生成AI ルールを考える① ホーキング博士の警告
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/71/da13822858d58da39c5b30c6cdd03fe8.jpg)
経済研究者 友寄英隆さん
生成AI(人工知能)をめぐって、国際的、国内的にルールづくりが進行しています。欧州連合(EU)は6月、AI規制法案を採択しました。日本でも、岸田文雄内閣がAI戦略会議を設置して議論を進めています。生成AIをめぐるルールづくりについて考えてみましょう。
(経済研究者 友寄英隆)
生成AIをめぐる議論のなかで、つねに強調されていることがあります。生成AIは、人間にとって、一面では大きな利便性をもたらしてくれるが、他面では非常に危険なリスクもあるということです。こうした生成AIの二面的な特徴を考えるとき、5年前に亡くなった英国のステイーブン・ホーキング博士の遺言を思い出します。
最悪の出来事も
世界中の人々から「車いすの宇宙物理学者」として敬愛されていたホーキング博士は、最後の著作となった『ビッグ・クエスチョン:〈人類の難問〉に答えよう』(邦訳:NHK出版、2019年)のなかで、次のような趣旨のことを述べていました。
「AIの潜在的恩恵はとてつもなく大きい。病気や貧困を撲滅できるかもしれない。だがAIは危険も招くだろう。気がかりなのは、AIの性能が急速に上がって、自ら進化を始めてしまうことだ。遠い将来、AIは自分自身の意志を持ち、私たちと対立するようになるかもしれない。超知能を持つAIの到来は、人類史上、最善の出来事になるか、または最悪の出来事になるだろう」(同書から要約)
ホーキング博士がこうしたAIの二面的側面を述べたとき、博士は、かなり遠い先のことを考えていたようです。AIが人間の脳を超える「超知能」を持つようになるとしても、それはかなり「遠い将来」の話です。
しかし、ホーキング博士の遺言から、わずか5年もたたない間に、AIの技術的な発展が急速に進みました。「大規模言語モデル」という新しい技術の発展で生成AIが開発されたからです。
従来の「検索」と「生成AI」の比較
※文章だけでなく画像、動画、音声なども生成する
回答文書を生成
生成AIの厳密な定義はありません。生成AIは、あらかじめコンピューターに学習させた大量のデータをもとに、文章や画像、音楽などを生成する能力をもった人工知能(AI)のことです。ここでは、従来のインターネットによる「検索」サービスと比べて、生成AIの特徴をみておきましょう。
誰でもパソコンやスマホを使っているときには、検索機能を利用してネットからいろいろな情報を引き出していると思います。こうした従来の「検索」の場合は、「検索欄」に単語を入力すると、それに関連するサイトが一覧形式で表示されます。そのなかから、自分で選択してサイトにアクセスすると、求めている情報が得られます。
これに対して、生成AIの場合は、「検索欄」に単語ではなく、質問形式の文章を書き入れます。質問は、料理のレシピでも、世界の観光地でも、法律の専門的な疑問でも、どんな問題についてでも、瞬時にAIが模範的な「回答」の文章を生成して、パソコン画面に送ってきます。「回答」の文章を作成するAIなので、「生成AI」と呼ばれています。
(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年7月12日付掲載
ホーキング博士の警告。遠い将来、AIは自分自身の意志を持ち、私たちと対立するようになるかもしれない。超知能を持つAIの到来は、人類史上、最善の出来事になるか、または最悪の出来事になるだろう。その危惧は、生成AIとなって現れている。
生成AIの場合は、「検索欄」に単語ではなく、質問形式の文章を書き入れます。質問に対して、瞬時にAIが模範的な「回答」の文章を生成して、パソコン画面に送ってきます。
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経済研究者 友寄英隆さん
生成AI(人工知能)をめぐって、国際的、国内的にルールづくりが進行しています。欧州連合(EU)は6月、AI規制法案を採択しました。日本でも、岸田文雄内閣がAI戦略会議を設置して議論を進めています。生成AIをめぐるルールづくりについて考えてみましょう。
(経済研究者 友寄英隆)
生成AIをめぐる議論のなかで、つねに強調されていることがあります。生成AIは、人間にとって、一面では大きな利便性をもたらしてくれるが、他面では非常に危険なリスクもあるということです。こうした生成AIの二面的な特徴を考えるとき、5年前に亡くなった英国のステイーブン・ホーキング博士の遺言を思い出します。
最悪の出来事も
世界中の人々から「車いすの宇宙物理学者」として敬愛されていたホーキング博士は、最後の著作となった『ビッグ・クエスチョン:〈人類の難問〉に答えよう』(邦訳:NHK出版、2019年)のなかで、次のような趣旨のことを述べていました。
「AIの潜在的恩恵はとてつもなく大きい。病気や貧困を撲滅できるかもしれない。だがAIは危険も招くだろう。気がかりなのは、AIの性能が急速に上がって、自ら進化を始めてしまうことだ。遠い将来、AIは自分自身の意志を持ち、私たちと対立するようになるかもしれない。超知能を持つAIの到来は、人類史上、最善の出来事になるか、または最悪の出来事になるだろう」(同書から要約)
ホーキング博士がこうしたAIの二面的側面を述べたとき、博士は、かなり遠い先のことを考えていたようです。AIが人間の脳を超える「超知能」を持つようになるとしても、それはかなり「遠い将来」の話です。
しかし、ホーキング博士の遺言から、わずか5年もたたない間に、AIの技術的な発展が急速に進みました。「大規模言語モデル」という新しい技術の発展で生成AIが開発されたからです。
従来の「検索」と「生成AI」の比較
従来の「検索」 | 生成AI | |
入力 | 単語(字句) | 質問(文章) |
出力 | 関連サイト (複数一覧形式) | 回答(文章) (生成文章)※ |
回答文書を生成
生成AIの厳密な定義はありません。生成AIは、あらかじめコンピューターに学習させた大量のデータをもとに、文章や画像、音楽などを生成する能力をもった人工知能(AI)のことです。ここでは、従来のインターネットによる「検索」サービスと比べて、生成AIの特徴をみておきましょう。
誰でもパソコンやスマホを使っているときには、検索機能を利用してネットからいろいろな情報を引き出していると思います。こうした従来の「検索」の場合は、「検索欄」に単語を入力すると、それに関連するサイトが一覧形式で表示されます。そのなかから、自分で選択してサイトにアクセスすると、求めている情報が得られます。
これに対して、生成AIの場合は、「検索欄」に単語ではなく、質問形式の文章を書き入れます。質問は、料理のレシピでも、世界の観光地でも、法律の専門的な疑問でも、どんな問題についてでも、瞬時にAIが模範的な「回答」の文章を生成して、パソコン画面に送ってきます。「回答」の文章を作成するAIなので、「生成AI」と呼ばれています。
(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年7月12日付掲載
ホーキング博士の警告。遠い将来、AIは自分自身の意志を持ち、私たちと対立するようになるかもしれない。超知能を持つAIの到来は、人類史上、最善の出来事になるか、または最悪の出来事になるだろう。その危惧は、生成AIとなって現れている。
生成AIの場合は、「検索欄」に単語ではなく、質問形式の文章を書き入れます。質問に対して、瞬時にAIが模範的な「回答」の文章を生成して、パソコン画面に送ってきます。
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