国会そのまま街頭上映 論点ずらす政府、報じられない実態伝える
「国会PV」代表 法政大学教授 上西充子さん
うえにし・みつこ=1965年生まれ。法政大学キャリアデザイン学部教授。2018年6月から「国会パブリックビューイング」代表。著書に『呪いの言葉の解きかた』など
国会審議を街頭で可視化する「国会パブリックビューイング(PV)」。街頭から民主主義をつくり直す新しい試みです。主宰者で「国会PV」代表の上西充子さん(法政大学教授)が、新著『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』を出しました。
『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』集英社・税別1600円
自ら政治つかむ場つくり 社会を良くする種をまく
専門は労働問題です。国会PVを始めたきっかけは「働き方改革」法案の国会審議(2018年)。残業代を払わず働き続けさせる「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」が世間に伝わらないもどかしさからでした。
「危険な法案なのに、政府はわざと論点をずらして分かりにくく答弁する。野党がどんなに鋭い追及をしてもメディアは報じない。国会は私たち主権者が見守って初めてまともな審議になります。そのためには政治に目を向けていない人たちに『あなたの働き方が変わるんですよ』って届けたいと思いました。ツイッターで国会審議の映像を2分程度で切り出す(編集する)人たちがいて、『この映像を街に持ち出したい』と始めたんです」
編集を加えず
上映は実にシンプル。街頭にスクリーンとプロジェクターを設置し、短い解説を添えて審議の重要部分を編集を加えずそのまま流します。一人、二人と足をとめ、映像にじっと見入る姿が各所でみられます。
「映像は言葉や文字と違って“現物”がそこにある。安倍政権の『ご飯論法』もよくわかります。『朝ごはんを食べなかったのか』と聞けば、『ご飯は食べていない』と答える。何も食べなかったかのように聞こえますが、実は『パンを食べた』ことは絶対に言わず、隠し続けるわけです。映像は『自ら発見する』という良さがあります。政府が隠したい不都合な部分がよくわかる。国会PVを見た方がツイッターで“政府の口調は丁寧だけど中身がない。会社が高プロを導入しようとしたら理論武装してイヤだという”と発信してくれました。自分で情報をつかみとれば、その人の判断や行動につながります。街中に政治空間をつくることって大事だなと思いました」
声をかけない
心がけているのは受け取る側の視点にたった発信です。自分の思いが中心であってはいけないといいます。
「納得する前に『反対しましょう』といわれると、私自身“従わされる感”があってちゅうちょします。服を手に取ってみたいけど『何かお探しですか?』って声をかけられると近づきがたいですね。でも自分のペースで服を選べると安心して近づくことができます。私は『声をかけない洋服屋さん』方式(笑い)って呼んでいます。国会PVでもあえて声をかけず、その人の関心と都合にあわせて好なだけ映像を見てもらう場づくりを意識しています。相手への敬意を持ったメッセージの届け方が大事だと思っています」
国会PVの取り組融を通じて日本国憲法がぐっと身近になりました。
「国会の問題状況をメディアが報じないなら、私たちが伝える。国会をまともに機能させるための場を路上に確保する。国会PVを通じて憲法を保持する『国民の不断の努力』(12条)がより実感できるようになりました。たとえ安倍政権を倒して政権が交代したとしても『国会おまかせ』ではいけない。国会を正常化し、社会をよりよくしていくことに主権者一人ひとりが関与していかなくてはいけません。国会PVはその種をまく活動の一つです」
「桜を見る会」「赤旗」と共産党に注目
上西教授と一緒に、「桜」疑惑についてトークする共産党の田村智子参院議員=2019年12月24日、東京都新宿区
国会PVで「桜を見る会」問題も取り上げました。追及する日本共産党国会議員の質疑、「しんぶん赤旗」日曜版のスクープ報道にも大いに注目します。
「『赤旗』日曜版が丹念に事実を掘り起こして報じ、それを田村智子さん(党政策委員長)が引き継いですばらしい質問をしましたね。他の野党議員がみて『自分たちも頑張ろう』と思える質疑でした。田村議員の背後には『赤旗』という独自の調査報道機関、シンクタンクがあった。各都道府県や地方自治体にも議員をはじめ草の根の組織が広がっています。超党派の野党議員の調査にも各地の共産党の人たちが多くかかわっている。政党としての足腰の強さを感じます。こういう勢力をもっと国政で伸ばした方がいいと思っています」
聞き手・竹原東吾記者
「しんぶん赤旗」日曜版 2020年4月19日付掲載
野党がどんなに鋭い追及をしてもメディアは報じない。それなら、私たちが街頭で国会の場面を放映しようとの試み。
「声をかけない」。相手の目線で見てもらう。政治への関心はそれぞれあるのだから。
洋服屋さんとすれば、自分のペースで服を選んでもらうお店をめざすとか。
