医療費負担割合 マイナカードに記載なし 誤登録 気づけない 紙の保険証存続は必須
年齢や所得により1~3割に区分される70歳以上の医療費の窓口負担割合が、紙の保険証と、マイナンバーカードなどを使ったオンライン資格確認に相違のある事例が全国各地で相次いでいます。保険証と一体になったマイナンバーカードには負担割合は書かれておらず、従来の保険証が廃止されると、オンライン資格確認に誤った情報が登録されていても分からず正されないまま保険給付が続いてしまいます。従来の保険証存続は必須です。(内藤真己子)
全国保険医団体連合会(保団連)が9日公表した「オンライン資格確認のトラブル実態調査」結果では、19都府県の370医療機関で、従来の保険証とオンライン資格の照会に負担割合の相違があったことが分かりました(回答数2780医療機関)。一つの医療機関で10件、15件発生している場合もありました。
「患者さんが出した保険証は1割負担なのにオンライン資格は2割」(岩手県)、「3割の人が(オンラインで)2割と表示が数名いる」(神奈川県)、「オンライン1割、保険証3割」(静岡県)、「保険証は1割が資格確認は2割」(山口県)など、全国に広がっています。
登録誤り認める
従来の保険証とオンライン資格確認の負担割合の相違は本紙が千葉市国民健康保険の事例を告発。報道後、千葉市はオンライン資格確認システムに誤った負担割合が登録されていたと認めました。
市が加入者の負担割合を入力した際、3割とすべきところを2割と入力。その日のうちに誤りに気づき入力し直しましたが、誤った情報を消去(無効化)しませんでした。そのため、正しい3割負担と誤った2割負担の両方の情報が都道府県国保連合会のシステム(国保情報集約システム)に送られました。
ところが国保連のシステムは、プログラムに従って誤った2割負担の情報を正しいものとして処理し、登録してしまいました。その情報がオンライン資格確認システムにも送られました。
一方、千葉市が発行した保険証には正しい負担割合が記載されています。
重大なことは、保険証が廃止されれば、こうしたオンライン資格確認への誤った負担割合の登録が、医療機関の窓口で発見できなくなってしまうことです。保険証と一体化したマイナンバーカードには負担割合は書かれておらず、医療機関はオンライン資格確認の負担割合に沿って窓口負担を徴収し、残りを保険請求することになるからです。
患者負担割合が記された高齢受給者証とセットになった国民健康保険証(画像の一部を加工)
運用停止求める
そのうえ本紙の取材で、いったん誤った情報が登録されてしまえば、医療機関による診療報酬の請求や国保連による審査支払いのどの過程でも誤りが発見されないことが分かりました。負担割合などの確認は、オンライン資格確認に登録された情報と照合する仕組みになっているからです。
こうした事態をうけ全国保団連の住江憲勇会長は9日の会見で、「全容解明のための運用停止と保険証の存続」を強く求めました。
情報一元化が誤りうむ
マイナンバー問題に詳しい自治体情報政策研究所代表の黒田充さんの話
岸田政権が進めるデジタル改革の狙いは、国民の個人情報を集約し、大企業のもうけや、社会保障給付の削減に利活用することです。保険証を廃止し、国民全員にマイナンバーカードを持たせようとするのも、そうした利活用を進めるためです。
日本の医療保険制度は、健保組合や協会けんぽなど多数の保険者によって業務が行われています。自治体の国保も、それぞれが持つ情報処理システムで業務を行っていますが、システムは自治体ごとに異なります。保険者が多数あり、システムもバラバラなもと、情報を集め一元化しようとするなら、誤りを避けるのは難しいでしょう。
国保や後期高齢者医療の患者負担割合は、行政が被保険者の年齢や所得に応じて決定する行政処分であり重いものです。それが一元化のための情報処理・連携によって誤って登録されるというのは制度の根幹を揺るがす重大な問題です。
しかも保険証が廃止さ れれば誰も誤りに気付け、ないというのは極めて深刻です。保険証廃止方針は撤回するしかありません。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月13日付掲載
「患者さんが出した保険証は1割負担なのにオンライン資格は2割」(岩手県)、「3割の人が(オンラインで)2割と表示が数名いる」(神奈川県)、「オンライン1割、保険証3割」(静岡県)、「保険証は1割が資格確認は2割」(山口県)など、全国に。まさに、支離滅裂ですね。
重大なことは、保険証が廃止されれば、こうしたオンライン資格確認への誤った負担割合の登録が、医療機関の窓口で発見できなくなってしまうこと。
岸田政権が進めるデジタル改革の狙いは、国民の個人情報を集約し、大企業のもうけや、社会保障給付の削減に利活用すること。しかし、健保組合、協会けんぽ、国民健康保険など別々のシステムを一元化するってことに無理がある。
集約した個人情報に誤りがあったら、何のためのデジタル化ってことにもなる。
