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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

SDGs実現目指して② 企業を変える取り組み

2021-07-09 07:20:53 | 国際政治
SDGs実現目指して② 企業を変える取り組み
駒澤大学名誉教授・小栗崇資さん

SDGs(持続可能な開発目標)の実現は、政府・自治体や企業、市民などの多様な主体の参加と協力によって支えられます。特に企業には、SDGsに反しないような社会と環境のための規制・規範を課し、SDGsの推進に協力を求めることが必要です。SDGsの実現には企業行動の転換が不可欠であり、そうした企業の変革が政府の政策と相まって経済の変革へとつながることが期待されています。
国連は、MDGs(ミレニアム開発目標)に取り組む際に、企業の先進的な協力を得るために「グローバル・コンパクト」を2000年に立ち上げました(コンパクトとは誓約のこと)。人権と労働権の尊重、雇用差別の撤廃、環境への責任など10の原則を実行することを企業に誓約させる活動です。さらに国連は、企業の行動を規制するために07年に「保護・尊重・救済:ビジネスと人権のための枠組み」、11年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を提起しました。
SDGsは、企業の規制を図りつつ先進的な協力を求めるこのような取り組みを前提としています。SDGsは、国際社会で蓄積されてきた基本的人権の尊重の取り組みが底流となっていますが、とりわけ企業における人権の尊重が要の位置を占めています。



2017年7月17日、ニューヨークの国連本部で開かれた「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」(UN Photo by Haughton)

人権順守求め
「指導原則」が契機となり、国連人権委員会では18年からビジネスと人権についての条約の検討が始まっています。20年には第2次条約案が提示されるに至っており、人権面で多国籍企業の規制をめざす国際条約化の動きは画期的な段階に入っています。
条約の中で核となるのが人権デューデリジェンスです。デューデリジェンスとは、適正な調査・対応を意味する言葉です。人権デューデリジェンスは、企業がもたらす人権への有害な影響をリスクとして評価・管理し、適切に対処する行動を求めるもので、企業行動に変革を促す重要な方策の一つです。。
国際条約化を待たずに、欧州連合(EU)では人権デューデリジェンスを法制化する方向に進みつつあります。NGO「企業正義を求めるヨーロッパ連合」による法制化への活動が実を結び、法案「企業におけるデューデリジェンスと説明責任」が出され、21年中にはEU法(指令)として制定が見通される段階に入っています。この法案は、「環境のリスクは人権のリスクと密接に結びついている」として、人権だけでなく環境についてのデューデリジェンスも企業に義務づけており、人権と環境の双方の取り組みを求めるものになっています。EUでは「企業正義」(Corporate Justice)と「環境正義」(Climate Justice)を一体化して推進する段階に入りつつあります。
EU法が制定されれば、企業における人権の順守は強制的な適用へと進むことになり、SDGs実現への大きな支えとなることでしょう。

企業責任課す
人権の順守とともに重要となるのはESG情報の開示です。EUはESG情報の報告を企業に要請するために、14年に非財務報告についてのEU指令を発しました。ESGとは環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉です。環境、社会、従業員、人権尊重、腐敗防止に関する情報の開示により企業の責任を明らかにすることを求めています。
またEUは、19年に気候変動対策「欧州グリーンディール」を公表し、50年までのカーボンニュートラル(脱炭素)を含む気候中立への目標を世界で初めて掲げました。そのための情報開示策として「EUタクソノミー」を20年に法制化しています。タクソノミーは分類の意味であり、事業活動をグリーン(環境に貢献)か非グリーン(貢献なし)か、ブラウン(環境を阻害)か、に分けて報告することを企業や金融機関に求めています。EUタクソノミーも非財務報告と並ぶESG情報開示の一環となっています。こうしたESG情報の開示がSDGsを推進するうえでの重要な手段となるといわなければなりません。
以上のような企業を変えるためのEUの取り組みに、私たちは大いに学ばなければなりません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月7日付掲載


環境、社会、従業員、人権尊重、腐敗防止に関する情報の開示により企業の責任を明らかにすること。
事業活動をグリーン(環境に貢献)か非グリーン(貢献なし)か、ブラウン(環境を阻害)か、に分けて報告することを企業や金融機関に求めること。
SDGsでEUは先進的な取り組みをしています。


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