経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑤ 労働市場 財界のための「改革」
骨太方針は労働分野について、「三位一体の労働市場改革」を掲げています。①リスキリング(学び直し)による能力向上支援②個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入③雇用維持から成長分野への労働移動の円滑化への雇用政策の転換―を進めるものです。
「持続的・構造的な賃上げ」を実現するためだといいますが、まやかしです。
リスキリングの推進によって、労働者は、企業が求める能力を絶えず個人の責任で開発することを求められるようになります。これと一体で「労働移動の円滑化」が進められると、企業の求める能力がないと判断された労働者は、労働移動(転職)を可能にする能力を自助努力で身につけることを迫られます。こうした手法で労働者を退職に追い込むことを容易にするのが「三位一体改革」の本当の狙いです。
コストを削減しながら必要な労働力の確保を求める財界は、リスキリングの推進と労働移動の円滑化を政府に要請しています。
最低賃金の全国一律1500円以上を求めてデモ行進する人たち=7月20日、東京都新宿区
賃下げと流動化
「三位一体改革」のもう一つの柱は、「ジョブ型人事(職務給)」の導入です。「ジョブ型人事指針」を今夏に公表し、各企業が導入方法を検討できるようにするとしています。
経団連や政府が提唱する「ジョブ型人事(職務給)」は、職務内容が明確に規定されている欧米の職務給とはまったく異なるものです。
日本の場合は、職務内容が特定されておらず、賃金は職務とは無関係に能力・業績考課と情意考課(性格・人格・意欲)によって査定され、個別に決められています。職務を横断する配置転換も行われています。
政府・財界の言う「ジョブ型人事(職務給)」は、職務を口実に中高年の賃金を引き下げたうえに、本来の職務給ではありえない役割・成果による査定でさらに労働者全体の賃金を引き下げ、格差を拡大し、「能力なし」と判断した労働者をリスキリングの強要と退職に追い込もうとするものです。
電機大企業は、目標未達の労働者を降格・解雇することまで制度化しています。こんな制度を政府は支援しようというのです。
国際基準踏まえ
リスキリングは、労働者本位に実施することが必要です。国際労働機関(ILO)は「人的資源開発勧告」(第195号)で「教育および訓練は、すべての者の権利である」と位置づけるとともに、「有給教育休暇条約」(第140号)で教育・訓練に参加する労働者に有給の教育休暇を保障することを定めています。EU(欧州連合)も教育・訓練・生涯学習を社会権として位置づけ保障しています。
また、骨太方針が掲げるデジタル化が「生産性の向上」を目的としているのに対し、EUでは「人間中心の透明性のあるデジタル社会を築く。デジタル化に際しては、事前に労働者に情報を提供し協議する」ことが確認されています。
日本経済再生のためには、労働者に賃下げや格差拡大、不安定雇用をもたらす「三位一体改革」ではなく、国際的な基準と経験を踏まえて、労働者の人権を保護する国の義務と企業の責任を明確にした労働政策こそが必要です。
(日本共産党国民運動委員会 筒井晴彦)
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月24日付掲載
リスキリングの推進によって、労働者は、企業が求める能力を絶えず個人の責任で開発することを求められるように。これと一体で「労働移動の円滑化」が進められると、企業の求める能力がないと判断された労働者は、労働移動(転職)を可能にする能力を自助努力で身につけることを迫られます。こうした手法で労働者を退職に追い込むことを容易にするのが「三位一体改革」の本当の狙い。
政府・財界の言う「ジョブ型人事(職務給)」は、職務を口実に中高年の賃金を引き下げたうえに、本来の職務給ではありえない役割・成果による査定でさらに労働者全体の賃金を引き下げ、格差を拡大し、「能力なし」と判断した労働者をリスキリングの強要と退職に追い込もうとするもの。
リスキリングは、労働者本位に実施することが必要。
国際労働機関(ILO)は「人的資源開発勧告」(第195号)で「教育および訓練は、すべての者の権利である」と位置づけるとともに、「有給教育休暇条約」(第140号)で教育・訓練に参加する労働者に有給の教育休暇を保障することを定めています。EU(欧州連合)も教育・訓練・生涯学習を社会権として位置づけ保障。
