きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

20歳のJリーグ③ 地域に根付く・文化の担い手つくる

2012-05-13 16:00:51 | スポーツ・運動について
20歳のJリーグ③ 地域に根付く・文化の担い手つくる

「おつかれさまー」
Jリーグ2部(J2)ヴァンフォーレ甲府の本拠地スタジアムは、顔見知りの観客とボランティアが、笑顔で親しく言葉を交わす光景があふれています。
3月初旬の今季開幕戦の栃木SC戦。気温7度と冷え込み、背もたれのないベンチ式の座席にもかかわらず、競技場は1万人を超える観客の熱気に包まれました。J2の22クラブ中、入場者数の多さはナンバーワンです。
地元ゲームでは、約150人のボランティアが、入場券の販売や入場口での対応、会場案内、看板設営に走り回ります。ほかのクラブがうらやましがるほどです。
スタンドで座席案内をする田中克史さん(41)は、「知り合いの観客が新しい人を連れてきてくれるのがうれしい。好きなチームに少しでも貢献したい」。



今季J2開幕戦でスタジアムに集まった甲府サポーターの子どもたち=3月4日

小さな祭りも
甲府は、Jリーグが実施する観戦者調査で、「チームが地域に貢献しているから」を観戦理由にあげた人が、一昨年まで5年連続1位(J1・J2含む)でした。
調査を行った筑波大の仲沢真准教授は、「クラブが地域につくす本気度が、ボランティアの数に表れている」と説明します。
同クラブは、サッカー教室、地域の祭り、障害者施設・小児科病棟の訪問など、年150回以上の催しに選手やスタッフが足を運びます。甲府市に住むサボーターの今泉二歩(にほ)さん(40)は、「小さな催しにも選手が参加してくるから、『そんなにやって大丈夫?』と心配になる。でも、こうしてクラブが大きくなったんですね」と感心します。
甲府の海野(うみの)一幸社長は、「もともとJリーグの理念が『地域密着』だから、貢献は当然のこと。
とくに甲府は、クラブの再建のときから、多くの人が支えてくれました。その恩返しです」と語ります。
J2に参加して2年目の2000年、クラブは経営危機に陥りました。このとき、サポーターらの存続署名や地元住民・企業の支援によって再建。チームは06年と11年にJl昇格を果たし、経営も黒字に転じました。
「地域の“重要無形文化財”をめざして、これからも市民クラブの模範でありたい」。海野社長は胸を張ります。

公益性を追求
地域密着の気風は、多くのクラブに根付いています。Jリーグ観戦者調査では、「Jクラブはホームタウンで大きな貢献している」と評価する人が全体で約8割にのぼります。Jリーグの「選手等ホームタウン活動調査」によると、J1・J2全選手の地域貢献活動は、08年の2220回から11年は3190回に増えています。
リーグ発足当初の地域貢献活動は、どのクラブもサッカー教室やサイン会が主でした。いまでは他競技の普及に始まり、障害者サッカー大会の開催、健康づくり教室・介護予防事業、学校での特別授業など、多様化しています。子どもたちと収穫した作物を、給食で一緒に食べるなどの地産地消の食育活動にも、いくつものクラブがとりくんでいます。
「地域貢献活動について、Jリーグがクラブにしっかりと情報提供し、いい意味で競わせてきた成果」と仲沢准教授。Jリーグは各クラブのホームタウン担当者による交流会議を、各地で毎年開いてきました。
Jリーグ在勤19年で、競技・事業統括本部ホームタウン担当者の青山優香さんは、感慨深げに語ります。
「当初は特別授業を持ちかけても、『プロの興行をしている人間が学校現場に入るのはもってのほか』という雰囲気でした。いまでは自然に受け入れられます。地元の財産として認識されてきた証しではないでしょうか」
企業の営業活動として地域戦略を位置づけただけでは、プロサッカーがここまで認知されることはありませんでした。地域密着と、豊かなスポーツ文化の振興を理念に歩んできた20年の道のりが、いまの盛況ぶりにつながっています。
仲沢准教授はいいます。
「プロスポーツは、その消費者だけでなく、文化の担い手が必要。地域の文化とスポーツ文化を維持し、向上させることがJリーグの責務です。地域貢献活動を通した公益性と公共性の発揮が、これからも求められます」(つづく)


「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月11日付掲載




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