LINEと国境① 通信の秘密 侵害の危険
情報産業研究者 高野嘉史さんに聞く
通信サービスLINE(ライン)の個人情報の管理不備について、情報産業研究者の高野嘉史(たかの・よしふみ)さんに寄稿してもらいました。
LINEは日本国内だけでも8600万人が利用する無料通信サービスです。政府・自治体も活用する公的インフラといってもよいでしょう。そのLINEで利用者の個人情報の取り扱いが問題になっています。この問題をグローバル化の視点から考えてみます。
複雑な構造
検討に当たっては、LINE株式会社(以下L社)の企業構造を理解する必要があります(図)。L社は韓国のNAVER(ネイバー)コーポレーションの日本法人として設立されましたが、今年3月1日に、孫正義氏を社長とする純粋持ち株会社ソフトバンクグループ傘下のZホールディングス(旧ヤフー)と経営統合しました。この構造は複雑です。
ソフトバンクグループの通信子会社であるソフトバンクとNAVER社がそれぞれ50%出資して、合弁会社Aホールディングスを設立。Aホールディングスが、東京証券取引所第一部上場企業であるZホールディングスの株式の約65・3%を保有しています。Zホールディングス傘下にL社やヤフー、PayPay、ジャパンネット銀行、ZOZO、出前館などのインターネット関連事業会社が置かれています。
L社自体が韓国のNAVER社と密接な関係を持っているばかりでなく、中国、ベトナムなどにも関連会社を設立して、業務の一部を委託しています。何段階にもわたる子会社と委託会社が関連しており、その間の責任関係が見えにくくなっています。いくらL社が委託先などを厳しく管理・監督していると主張しても、法体系の異なる海外に所在する委託先を十分に管理できるとは思えません。
今回の個人情報問題は大きく分けて二つあります。その一つは、L社からシステム開発を委託された中国の孫会社LINEデジタル・テクノロジー(上海)の中国人スタッフが、日本にあるL社のサーバーに保存された利用者の名前、電話番号、メールアドレスなどの個人情報を約2年半にわたって見られる状態だったという問題です。少なくとも32回のアクセスが確認されたといい、個人情報保護法との関連が問題になります。
同時に、当該の会社はLINEフクオカからの委託で利用者同士の会話(トーク)履歴を監視していました。一方の利用者から不適切だと「通報」された書き込みを調べ、書き込んだ側のアカウント停止などの対応を行う業務です。迷惑行為防止のためだと正当化されていますが、扱うのは通信内容そのものです。電気通信事業法上の「通信の秘密」の侵害ではないか、という疑念が生じます。
「迷惑」な会話内容を「通報」する方法を説明するLlNE株式会社の動画
厳しい規定
L社は電気通信事業法第16条に基づき総務大臣に届け出た電気通信事業者です。同法第4条に定める「通信の秘密」の順守義務を負っています。「電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする」と厳しい規定になっています。
通信の秘密として扱われるのは、通信の内容や構成要素、通信の存在の事実などのほか、通信当事者の人椙や言葉のなまり、契約の際に入手した個人情報、営業秘密、料金滞納情報、電話張掲載省略者の電話番号などです。裁判所の令状に基づかなければ、警察などの捜査機関もこれらの情報にアクセスできません。インターネット上の違法な書き込みに関して書き込んだ人物の情報の開示を求めても、プロバイダー責任制限法に基づいて厳しい手続きを求められるのは、このためです。
ところが、中国には国家情報法があり、当局から情報を求められた場合に企業側が拒めない仕組みですので、問題は深刻です。L社は問題が発覚した後、中国からのアクセスを遮断したとしていますが、検証が必要です。(つづく)(3回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月13日付掲載
迷惑行為の防止は、TwitterやFacebookでは、ユーザそのものをブロックすることでできますね。
いくら迷惑行為の防止と言っても、通信の内容を外部に開示するっていうのはどうかと思います。
情報産業研究者 高野嘉史さんに聞く