「国会PV」代表 法政大学教授 上西充子さん
うえにし・みつこ=1965年生まれ。法政大学キャリアデザイン学部教授。2018年6月から「国会パブリックビューイング」代表。著書に『呪いの言葉の解きかた』など
国会審議を街頭で可視化する「国会パブリックビューイング(PV)」。街頭から民主主義をつくり直す新しい試みです。主宰者で「国会PV」代表の上西充子さん(法政大学教授)が、新著『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』を出しました。
『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』集英社・税別1600円
自ら政治つかむ場つくり 社会を良くする種をまく
専門は労働問題です。国会PVを始めたきっかけは「働き方改革」法案の国会審議(2018年)。残業代を払わず働き続けさせる「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」が世間に伝わらないもどかしさからでした。
「危険な法案なのに、政府はわざと論点をずらして分かりにくく答弁する。野党がどんなに鋭い追及をしてもメディアは報じない。国会は私たち主権者が見守って初めてまともな審議になります。そのためには政治に目を向けていない人たちに『あなたの働き方が変わるんですよ』って届けたいと思いました。ツイッターで国会審議の映像を2分程度で切り出す(編集する)人たちがいて、『この映像を街に持ち出したい』と始めたんです」
編集を加えず
上映は実にシンプル。街頭にスクリーンとプロジェクターを設置し、短い解説を添えて審議の重要部分を編集を加えずそのまま流します。一人、二人と足をとめ、映像にじっと見入る姿が各所でみられます。
「映像は言葉や文字と違って“現物”がそこにある。安倍政権の『ご飯論法』もよくわかります。『朝ごはんを食べなかったのか』と聞けば、『ご飯は食べていない』と答える。何も食べなかったかのように聞こえますが、実は『パンを食べた』ことは絶対に言わず、隠し続けるわけです。映像は『自ら発見する』という良さがあります。政府が隠したい不都合な部分がよくわかる。国会PVを見た方がツイッターで“政府の口調は丁寧だけど中身がない。会社が高プロを導入しようとしたら理論武装してイヤだという”と発信してくれました。自分で情報をつかみとれば、その人の判断や行動につながります。街中に政治空間をつくることって大事だなと思いました」
声をかけない
心がけているのは受け取る側の視点にたった発信です。自分の思いが中心であってはいけないといいます。
「納得する前に『反対しましょう』といわれると、私自身“従わされる感”があってちゅうちょします。服を手に取ってみたいけど『何かお探しですか?』って声をかけられると近づきがたいですね。でも自分のペースで服を選べると安心して近づくことができます。私は『声をかけない洋服屋さん』方式(笑い)って呼んでいます。国会PVでもあえて声をかけず、その人の関心と都合にあわせて好なだけ映像を見てもらう場づくりを意識しています。相手への敬意を持ったメッセージの届け方が大事だと思っています」
国会PVの取り組融を通じて日本国憲法がぐっと身近になりました。
「国会の問題状況をメディアが報じないなら、私たちが伝える。国会をまともに機能させるための場を路上に確保する。国会PVを通じて憲法を保持する『国民の不断の努力』(12条)がより実感できるようになりました。たとえ安倍政権を倒して政権が交代したとしても『国会おまかせ』ではいけない。国会を正常化し、社会をよりよくしていくことに主権者一人ひとりが関与していかなくてはいけません。国会PVはその種をまく活動の一つです」
「桜を見る会」「赤旗」と共産党に注目
上西教授と一緒に、「桜」疑惑についてトークする共産党の田村智子参院議員=2019年12月24日、東京都新宿区
国会PVで「桜を見る会」問題も取り上げました。追及する日本共産党国会議員の質疑、「しんぶん赤旗」日曜版のスクープ報道にも大いに注目します。
「『赤旗』日曜版が丹念に事実を掘り起こして報じ、それを田村智子さん(党政策委員長)が引き継いですばらしい質問をしましたね。他の野党議員がみて『自分たちも頑張ろう』と思える質疑でした。田村議員の背後には『赤旗』という独自の調査報道機関、シンクタンクがあった。各都道府県や地方自治体にも議員をはじめ草の根の組織が広がっています。超党派の野党議員の調査にも各地の共産党の人たちが多くかかわっている。政党としての足腰の強さを感じます。こういう勢力をもっと国政で伸ばした方がいいと思っています」
聞き手・竹原東吾記者
「しんぶん赤旗」日曜版 2020年4月19日付掲載
野党がどんなに鋭い追及をしてもメディアは報じない。それなら、私たちが街頭で国会の場面を放映しようとの試み。
「声をかけない」。相手の目線で見てもらう。政治への関心はそれぞれあるのだから。
洋服屋さんとすれば、自分のペースで服を選んでもらうお店をめざすとか。
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