骨太方針は労働分野について、「三位一体の労働市場改革」を掲げています。①リスキリング(学び直し)による能力向上支援②個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入③雇用維持から成長分野への労働移動の円滑化への雇用政策の転換―を進めるものです。
「持続的・構造的な賃上げ」を実現するためだといいますが、まやかしです。
リスキリングの推進によって、労働者は、企業が求める能力を絶えず個人の責任で開発することを求められるようになります。これと一体で「労働移動の円滑化」が進められると、企業の求める能力がないと判断された労働者は、労働移動(転職)を可能にする能力を自助努力で身につけることを迫られます。こうした手法で労働者を退職に追い込むことを容易にするのが「三位一体改革」の本当の狙いです。
コストを削減しながら必要な労働力の確保を求める財界は、リスキリングの推進と労働移動の円滑化を政府に要請しています。
最低賃金の全国一律1500円以上を求めてデモ行進する人たち=7月20日、東京都新宿区
賃下げと流動化
「三位一体改革」のもう一つの柱は、「ジョブ型人事(職務給)」の導入です。「ジョブ型人事指針」を今夏に公表し、各企業が導入方法を検討できるようにするとしています。
経団連や政府が提唱する「ジョブ型人事(職務給)」は、職務内容が明確に規定されている欧米の職務給とはまったく異なるものです。
日本の場合は、職務内容が特定されておらず、賃金は職務とは無関係に能力・業績考課と情意考課(性格・人格・意欲)によって査定され、個別に決められています。職務を横断する配置転換も行われています。
政府・財界の言う「ジョブ型人事(職務給)」は、職務を口実に中高年の賃金を引き下げたうえに、本来の職務給ではありえない役割・成果による査定でさらに労働者全体の賃金を引き下げ、格差を拡大し、「能力なし」と判断した労働者をリスキリングの強要と退職に追い込もうとするものです。
電機大企業は、目標未達の労働者を降格・解雇することまで制度化しています。こんな制度を政府は支援しようというのです。
国際基準踏まえ
リスキリングは、労働者本位に実施することが必要です。国際労働機関(ILO)は「人的資源開発勧告」(第195号)で「教育および訓練は、すべての者の権利である」と位置づけるとともに、「有給教育休暇条約」(第140号)で教育・訓練に参加する労働者に有給の教育休暇を保障することを定めています。EU(欧州連合)も教育・訓練・生涯学習を社会権として位置づけ保障しています。
また、骨太方針が掲げるデジタル化が「生産性の向上」を目的としているのに対し、EUでは「人間中心の透明性のあるデジタル社会を築く。デジタル化に際しては、事前に労働者に情報を提供し協議する」ことが確認されています。
日本経済再生のためには、労働者に賃下げや格差拡大、不安定雇用をもたらす「三位一体改革」ではなく、国際的な基準と経験を踏まえて、労働者の人権を保護する国の義務と企業の責任を明確にした労働政策こそが必要です。
(日本共産党国民運動委員会 筒井晴彦)
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月24日付掲載
リスキリングの推進によって、労働者は、企業が求める能力を絶えず個人の責任で開発することを求められるように。これと一体で「労働移動の円滑化」が進められると、企業の求める能力がないと判断された労働者は、労働移動(転職)を可能にする能力を自助努力で身につけることを迫られます。こうした手法で労働者を退職に追い込むことを容易にするのが「三位一体改革」の本当の狙い。
政府・財界の言う「ジョブ型人事(職務給)」は、職務を口実に中高年の賃金を引き下げたうえに、本来の職務給ではありえない役割・成果による査定でさらに労働者全体の賃金を引き下げ、格差を拡大し、「能力なし」と判断した労働者をリスキリングの強要と退職に追い込もうとするもの。
リスキリングは、労働者本位に実施することが必要。
国際労働機関(ILO)は「人的資源開発勧告」(第195号)で「教育および訓練は、すべての者の権利である」と位置づけるとともに、「有給教育休暇条約」(第140号)で教育・訓練に参加する労働者に有給の教育休暇を保障することを定めています。EU(欧州連合)も教育・訓練・生涯学習を社会権として位置づけ保障。
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