通信サービスLINE(ライン)の個人情報の管理不備について、情報産業研究者の高野嘉史(たかの・よしふみ)さんに寄稿してもらいました。
LINEは日本国内だけでも8600万人が利用する無料通信サービスです。政府・自治体も活用する公的インフラといってもよいでしょう。そのLINEで利用者の個人情報の取り扱いが問題になっています。この問題をグローバル化の視点から考えてみます。
複雑な構造
検討に当たっては、LINE株式会社(以下L社)の企業構造を理解する必要があります(図)。L社は韓国のNAVER(ネイバー)コーポレーションの日本法人として設立されましたが、今年3月1日に、孫正義氏を社長とする純粋持ち株会社ソフトバンクグループ傘下のZホールディングス(旧ヤフー)と経営統合しました。この構造は複雑です。
ソフトバンクグループの通信子会社であるソフトバンクとNAVER社がそれぞれ50%出資して、合弁会社Aホールディングスを設立。Aホールディングスが、東京証券取引所第一部上場企業であるZホールディングスの株式の約65・3%を保有しています。Zホールディングス傘下にL社やヤフー、PayPay、ジャパンネット銀行、ZOZO、出前館などのインターネット関連事業会社が置かれています。
L社自体が韓国のNAVER社と密接な関係を持っているばかりでなく、中国、ベトナムなどにも関連会社を設立して、業務の一部を委託しています。何段階にもわたる子会社と委託会社が関連しており、その間の責任関係が見えにくくなっています。いくらL社が委託先などを厳しく管理・監督していると主張しても、法体系の異なる海外に所在する委託先を十分に管理できるとは思えません。
今回の個人情報問題は大きく分けて二つあります。その一つは、L社からシステム開発を委託された中国の孫会社LINEデジタル・テクノロジー(上海)の中国人スタッフが、日本にあるL社のサーバーに保存された利用者の名前、電話番号、メールアドレスなどの個人情報を約2年半にわたって見られる状態だったという問題です。少なくとも32回のアクセスが確認されたといい、個人情報保護法との関連が問題になります。
同時に、当該の会社はLINEフクオカからの委託で利用者同士の会話(トーク)履歴を監視していました。一方の利用者から不適切だと「通報」された書き込みを調べ、書き込んだ側のアカウント停止などの対応を行う業務です。迷惑行為防止のためだと正当化されていますが、扱うのは通信内容そのものです。電気通信事業法上の「通信の秘密」の侵害ではないか、という疑念が生じます。
「迷惑」な会話内容を「通報」する方法を説明するLlNE株式会社の動画
厳しい規定
L社は電気通信事業法第16条に基づき総務大臣に届け出た電気通信事業者です。同法第4条に定める「通信の秘密」の順守義務を負っています。「電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする」と厳しい規定になっています。
通信の秘密として扱われるのは、通信の内容や構成要素、通信の存在の事実などのほか、通信当事者の人椙や言葉のなまり、契約の際に入手した個人情報、営業秘密、料金滞納情報、電話張掲載省略者の電話番号などです。裁判所の令状に基づかなければ、警察などの捜査機関もこれらの情報にアクセスできません。インターネット上の違法な書き込みに関して書き込んだ人物の情報の開示を求めても、プロバイダー責任制限法に基づいて厳しい手続きを求められるのは、このためです。
ところが、中国には国家情報法があり、当局から情報を求められた場合に企業側が拒めない仕組みですので、問題は深刻です。L社は問題が発覚した後、中国からのアクセスを遮断したとしていますが、検証が必要です。(つづく)(3回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月13日付掲載
迷惑行為の防止は、TwitterやFacebookでは、ユーザそのものをブロックすることでできますね。
いくら迷惑行為の防止と言っても、通信の内容を外部に開示するっていうのはどうかと思います。
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