。さらに、町の管理職に女性がいない理由を「女は能力がない」からだと言い、一般質問は「町長が長く答弁するためにあるんだ。質問で余計なことは言わなくていい」と「アドバイス」したという。これに生徒たちは憤慨。教職員会議でも話し合い、その議員はリハーサルの場で生徒たちに謝罪することに。
ジェンダー平等班の生徒が「議員も課長も全員男性で、男女共同参画の担当者も男性。少なくとも担当者は女性にするべき」と質問すると、議場内からどよめきと笑いが起きました。「生徒たちはこの笑いにも憤慨していた」と酒田さん。
生徒たちの質問で、町長がゼロカーボンシティ宣言に前向きの答弁をし、トイレの改修や公園の改善に予算が。給食無償化が実現。