年齢や所得により1~3割に区分される70歳以上の医療費の窓口負担割合が、紙の保険証と、マイナンバーカードなどを使ったオンライン資格確認に相違のある事例が全国各地で相次いでいます。保険証と一体になったマイナンバーカードには負担割合は書かれておらず、従来の保険証が廃止されると、オンライン資格確認に誤った情報が登録されていても分からず正されないまま保険給付が続いてしまいます。従来の保険証存続は必須です。(内藤真己子)
全国保険医団体連合会(保団連)が9日公表した「オンライン資格確認のトラブル実態調査」結果では、19都府県の370医療機関で、従来の保険証とオンライン資格の照会に負担割合の相違があったことが分かりました(回答数2780医療機関)。一つの医療機関で10件、15件発生している場合もありました。
「患者さんが出した保険証は1割負担なのにオンライン資格は2割」(岩手県)、「3割の人が(オンラインで)2割と表示が数名いる」(神奈川県)、「オンライン1割、保険証3割」(静岡県)、「保険証は1割が資格確認は2割」(山口県)など、全国に広がっています。
登録誤り認める
従来の保険証とオンライン資格確認の負担割合の相違は本紙が千葉市国民健康保険の事例を告発。報道後、千葉市はオンライン資格確認システムに誤った負担割合が登録されていたと認めました。
市が加入者の負担割合を入力した際、3割とすべきところを2割と入力。その日のうちに誤りに気づき入力し直しましたが、誤った情報を消去(無効化)しませんでした。そのため、正しい3割負担と誤った2割負担の両方の情報が都道府県国保連合会のシステム(国保情報集約システム)に送られました。
ところが国保連のシステムは、プログラムに従って誤った2割負担の情報を正しいものとして処理し、登録してしまいました。その情報がオンライン資格確認システムにも送られました。
一方、千葉市が発行した保険証には正しい負担割合が記載されています。
重大なことは、保険証が廃止されれば、こうしたオンライン資格確認への誤った負担割合の登録が、医療機関の窓口で発見できなくなってしまうことです。保険証と一体化したマイナンバーカードには負担割合は書かれておらず、医療機関はオンライン資格確認の負担割合に沿って窓口負担を徴収し、残りを保険請求することになるからです。
患者負担割合が記された高齢受給者証とセットになった国民健康保険証(画像の一部を加工)
運用停止求める
そのうえ本紙の取材で、いったん誤った情報が登録されてしまえば、医療機関による診療報酬の請求や国保連による審査支払いのどの過程でも誤りが発見されないことが分かりました。負担割合などの確認は、オンライン資格確認に登録された情報と照合する仕組みになっているからです。
こうした事態をうけ全国保団連の住江憲勇会長は9日の会見で、「全容解明のための運用停止と保険証の存続」を強く求めました。
情報一元化が誤りうむ
マイナンバー問題に詳しい自治体情報政策研究所代表の黒田充さんの話
岸田政権が進めるデジタル改革の狙いは、国民の個人情報を集約し、大企業のもうけや、社会保障給付の削減に利活用することです。保険証を廃止し、国民全員にマイナンバーカードを持たせようとするのも、そうした利活用を進めるためです。
日本の医療保険制度は、健保組合や協会けんぽなど多数の保険者によって業務が行われています。自治体の国保も、それぞれが持つ情報処理システムで業務を行っていますが、システムは自治体ごとに異なります。保険者が多数あり、システムもバラバラなもと、情報を集め一元化しようとするなら、誤りを避けるのは難しいでしょう。
国保や後期高齢者医療の患者負担割合は、行政が被保険者の年齢や所得に応じて決定する行政処分であり重いものです。それが一元化のための情報処理・連携によって誤って登録されるというのは制度の根幹を揺るがす重大な問題です。
しかも保険証が廃止さ れれば誰も誤りに気付け、ないというのは極めて深刻です。保険証廃止方針は撤回するしかありません。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月13日付掲載
「患者さんが出した保険証は1割負担なのにオンライン資格は2割」(岩手県)、「3割の人が(オンラインで)2割と表示が数名いる」(神奈川県)、「オンライン1割、保険証3割」(静岡県)、「保険証は1割が資格確認は2割」(山口県)など、全国に。まさに、支離滅裂ですね。
重大なことは、保険証が廃止されれば、こうしたオンライン資格確認への誤った負担割合の登録が、医療機関の窓口で発見できなくなってしまうこと。
岸田政権が進めるデジタル改革の狙いは、国民の個人情報を集約し、大企業のもうけや、社会保障給付の削減に利活用すること。しかし、健保組合、協会けんぽ、国民健康保険など別々のシステムを一元化するってことに無理がある。
集約した個人情報に誤りがあったら、何のためのデジタル化ってことにもなる。
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